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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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2-18-B. 思い出させるな



 昼休みの頃合いには祐樹を含めた野球部のメンツは、すっかりいつも通りの調子を取り戻していた。

 ある程度沈むところまで沈みきってしまえば、あとは浮かぶだけ。

 自分の力で上がってくるも、流れに身を任せて浮かび上がってくるのを待つも、それはどちらでもいい。少し時間がかかったとしても、いずれ必ず彼らは立ち直ってくるとは思っていたので、今日中の回復はすごく喜ばしいことだった。


「よっしゃー! 今日は行燈だーっ!」


「おぅ!!」「応よ!」


 祐樹の雄叫びに呼応する雄叫びが重なる。

 そして、勢いよく教室を飛び出していく、我がクラスの野球部員たち。

 大会直後ということで部活が休みになったらしいが、むしろ大会前よりも元気になっているような気もしてしまうのは、きっとボクだけじゃないはずで。


「アイツら、やべえな」


「……何か、吹っ切れちゃってるよね」


「吹っ切れてるっていうか、振り切れてるっていうか」


「あー、そっちの方が合ってるわ。さすがミズキ」


「さんきゅー」


 大輔、聖歌のふたりといっしょに彼らを見送った。


「そっちも今日は部活?」


「オレは部活だけど……?」


「あたしも」


「そっか」


 今日はボクも部活参加の日。

 行燈、ステージ、展示の三つともそれなりに順調だという話は聞いていた。

 進捗状況に対してウソを吐くようなことは無いだろうが、一応まだ安心は出来ている。


 だけど、ここから何が起きるか解らないのが、学校祭準備というものだった。


「ぱっと見は、イイ感じっぽいんだよな」


「そうな」


 大輔はクラスのロッカー上に保管されている――と言うほどにはしっかりと管理されているわけではないのだが――制作物のかたまりを見て言う。

 作るものを詳細に覚えているわけではないが、記憶の断片を拾い集めれば、たしかにあれくらい出来ていればペース配分は大丈夫そうだった。


 普段は落ち着きの無いムードメーカーみたいなことを率先して引き受けているが、こうしてクラスの様子を俯瞰して見ることもできるヤツだった。


「あとは、あれか?」


 今度はこちらへと――というか、思いっきりボクへと視線をぶつけながら、大輔は言ってくる。

 何となく、次に言われる言葉は予想できた。


「ミズキのピアノか?」


「うっせえなぁ……」


 素知らぬ顔で容赦なく現実を突きつけてくる大輔。

 日頃の扱いの意趣返しということだろうか。

 したり顔をしてくる辺りは、少なからずそういうことを考えていそうだった。


「え? ……それ、何? どういうこと?」


「あれ? 知らなかったん?」


「……うん」


 その流れに乗って来られなかったのは聖歌だった。

 言われてみれば、あの日の放送室で楽譜を渡されて以降、ステージ絡みの依頼をクラスの衆人環視の中で受けたことはないし、その後の話もとくに振られていない。

 部活以外では教室の装飾品やステージの小道具作りを担当しているらしい聖歌が、知っている可能性は低かった。


「なんか、ピアノも収録する羽目になった」


「……ホントに?」


 探るような言い方をしてくる聖歌は、もしかするとボクと同じ事を感じているのかもしれなかった。


「いや、まぁ、大したフレーズじゃないし、たまたまそのときにそこそこ弾けるのがボクだったってことでね」


 軽く笑い飛ばすような雰囲気を醸し出す。

 聖歌にそんな顔をさせたまま部活に送り出すような真似はしたくなかった。


「そう……、なんだ」


 さすがに、そう簡単に信じてはくれないらしい。


「っていうかさ、ミズキってピアノも弾けるんだな。オレ、知らなかった」


「言ってないからな」


「今度聴かせろよ」


「それはステージでの収録音でも聞いてくれ」


 いつぞや言ったような言葉をリピートする。


「それじゃあ、お先に失礼しようかな」


 何となく、これ以上はココに居ても仕方が無いような気がしてきた。

 ボロを出しても良くないので、もう時間がない風を装ってみる。


「いってらー」


「がんばってね」


「おう」


 ふたりに応えつつ、荷物を持って教室を出る。

 廊下の角を曲がったところで思いっきりため息をついて、小走りになって音楽室へと向かった。


 ――このときの受け答えを『そういえば自然だった』と気付いたのは、結局自宅に帰り着いてからのことだった。

どうもこのふたりには苦い思い出があるようでして。

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