17話
うわ、血でべとべとになってるでござるよ。これは、いくら拙者でも触りたくないでござるな。
そもそも、こんな血みどろの装備を売却しに行っても絶対買い取ってくれないでござるよ。なんて言って売るつもりでござるか? 持って行った時点で事件性を疑われるでござるよ。
「次からはもっとスマートに殺さなければならないでござるな。装備に血が付かないようにするって言うのは大変でござるが、拙者にかかれば大した手までもないでござるよ。今回はちょっと意識がそこまで回っていなかっただけでござる。決してこれが全力というわけではござらんよ」
拙者としたことが、こんな初心者のようなミスをするとは情けないでござるよ。
日頃の修行が足りていなかったようでござるな。これからはさらに精進していくでござるよ。
三人の死体をこのままこの場所に放置していても大丈夫なものでござるかな? こいつらが言っていた通り、この森が上級冒険者でも滅多に来ないほどの危険な場所ならば別に問題は何でござろうが、こうも立て続けに冒険者に遭遇するとそれも信じられないでござるよ。この二組が自分の強さを誇張するために言っていた嘘という可能性もあるのではござらんか? どちらにせよ、どこかへ移動させておくほうが無難でござるかな……いや、触りたくないでござるな。このまま放置していくことにするでござる。
「うむ、この死体を見られたところで拙者が犯人という正解へたどり着くものなんていないでござるよ。無駄な手間をかけるほどのことではござらんな。ここで無様にもモンスターに殺された判断されるはずでござる。さぁ、拙者は町へ向かうでござるよ」
結局死体は放置してこのまま進むことに決めたでござる。
死体もモンスターたちが片づけてくれるかもしてないでござるし、拙者が何かする必要もないでござるな。
「こっちに進んでいけば町に着くとあのおじさんが言っていたでござるし、この三人組もこっちから来たのを見ると、間違いなさそうでござるな。これで、町がなかったらぶちぎれて人類を滅ぼしてしまうかもしてないでござるよ」
どうにかはやく移動する手段はないものでござるか? 拙者、移動に時間をかけるのはいやでござるよ。時間がもったいないでござるし、歩くとなればほかのこともできないでござる。せめて乗り物でもあれば、イメージトレーニングをしながら移動というのも可能なのでござるが……あまり贅沢を言っても仕方ないでござるね。これも修行の一環と思って歩くことにするでござるか。
いや、やはりただ歩くのは時間の無駄でござるよ。こう言うわずかな時間でも有効に活用していかないと最強へ至るのは不可能でござる。ちょっと意識を割いてイメージトレーニングをしながら歩くことにするでござる。誰かにぶつかることもないはずだから、誰にも迷惑はかからないはずでござる。
「漠然とイメージトレーニングと言っても歩きながらできるものは限られているでござるな。このすべてを一刀両断するスキルの発動を意識してやってみるのがいいでござるか? でも、スキルの発動だけなら森で死ぬほどやったでござるからなぁ。イメージトレーニングじゃなく、レベルアップで上がっている基礎能力の確認でもしながら進むのもありかもしれないでござるな。ちょっと走ってみて息が上がるかとか、走るスピードなんかも試せるでござるよ」
これに決めたでござる。
イメージトレーニングはまたの機会においておいて、レベルアップの恩恵がいかほどのものか試すでござるよ。
まずは、ダッシュからでござるな。拙者は50メートル5秒台の俊足でござったから、レベルアップをした今、3秒台くらいで走れないといけないでござるな。少し高望みかもしれないでござるが、もとから優れていたものをもっと強化されているだけのことでござるよ。人間の限界は超えてしまっているが、そもそもレベルアップという謎の概念があるような世界で人間の限界など考えるのは無意味でござろう。
さぁて、ちょっと走ってみるとするでござるか。
「50メートルは大体あそこくらいでござるかな……位置についてぇ、よーい、ドミニカ!!」
ダァンッ!!
すさまじい加速とともに、一瞬で目算を付けていた場所を通り過ぎる。
「こ、これは想像以上でござるな……勢いあまって相当行き過ぎてしまったでござるよ。それでも1秒かかってないでござるな。これがレベルアップでござるか。本当に拙者の体なのか怪しくなるレベルで強化されているでござるよ」
こんな身体能力を身に着けていれば、それはモンスターの動きもゆっくりに見えるはずでござる。実は、かなりの早さで動いていた説が有力なものになったでござるな。あながち、あの冒険者たちが言っていたことも間違いではないのでござろう。森のモンスターどもはかなりのものでござったに違いないでござる。
「他にも試してみたいでござるな。あと簡単に試せそうなものと言ったら何があるでござるかな」
ジャンプ力なんてどうでござろうか? いや、あまり高く飛びすぎると着地が危ないでござるな。この感じだと10メートルとかは軽く到達できそうでござる。それの着地ともなれば相当な衝撃が足を襲うでござる。強化された体なら問題はないとおもうのだが、危険なことをわざわざする必要もないでござる。あとは、持久力なんて簡単に試せるんじゃないでござるか? 冒険者の話ではこの場所から町まで大体5キロとかだったでござるから。全力疾走で走ってどのくらいまで持つか試してみるのもありでござるな。
「よし、行くでござる」
ダァンッ!!
一瞬で最高速へ到達した拙者はそのままの勢いで町を目指した。




