成長
「うーん、なんかないかなー?」
そういっているのは龍也だ。
能力に目覚めてからマザードラゴンと修行を初めて一週間が経つ。マザードラゴンはなんでも食事をしなくても大気から栄養を取り込んでいるらしいのだが、一応人間?人間に近い龍也はそうはいかない。ということで食べられる物を探していた。
「えっと、今日は頑張って豪華にしようかな。魚とお肉、果物も食べたいな〜」
ご機嫌な様子で早速お肉を捕るべく罠を準備する。
「この前は鳥だったから、今度は猪とかがいいな」
そういって地上の生き物用の罠を作っていく。マザードラゴンに与えられたのは少し大きめのナイフ一本だけである。一通り作り罠を仕掛ける。
そして次に龍也が向かうのは数日前に見つけた果物がなっている場所だ。これからのことも考え少しずつ採っていたのだ。
龍也はこの一週間でだいぶ逞しくなった。午前と午後の修行ではもちろん、普段の生活から学び取る事はおおかった。
食べ物を確保するために考え、探し回る。探し回るためには森の中を動き回る体力が必要である。罠を作るために頭の中で設計図の作成、それをナイフで仕上げていき、補正していく創造力と考察力を養った。
「それでは、最後の修行を始めましょうか」
「あれ、今日で最後なんですか?」
「はい、もう一通り教え終わりましたから。後はあなた次第ですよ」
龍也は心の中で渾身のガッツポーズを決める。やっと厳し過ぎる修行が終わると思うと自然にでてしまう。
「それで最後は何をするの?」
「最後は実戦です。もうすぐ対戦相手が来ますよ」
………………………待つこと20分…………………
「遅れてすいません。なかなか見つからなくて」
「………ドールと?」
「まさか、私なんて相手になりませんよ。私が探していたのはあなた様のお相手です。それで、一匹というか一人見つけましたので報告へ来ました」
「それではドール、そこへ案内なさい」
ドールは頷き、指を鳴らす。すると龍也達の足元に穴が開き、垂直に落ちていく。ほんの数秒で地面に倒れ込み、上体を起こし前を見るとそこには男が立っていた。
誰だろ?そんなことを龍也が考えていると、男はこちらに向かって来る。30メートル程あった距離は一瞬にして無くなり、男は心臓を突き刺そうと手に持っていたナイフを前に突き出してきた。龍也はナイフが前に出てきた時には男の後ろ側に回り込み、攻撃のため自分のナイフに手を掛けるが手を離し、腕を取り地面に倒して押さえ込む。
男が一つ動作をしている間に龍也はあれだけの動作を行っている。それだけで龍也の成長が十分に伺える。
「おー、龍也様は成長しましたね。ナイフ使いのスピードを楽々越えていきますか」
「もともと、潜在能力は高かったですからね。あのくらい当然でしょう」
この人は一体誰なんだろ?男の上で龍也は考える。
場所をよく見てみると龍也達が入って来た山のようだ。そして、自分を見た瞬間に殺そうとしてきた……
「偵察?」
「正解ですよ。龍也様」
龍也が答えを導いたところでドールとマザードラゴンがやって来る。「こいつはですねー、おっと失礼!」
ドールは男の頭を踏み付け気絶させる。
「じゃ、私はこれを捨ててきます」
そういって男を担ぎどこかへ消える。
「あまっちょろい覚悟では、いけませんよ。あなたにも、あなたが死んだら悲しむ人は沢山いるんですから」
満月が綺麗な夜は、何故か眠れない。
貴女はどうでしょうか。
明日、龍也はマザードラゴンとの修行を終え山をでる。
その前日の夜、龍也は眠れなかった。
真夜中の山は不思議な存在である。一人で歩くと辺りは森に囲まれ奥へどこまででも暗くなっていく。命の果てた後を思わせるような風景は人間の小ささか、自然の偉大さかを強く発する。
しかし、上からは自分を照らす光が差し込む。人間の一瞬の人生の輝きを現わすかのような光は偉大な自然の中に隠れそうになる自分を阻まれることなく真っ直ぐに自分を見ているようだ。草の匂いが香しい草原の大きな岩の上に寝転んで来るべき人を待った。
「気持ちの良い夜ですね。そんな所で何を考えているんですか?」
「ドールか。なんか眠れなくてな。おまえはどうしたんだ?」
「私も眠れなくてですね、ちょっとお散歩に」
「ほー、俺が起きるまで寝ずに、偶然にも俺と同じルートを偶然にもちょうど10メートルの間隔が開いてここで俺に会ったんだな?」
「………まったく、人が悪いですねぇ。そこまで気づいておいてあんな質問をしたんですか…?」
「…………人?が悪いのはおまえだろ」
龍也が冷たく言う。
「…………なんの事ですか」
「おまえは何者だ?何故俺に近づいた?」
とぼけるドールに龍也は冷たく続けた。
「……………どう言えばいいのでしょうか?………単刀直入に言うと私は死神です」
アドバイスなどあれば宜しくお願いします。