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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大聖女峠

【聖女が一人で国を守る時代の終焉】追放された聖女は、祖国の立て直しをする

作者: 山田 勝

※残酷な描写ありは保険です。

「んしょ、んしょ集まるのです!」


 今日も私ロザリーは、大サンガ王国の神殿の中で手を挙げ、「何か」を掴む動作をするのです。この動作をする時は、天窓八つ全部を開けなければいけないのです。お師匠様の厳しい教えです。


 そして、「何か」が集まってきたら、先代から伝授された杖を上に掲げ、私の聖魔法力を流し、何かに混ぜるのです。


 杖をグルグル回し、何かと聖魔法力を混ざったものを、この王国中に飛び散るようにイメージするのです。


 この流れが出来たら、瞑想です。すると、この流れはイメージで続くのです。

 この流れを掴むのが難しくて、お師匠様に「流れを掴むのじゃ」といつも怒られてましたです。これが出来て一人前の聖女なのですと。


 学園が終わってから8時間、4時間寝て、通常の聖女の儀式を行って、学校に行くのです。

 平民学校12歳からこの流れです。貴族教育は15歳から学園なのです。来年から貴族学園に行くのです。

 私は平民の孤児ですが、聖女なので、王太子様の婚約者になったのです。



「ニャー、ニャー」「コラ、クロちゃん。今は儀式中なのです。後で遊んであげるのです」


 猫をなでながら、お膝の上に乗せるのです。いつもの光景なのです。


 この儀式は永遠に続くと思ったのです。


 しかし、今日、儀式中に、突然、王太子様が、公爵令嬢と兵士を連れてやって来ました。


「ロザリー、お前の儀式は魔女そのものだな。お前は治癒魔法も使えない。この儀式は何の意味はない」


「真の聖女が誕生した。メアリーだ。お前と違って、治癒魔法が使える真の聖女だ」

「そうよ。お前のような平民が聖女なんておかしかったのよ。昨日、顕現したわ。女神様のご加護よ」


「え、殿下、私は、先代からの教えを守っているのです。この国を守っているのです」


「戯言を、お前が、魔王軍とつながっている証言が出た。見ろ、その黒猫で通信しているのを目撃されている。こんな魔女を婚約者に出来ない。婚約破棄だ。引っ立て。魔王軍のいる黒の森に追放だ」


「違います!お友達いないから、クロちゃんとお話しているだけなのです!」


 シャアアアーと威嚇するクロちゃんが兵士に蹴られないように守りながら、私は囚人馬車に乗せられたのです。

 魔王軍がチラホラ目撃される黒の森において行かれたのです。






 ・・・・そして、今、私の前に4本角さん(魔王)がいるのです。


「黒猫で魔王軍と通信って馬鹿にしているのかよ。で、ここに来たのか?」


「ヒィ、ハイです。食べ・・食べ」


「食べねえって。食物的と性的な意味でだよ。人間の肉は麻薬なんだ。食べれば単性ゴブリンのように、なっちまう。俺ら魔族と人間は交配出来ないほど、生物として違いがあるんだぜ」



「ところで、その王国の神殿から、ここまで何日で来た?」


「え、と馬車で1日なのです」


「たった1日か。なるほど。お、猫ちゃんおいで、小魚あるよ」

「ニャー」クロは四本角さんの所で甘えているのです。

 悪い人、いや、魔族ではないようなのです。


「俺さ、魔王アキラ、転生者なんだ。お前を聖王国の聖女様に預けるぜ。いいな」


「ええーーー四本角さんは聖女様と知り合いなんですか??」

 ショックなのです。女神圏のあの英雄が魔族と仲良しさんなんて。


「いや、この前、魔族と人族は講和しただろ。俺と聖女ちゃんの電撃仲良し共同宣言、知らないのかよ?まあ、あの小国とも言えない国もどきじゃな。ニュース届かんわな。俺達がここで野営しているのも、この地の魔族に講和の周知徹底するためだ。魔族ってさ。基本、脳筋だから、文書行政受付ないのよ」





