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玄関という名のプロローグ
あの時に食べた『アレ』はきっと――――。
――――今までのどんな炊き出し飯よりも。
――――今までのどんな3つ星シェフのコース料理よりも。
美味だ。
あの時の『アレ』に勝る食事は、これまでも、そしてきっとこれからも、無い。
そして、もう『アレ』を食べることは叶わないだろう。
なぜならば。
「俺はホームレスで」
「私はお嬢様だから」
白と黒、水と油、スイカと天ぷらのよう。
本来合うはずのないモノ達。
そもそも出会うことすらレアケース。
でも、そんな者達が何かの間違いで混ざり合ったら……。
水と油が弾き合うのとはまた違った、化学反応が起きるのかもしれない。
それこそ。
3つ星シェフのコース料理よりも、美味しいモノが産まれるくらいは少なくともあるんじゃないか。