2話
一体何が起きたんだ? 拙者の身に何が起きたのでござるか?
頭が理解できず口調がつい普段通りになってしまい、急いで言い直す。拙者はミスはすぐにカバーすることができる人間だのでござるよ。
無駄なことを考えてはいるが、妙に意識がはっきりしない。なんというか……そう、まるで夢の中にいるような感覚でござる。そうでござるよ、拙者は確か警察とバトルを繰り広げていたでござる。あれ? そのあとの記憶がすっぽりと抜けているげござるな。
「起きるのじゃよ。ほら、起きぬかこの殺人鬼が!!」
突然耳元で大きな声が聞こえてきた。
うるさい、今拙者は頭の中を整理していたでござるというのに……耳障り極まりない声でござるな。
「誰でござるか? 拙者の機嫌を損ねるとどういう目に合うか教えてやるでござるよ」
ゆっくりと起き上がり、周囲を確認する。
すると、すぐそばに、長いしろ髭を生やしたじいさんが立っていた。
「おぬしは口の聞き方すらなっておらんようじゃな。わしに向かってそのような口を聞いたのはおぬしが初めてじゃよ。さてと、わしを一体どうしてくれるんじゃろうな?」
「人の頭の上で大声を出すボケ老人に礼を尽くす必要なんて感じないでござるな。じいこそ、拙者の舐めているようではござらんか?」
不愉快なじいさんでござるな。思わず、愛刀に手をかけてしまいそうになったでござるよ。危ない危ない、簡単に人を殺していては拙者もただの殺人狂になってしまうでござる。
「若いって言うのはいいのぉ。無知は罪ということを知らぬのか? 少し考えればわしが誰なのかわかるものではないじゃろうか?」
「頭を打ったのかじいよ。それに、周りを見ろって……ここはどこでござるか?」
拙者は確かに川のほとりにいたはずでござる。それが、ここはなんというか薄気味の悪い狭い空間でござるよ。拙者は夢でも見ているのでござるか?
「その顔は少しは自分がおかれている状況を理解したというところじゃろうか? おぬしはわしに逆らうわけにはいかんのじゃよ。おぬしだってここから生きて帰りたいじゃろう?」
「どういうことでござるか? 拙者はじいに拉致されたということでござるか?」
「あたらずとも遠からずといったところじゃのう。わしがおぬしをここに連れてきたことは自体はあっておるが、別に拉致してきたというわけではない。むしろ、あのまま死ぬ運命だったおぬしを一度ここに呼び出すことで魂をつなぎとめておる恩人という方が正しいの」
「拙者が死ぬ? そんな冗談を信じると思っているでござるか? 拙者は日々立派な武士になるために訓練をしてきてでござるよ。その拙者が死ぬ何てことはありえないでござる」
「そのござるござるっていう語尾は何とかならんのか!? 鬱陶しくてしょうがない。おぬしは人を不愉快にさせる天才のようじゃ」
「拙者の口調を馬鹿にしているのでござるか? 拙者も気性が穏やかとは言え、許せないことの一つや二つはあるでござるよ」
このまるで武士のような口調を馬鹿にするとはこのじいは、そうとう頭がおかしいようでござるな。
しかし、じいの言った拙者が死ぬ運命だったという言葉が引っかかるでござる。確かに拙者は警察と壮絶なバトルを繰り広げていたでござるが、あの状況では拙者は圧勝していたはずでござる。それがどうして死ぬ運命につながるのでござるか?
「少し確認してもいいでござるか?」
「ほう、おぬしも考え始めたということじゃの。いいじゃろう。寛大なわしの心に感謝しながら質問するとよい。おぬしの言動は既に消し去られていてもおかしくないということを覚えておくのじゃぞ」
無駄に上から目線でうぜぇなこのじじい……おっと、また口調で戻りそうになっていたでござるよ。
じいもじいでござるな。拙者を挑発するような発言は控えてほしいでござる。
「拙者の記憶が正しければ、つい先ほどまで拙者は警察とバトルを繰り広げていたはずでござる。でもバトルは拙者の勝ちの終わったはずでござろう?」
「そうじゃの。一人目の警察はおぬしの袈裟切りに反応できずに真っ二つじゃったよ。しかしのぉ。その騒ぎに駆けつけて来た警察から発砲されておぬしは死んだのじゃ。普通真剣を持ち歩くかの。それも少しカッとなったくらいで人を斬りよって。どういう神経をしておるのじゃ」
「拙者も人数の前では無力でござったか。無理もないでござるな。多勢に無勢、それも相手は銃で武装していたとなればいくら拙者と言えどさばききれるものではないでござるな」
合点がいった。拙者が一対一の勝負で負けるはずがないのでござる。まったくもって卑怯なものでござるな。人数で押し切ろうなどもっての他でござる。武士たるもの一対一の真剣勝負に命を懸けるべきでござる。
「理解したでござる。しかし、なぜ死んだ拙者をこのような気味の悪い場所に呼び出したのでござるか? じいは、死後の世界の住人なのでござるか?」
「まあ、そのような感じじゃよ。わしは神じゃ。この世界のすべてを想像した敬うべき存在じゃ」
まさかでござる!!




