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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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2-18-A. あたらしい夏へ


 翌日、木曜日。


 昨日寄越してきたメッセージの中身からある程度は想像していたが、予想通りに祐樹(ゆうき)は遅刻ギリギリのタイミングで教室に入ってきた。

 直後から朝のホームルームが始まってしまったので声をかけられず終い。

 幸い一時間目は移動教室ではなかったので、すぐさま彼の元へと向かった。


「昨日はおつかれさん」


「……おー、おはよう」


 何となくズレた解答が戻されてきたが、祐樹もボケたつもりではないらしい。

 実際それほど間違っているわけでもないのでスルーしておく。


「やっぱりさぁ」


「うん」


「ああいう負けってショックだ」


「……そりゃあなぁ」


 どうやら祐樹も聞き役が欲しかったらしい。

 とくにこちらから誘導をしたわけではないのに、昨日の試合のことを話し始めた。

 正直な話をしてしまうと、野球とか体育会系団体競技は見ることは好きだが、それ自体の経験は体育の授業や体育祭以外に縁は無い。

 だからボクとしては、体育祭で完膚なきまでたたきのめされた試合のことを思い出しながら、彼の話を聞くしかない。

 そう思っていたので、祐樹の方から話してくれる状況で、ちょっと助けられた感覚があった。


 こちらの様子を窺っていたらしく、大輔(だいすけ)とすみれ、さらにはすみれに引き摺られるようにして聖歌(せいか)もこちらに寄ってきた。


「コールド負けだっけ?」


 大輔が訊く。


「ん。結…………っ構、コテンパンにされた」


 最終スコアは一対十三。

 三点を取らないと七回で打ち切りになってしまうところ、六回のイニングで大炎上。

 そのまま強烈に押し切られたというよりは、突き飛ばされたような恰好だった。

 強豪私立校が相手だったとは言え、派手に散ってしまった。

 悔しいを通り越して心にぽっかり穴が開いたような心境になっているらしかった。 


「一回は勝てたから、去年よりは良いっちゃあ良いんだけどな……。コールドでは無かったからさぁ」


 ぐてーっ、と自分の机に突っ伏す祐樹。

 ちょっといたたまれなくなって、背中をさすってやることにした。

 アタマを撫でてやるのは、辞退しておく。

 それは他の誰かの役目にしておこう。


 祐樹は大きく鋭く息を吐いた。

 ボクらに話して、少しだけ気は楽になったのだろうか。

 顔つきは教室に入ってきた時よりスッキリしていた感じにも見える。


「あーあ。途中までは良かったんだよなー」


「途中って?」


「……三イニングス目」


 わりと序盤じゃないかよとは思ったが、過去の戦績を見ると初回であわや二桁失点みたいな年もあるようだったので、祐樹の言うとおり強豪相手に善戦はしていたのだろう。


「ま、切り替えは大事だぞ」


「……そうな」


「後はオレたち世代の天下じゃん」


 その言い方はどうかと思うぞ、大輔。


「後輩たちを引っ張っていかなきゃ」


「そうそう、その言い方その言い方」


 意味的には同じ雰囲気かもしれなくても、与える印象は言い方ひとつで変わるものだ。


 それに、高校野球の映像は何とか見たことがあるボクとしては、やっぱり『夢』のようなものはある。

 もちろんその夢を叶えるには自分たちではない、他の誰かががんばってくれる必要があるという、まさしく他力本願なものだけれど――。


「ボクらを全校応援に借り出してくれるくらいには、頑張って欲しいんだけどなぁ」


「あ! それイイ!」「おお!!」


 すみれと大輔が同時に、賛同するように声を張った。

 そして互いに顔を見合わせて、すみれだけがイヤそうな顔をした。

 大輔はとくにそんなことを気にすることも無く、話を続ける。


「いいねえ、いいねえ。全校応援」


「でしょ」


「わかるぞー。アレだろ? 授業全部休みになるヤツだろ?」


 ――違うとは言えないのがツラい。


「合ってるとは思うけど、あからさまにその方向で喜ぶアンタって何なの?」


「そういうすみれだって似たようなこと思ってるんじゃねえの?」


「アンタとは違いますぅ」


「はいはい、痴話喧嘩ストップ」


 長くなりそうなので一旦シャットアウトしておく。


「ってなわけで、ボクたちからの野球部へのミッションね」


「言ってくれるなぁ、ミズキ」


 顔だけをこちらに向けた祐樹は、くしゃっとした苦笑いを見せた。


「でも、祐樹。難易度高いミッション、キライじゃないでしょ?」


「……さすが、解ってるな」


「でしょ?」


 いつだったか、祐樹はスマホゲームに興じているのを横で見ていたときに言っていた。

「やっぱり歯ごたえが無いレベルなんて、やってても面白くない」、まさにその通りだと思っていた。

 その時の楽しそうな顔は、今でも印象に残っている。

 だからこそ、それを彼にぶつけてみた。


 ようやく元気になってきたらしい。

 机から身体を起こした祐樹と、伝統チームの監督よろしくグータッチをした。


『弱くても勝てます』となればいいんですがね。

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