主従の契約
夏休みを満喫していました。すみません
「死神って俺達が思っているやつか?」
「はい、それで結構ですが事実は少しだけ違います。
死神は私一人になってしまいました」
そしてドールは淋しそうに、ゆっくり話し始めた。
「昔、天界には天使と死神が共存していました。
神様は天使でも死神でもない中立な者がなりバランスが取れていました。
その頃から天使と死神が神候補に従うというシステムが出来上がっていたのですがあるときそのバランスが崩壊しかけます。
神を自分の物にしてしまった者が現れたのです。
そいつが死神を滅ぼそうとしたんです……」
「今の神様はそんな私を助けてくださいました。
戦争中は神様にかくまってもらい、神様自身が神の座に就くと助けていた子供の死神三人を、死神という事を隠し天使の中に入れてくださいました」
最後は必死に訴えるように声を荒げる。
「神様に助けて頂いた恩は生涯忘れません。
しかし、神様があんな酷い戦争をしようとするならば全力で阻止します。
たとえ命の恩人でも殺します」
激しい怒りを込めた声は龍也でさえ怯んでしまう程のものだった。
「で、なんで俺に着いてくるんだ?」
龍也は自分がある程度の力を付けたため、薄々気付いていた。
ドールの実力は自分よりも上だということが。
「簡単なことです。あなたが私より強いからです」
「馬鹿言うな!
お前は今の俺より数倍強いはずだ」
「うーん。正確には強くなるはずです。
あなたの今の強さは竜の血のおかげだけです。
あなたが自分で手に入れた力はなにひとつありません。
だから、あなたの将来に希望を見たということです。
それに…………」
静かな時が流れる。
龍也はドールが話し出すのを静かに待ち、ドールは考え込んでいるように下を向き、顔色は伺えない。
「……………………です」
???????
「ということです!」
「おいっ!全く聞こえてないぞ
ちゃんと聞こえるように言え!」
「いやです。
もう一回言いましたもん。
大体、何故私がそれを言う必要があるのですか?」
言葉に詰まる。
龍也はドールに敵わないため力ずくというわけにはいかない。
……………となると。
「まぁいい。
ドール、ちょとこい。あそこへ行くぞ!」
「あの一番大きい岩にですか?何故?」
「岩へじゃない!岩の上へだ!」
「よいしょっと。
おおー、月があんなに近いぞ」
「本当ですね。月のクレーターまで見えそうですね」
少しの間、月に引き付けられていると、龍也はドールの方へ向き直り、真剣な目で話し出す。
「契約をしよう」
「良いんですか?
こんな怪しい奴と組んで?
覚悟が必要ですよ」
「ばかやろう。
覚悟ならこの試合に出ると決めた時からある。
しかも、二重契約だ。まずは俺からその次におまえだ」
「………………本気のようですね。」
「俺はいつでも本気だよ。
じゃ、俺の方からいくぞ!」
早速、龍也は手の平の真ん中に指を突き刺し手の平に血をためる
「ドール、おまえの血を少し垂らせ」
小指の先を死神の尖った犬歯で噛み切り、龍也の手の平に垂らす。
準備が整うと龍也は一つ深く深呼吸をして唱え始めた。
「我が身に眠る竜よ、今、主が願う。血を捧げし志高き者が我等と共に歩みを進む。この者と我を竜の息吹で包み込みたまえ。」
唱え終わると龍也の手の上の血が舞い上がり、ドールの左手に肩から指の先へと絡み付いていく。
絡み付いた血は二頭の竜に変わり、左腕を動き回る。
焼けるような痛みを感じるはずだがドールは眉一つ動かさず、物珍しいように見続けている。
やがて竜は絡み合うようにして手の甲で動かなくなる。
それは、真っ赤な竜がもう一頭を見張るようだ。
「よし!俺の方はこれでいい。」
「これでいい?これは五分五分の誓いでしょう?それで本当に良かったんですか?」
「大丈夫じゃないかな?まぁ、おまえが暴れなきゃいいことだ」
ノーテンキな、と苦笑しつつ少し安心する。ドールからすれば主人を護るため力が必要になってくるのだが、その主人に反抗しないようにと、押さえ込まれると大変不都合な状況になるところだったのだ。
ふぅ、と一度息をついてからまた深く吸い込む。
「#######」
ドールは理解不可能な言葉を呟く。しかし少し呟いただけで止めてしまった。
「どうした?なんで止めたんだ?」
「いえ、もう終わりましたので」
本当に少しの時間で契約を終わしたことに龍也は驚くが、それよりも竜の知識を得た龍也でさえ理解出来なかった契約をドールは知っていて尚且つ使って見せた。
ドールの能力の底はまだ見えずいかに彼が優秀かが伺い知れる。
「さっきの契約はなんだ?そして、おまえはどれだけ強いんだよ!」
「契約については秘密です。強さについては…うーん、神の使い試験一位ってとこです。
一位になって、優先であなた様を選んだんですから」
なんなんだこいつは!