操り人形劇
オーゼンは、王族の城の広場にいた。
栄えていた頃はとても立派だったのだろうが、今はそんな華やかな雰囲気もなく、ただ薄汚れていて、とても汚かった。
どうやら今日は、立派な儀式があるらしい。兵隊が、声高らかに呼び掛けており、国民全員がテンション高く広場に集まっていた。
視線の先には、キツネの姿を模した像が建っていて、皆その像を嬉しそうに見つめている。正直、気味が悪かった。
その像の横に、白装束を身に纏った神官が現れると、国民に向かって語りかけた。
「これより、クヒラ王国とユーラン王国の婚姻の儀を執り行う!」
神官が告げると、人々は歓声を上げた。
この世界には、2つの国がある。
いや、むしろ2つの国しかない。
200年、日照りの続く【昼の国】
クヒラ王国。
200年、日の当たらない【夜の国】
ユーラン王国。
クヒラ王国もユーラン王国も、互いに極端な環境のせいで生活に困っていた。
他の国は既に、戦争や過酷な環境に耐えきれずに滅んでしまった。
学者が言うには、地軸が逆転したとか。
その学者は、王族に危機を伝え続けていたが、快楽にふけたい王族の手によって処刑されてしまった。
王族も、抗う事を辞めてしまったのかもしれない。だからこそ、どんな手を使ってでも最期は楽をしたい。
その為、互いに頼れる唯一の国なのである。いわば、政略結婚だ。
そのお相手がこの国に来ているらしいが、オーゼンはどうでも良かった。
ただ只、周囲にいる人間や、この茶番劇に耐えられなかった。
何故ならば、国民の目は異様に見開かれ、血走っており、口からは涎を垂れ流し、痩せ細った枯れ枝の様な手足をぶんぶんと振り回していて、まるで、ゾンビの様な姿をしているからなのであった。