「ニュースって??」

「ああ、そうか。吟遊詩人の時事語りだと思ってよ」


 私の住んでいた国、大サンガ王国は小国なの?とても立派な神殿と、宮殿があったのに


 ☆☆☆


「何ですとーーーー」

 聖王国に着いた私は驚きの余り天を見上げ続けたのです。

 大サンガ王国よりも大きな宮殿が、あちこちに建っているのです。


「ロザリーさん。あれは商会の建物ですよ。あまり、キョロキョロすると、田舎者と思われて悪い人に声を掛けられますから注意ですよ」


「はいーです」


 ええ、道行く人が皆、大サンガ王国の貴族に見える。

 この国はいったい。


「ロザリーさん。女神圏の大国、帝国と王国はもっと人がいて、建物は大きいですよ」


「グヘー」

 案内人さんは「クス」と笑って、手をつないでくれた。


「迷子にならないように、聖女様のいる所に行きましょうね」


「ハイーーー」


 ☆☆☆


「ロザリー様をお連れしました」

「ニャー」

「有難う。猫ちゃんも一緒でいいわ」


「せ、聖女様、私は大サンガ王国で、聖女をさせて、も、もらっていたロザリーなのです」


 聖王国の聖女様は、異世界の転生者なのです。この世界の聖女の素質のある者が、子供の頃から数十年掛けて得た力を、たった数ヶ月で越えてしまうほどスゴイ人なのです。


 そして、もう一人、聖女様のお友達で、異世界の知識を生かして、商会を作ったアズサさんという方も一緒にいるのです。


「アキラ君から、聞いたわ」

「取りあえず、アズサちゃん。どう思う」


「んーーん。魔法は詳しくないけど。「何か」って窒素で、聖魔法が農薬の役目をする合わせ技?すごいことだと思いますよ」


「そうね。貴方の魔法を見たいわ。実演して下さる」


 私、ロザリーは二人の転生者の前で、「うんしょ、うんしょ」とやったのです。


「空が動いた!もう、いいわ。やめて、貴方の魔法はすごいわ。優しくそよ風のように肥料になる窒素と農薬になる聖魔法を土に染みこませていたのね。この力強さ、私でも無理ね。貴方の師匠様はスゴイ人ね」



「グスン、グスン、有難うございます」


 初めて、人に褒められたのです。

 先代様は孤児である私を拾って下さり。

 育ててくれたのです。


 先代様はずっと一人であの国を守ってくれたのです。

 それが、分ってもらえただけでも嬉しいのです。



 ☆☆☆

 大サンガ王国


「何事だ。畑に病気が蔓延していると、メアリー頼むぞ!」

「ええ、殿下、分りましてよ。真の聖女の実力を見せて差し上げます」


「えい、どうです?」


「・・・あの聖女様、作物の一株を治して頂いただけでは、畑の作物全部病気です」


「ええ、私に泥まみれになり、作物一株一株ごとに治癒魔法をかけろっていうの。後はお前らで、何とかしなさい!」


 聖女一人が、いなくなっても国が崩壊することはない。しかし、聖女というシステムに頼り切っていれば話は別だ。


 ロザリーに頼り切ってので、堆肥は失伝しており、正しい使い方が出来ずに、寄生虫による病気の蔓延、作物もロザリーの魔法で守られていたので、病気に弱い。不作続き。


 王宮は友好な政策を出来ずに、失政が続き。女神圏の強国、聖王国に借金をすることしか出来なくなった。


 ロザリーというシステムを放棄した大サンガ王国は崩壊に向かう。



 ☆☆☆


「ねえ、ロザリーちゃん。どうする。うちの商会の肥料部門に来てもらうと助かるんだけど」

「いいえ。うちに来なさい。聖女の基礎を徹底的にたたき込むわよ」


「うん。うん。グスン。グスン。有難うございます。私は聖女の修行をしたいです」


 ロザリーは、頑張って、聖女の修行を積んだ。聖女は聖女だけでは暮らせない。

 小国だが強き国と称された聖王国の行政や商業も学び。聖女管理職として、順調に成長していった。


 そして、分った事がある。世界の全てだと思った生国、大サンガ王国は、伯爵家程度の規模しかなく、公爵家も騎士爵程度、その他の貴族は豪農、とても小国とも呼べない弱小国だと・・


 王都の小さな城塞都市が一つと街道沿いに街が三つに、村は50ないだろう。多く見積もっても人口一万人。

 魔王軍の侵攻ルートにすら値しない僻地だったので、あの大戦を生き延びたのだ。


 あの魔王アキラが驚いた、「たった1日か」の意味が分った。

 たった馬車1日で国境を越えられるほどの小ささを驚いたのだと。



 ☆5年後


「クロちゃん。安らかにお休み・・・」

 聖魔法の安らぎの魔法を、愛猫クロの墓に掛ける。


「ロザリー副行政官様、聖女様がお呼びです」

「ええ、今行く」


 ☆☆☆大サンガ王国


「今日来られるのは、聖王国の聖女様の懐刀と言われたお方だ。皆、失礼のないようにな」


「父上、いくら我国が破産したと言っても、伝統は守るべきです。必要以上にこびる必要はございません!」


 立派な馬車が大サンガ王国の宮殿の前に止まった。周りは護衛の聖騎士団100人、大サンガ王国の兵士よりもデカい。装備もいい。皆、精悍な顔つきで騎馬だ。

 その他、衛兵や女官や文官も100人規模を連れている。


 対して、長いこと不作、失政続きの為、大サンガ王国の兵士は病人のようだ。総勢300人で掛かっても勝てないだろう。


 馬車のドアが開き。ロザリーが姿を見せた。背は変らないが、メアリーよりも、精練された聖女服を着ている。所作も美しい。美女に成長したロザリーが騎士の手を借りて馬車を降りた。


