1間 少女の大胆な犯行
――――『家出少女』って、ハッシュタグ? を付けてSNSで呟くと大人の男の人が家に泊めてくれるんだって。
そう私に耳よりな情報をくれたのは、同じ塾のクラスの倉持さんという女の人。
その子は私より少し年上の中学1年生で、なんでも知っていて、なんでも教えてくれるお姉さんだった。
でも、なんで男の人なの? と聞いた時は、さあ? と首を傾げるだけで倉持さん自体もあまり細かくは分かっていない様子だった。
まあ、いくら、何でも知っていると言ってても流石に限界はあるんだろう。
倉持さんは年下の私よりも頭が悪いから仕方がない。
でもなんにしても、その倉持さんがくれた情報は、今の私にはとてもありがたかった。
ある程度の荷物を整えて我が家のマンションを出ると、私は夜の大人の街まで来た。
携帯はお母さんに遠いところからでも見れるようになっているので、携帯で呟くわけにはいかない。
そう思ってわざわざ電車を乗り継いでこの人ごみの中に来たんだけど。
…………あった。
繁華街の中を歩きながら辺りを見回して探しているうちに、お目当ての建物を見つけた。
そこはいわゆるインターネットカフェ、というものだった。
もちろん私はこういうところに入るのは初めてなので、へんにドキドキしてしまう。
でもいつまでも立ち止まっていると怪しい目で見られるし、下手したらお父さんやお母さんの仕事仲間に見つかるかもしれない。
そう考えてから、私は意を決して建物の中へと入っていった。
このビルはいくつもの店が入っているようで、エレベーターで行きたい場所の階に上がらなければいけないらしい。ちなみにインターネットカフェは、4階だ。
「あ、そうだ」
私は思い出して、制服のポケットからお母さんとお父さんに持たされていたスマートフォンを取り出した。
危ない危ない。これをいつまでも持っていたら簡単に居場所がバレてしまう。
気づいて、私はエレベーターの脇にあったゴミ箱の中、『燃えるゴミ』の中にスマホを放りこんだ。