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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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2-19-A. ゆるやかな強制


「そっちにある釘三本ちょーだい!」


「あいよー」


「こっちはかすがいのちっちゃいヤツ!」


「あいよー」


「こっちにお茶!」


「はいはーい……じゃねーよ! それは、何か違うだろ!」


 テントの中に大輔(だいすけ)のツッコミが響き渡る金曜日。

 今日は『月雁(つきかり)祭準備優先日』なる設定がされている日だ。


 カンタンに言ってしまえば『部活も良いけど、学祭もね』というスタンスの日だった。

 それもそうだ。高校の学校祭は当然学校の行事。

 しかも、かなり大規模。

 普段は任意参加の準備だけれど、何も参加しないままで当日を迎えるのは許さない、というヤツだった。


 嗚呼、哀しきかな、集団生活――そんなことを思わないわけではない。

 何より正直な話をすれば、ボク自身も、強制されることに対しては煩わしさを感じていたりする。


 見ればわかる。

 去年も同じような者は居たからわかっている。

 全員での活動に嫌悪感に似た悪感情を示す人間が集団の中には必ず一定数いることくらい、これまでの大した長さでもない人生の中でさえ充分に理解できていた。


 実際この時期になれば、土日もフルタイムで活動を行う部活やサークルもあるとは言え、そこまでアウトローを気取る生徒は多くない月雁高校だ。

 ――たとえ心の中では「余計なことをしやがって」と思う生徒も居るだろうけれど、割合粛々と優先日を受け入れているように見えた。



「大輔、こっちにもお茶」


「だから違うだろっ」


 ――とりあえず、もう一度彼には突っ込ませておくことにした。


「じゃあ代わりにココ押さえといて」


「ん」


 それならイイらしい。


 喉は実際渇いていた。

 七月の足音も間近になってきて、北国もようやく夏本番になりつつあった。

 日陰で風通しも良いこのあたりで、ただ座っている分には大丈夫かもしれないが、作業をしていれば相応に渇き感を覚えるものだった。


 自分のカバンからペットボトルのお茶を取り出して、一服。


「大輔、ちょっと口開けれ」


「ん?」


 ペットボトルを目の前で振ってみせれば、「お」と喜んで、ひな鳥のように口を開けた。

 ――一瞬だけ、傾きを急にしてやったらどうなるかな、という悪魔のささやきが聞こえたが、さすがにここでむせられても困るので慎重に彼の口へとお茶を注ぎ込んだ。


「さんきゅー」


「水分補給、大事」


「だなぁ」


 大輔は、ツナギは膝までまくり上げているし、上はTシャツ一枚だ。

 やや暑がりな彼らしい出で立ちだった。


 細かい作業を大輔の協力で手早く終え、今度はふたりで別のところの助っ人に入る。

 二階堂(にかいどう)くんからは放課後になる前に、『ちょっと作業工程から遅れが見えてきている』という話を聞かされていた。

 後からの調整などを考えると、もう少し早いタイミングで大きいところの作業を終えてしまいたい、ということだった。


「結構取り返せたかなぁ……。ありがとうなー」


 汗を拭いながら言う二階堂くんに大輔とふたりで親指を立てながら、時計を見る。

 早くも十七時を指していた。


「……そろそろ教室のヤツらもこっちに来る頃合いか?」


「ん? まぁ、そうだなぁ」


 大輔が言う。

 校舎内での作業は変わらず十七時で強制打ち切りなので、自然とそれ以降は全員が行燈テントにやってくることになっている。

 もちろんそうは言っても、全員がこのテントの中で作業できるわけもないし、当然こういう作業には得手不得手も好き嫌いもある。

 作業の参加を無理強いすることはない。


「……ちなみにディー、お前は誰待ってんの?」


「…………は? いやいや、何言ってんだか」


 井ノ原(いのはら)くんの指摘に素知らぬ風を装う大輔。

 リアクションがワンテンポ遅れた上にヘタクソだったことは、敢えてスルーをしておくことにする。


「みんなおつかれさまー」


「そっちもおつかれさん」


 ウワサをすればナントヤラ。

 まもなくして教室での作業を終えたグループがやってくる。

 中には手伝ってくれようとしてくれる子もいたが、まず基本的にはテント前での雑談になる。

 そこから何人かが参加してくれれば御の字――――。


「ミズキくん居るっ!?」


「うわっ!?」


 聞き慣れた声、ただし大音量。


 そして、首筋に堅くて冷たいモノが当てられる。


 無様に悲鳴を上げてしまったが、それくらい許して欲しい。

 不意打ちはさすがにダメだ。

 校舎から続く通り道側に少しでも視線を向けておけばよかったと、今更ながら後悔する。


「すみれ!? な、何!?」


「これ、差し入れ!」


 振り向けばそこには、満面の笑みで冷えたペットボトルを差し出すすみれが立っていた。

 




強制されると、余計にやる気は無くなるもの。

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