「「「ロザリー!」」」


 王子とメアリー、王様が驚いて叫ぶ、そのすぐさま、兵士に押さえられた。

「あの方は聖女様の代理、あの方への不敬は、聖女様への不敬」


「ロザリー、戻ってきたのか?また、あの儀式をやれ、結婚してもいいぞ。メアリーがいるから、二番目だけど、それは我慢しろ」


「ロザリー、あんたのあれを早くしなさい。聖女代理にしてあげるから」


 馬車から降りてきたロザリーは一言。


「王様は、戒告」

「王太子はムチ打ち10回」

「王太子妃はビンタ10回、女騎士さんがやってね。お願いね」


「「「は、畏まりました」」」


 王様は秘書官から、このお方は聖女様の代理だと子供のように叱られ。

 王太子と王太子妃はその場で、聖騎士によって、懲罰を受けた。


「なに、やめろ。誰か止めろ」

「ちょっと、私は大サンガ王国の王太子妃なのよ」


 ☆☆☆大サンガ王国謁見の間


 ロザリーは玉座に座り、王、王太子、王太子妃と宰相、文官を立ったまま並ばせて、今後の方針を述べた。


「私は債権者である聖王国の聖女様の代理人として、貴国の立て直しに参りました。

 共通の認識です。大サンガ王国の王権は保持、しかし、それは象徴として、聖王国への借金が払い終わるまで続きます。五〇年予定。

 最終的な懲罰権は、私にある事をお忘れ無く」


「大まかな流れです。まず。牛と豚をこの地で飼育します。それを魔族領で魔石と交換し、王国、聖王国、帝国に売って、その何割かを借金に充てて頂きます。


 それに並行して、土壌の改良と、病気に強い作物への総入れ換え、ジャガイモを作ります。当分の間、この国の方は、ジャガイモを主食になさって下さい。・・」


「ちょっと、待った。おま、ロザリー様、魔王と通じていたのか?」


「ええ、魔王アキラと通じてますよ。貴方が、魔王と通じているから私を追放したのではなくて、魔族は体が大きく肉食が多いです。慢性的に肉が不足してます。魔王アキラも取引には前向きです」


「う、しかし」

「それと、王室費が高すぎます。大金貨50(500万円)枚で、一年お暮らし下さい」


「な、何と一人50枚ですと?」


「いいえ、王様、王室3人で50枚です。でないと領地を債権の質として取り上げます。これは決定事項です」


「ロ、ロザリー様は、俺たちに復讐に来たのか?」


「いいえ、この国の立て直しの為です。この国出身の私が選ばれただけです。一番、優しいプランですよ。この国の解体案が、イチオシだったのですから」


 ☆☆☆


「お師匠様、帰って来たよ」

 私はお師匠様の墓に祈りを捧げ、聖魔法の安らぎの魔法を掛けた。


「ふふふふ、五〇年も掛ける気はないよ。さっさと流れを作って、この国の人に任せるよ。だけど、ごめんなさい。師匠の技は、もう、失伝ね。聖王国図書館に記録してもらったけど、これからは、聖女一人に任せる時代は終わったの」


 ロザリーは、名簿を片手に持っている、この国の若き人を教育するつもりだ。人選も済んでいる。


「環境が変れば、こうも変るものね」


「お師匠様の言っている流れを掴めをこの国の立て直しで実演してみます。見ていて下さいね」


 ロザリーは長いこと、秘書が呼ぶまで祈っていたと言う。




最後までお読み頂き有難うございます。

お気に召したなら評価をお願いします。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 例えるならアメリカ大統領がちっさな島国の王族に、我が前に平伏せとか言われちゃう位には滑稽な国って事なんですかね? このおバカさん達の国は [一言] 怒涛と言ってもいい人生を歩み伸し上が…
[一言] 後書きの部分なので誤字報告ができないのですが、「最期」という言葉は「人生の終わりの(死ぬ)間際」という限定的な意味の言葉なので誤字になります。ここは普通に「最後」で大丈夫ですよ。
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