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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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2-11-A. 想像以上の設備

 水曜日の放課後。

 部活は休み。


 ボクは今、行燈(あんどん)制作用ののこぎりとか釘などではなく、なぜか楽器を持っている。


 ――いつものオーボエではなく、年季の入ったアルトサックスを。


 ――しかも、月雁(つきかり)高校の放送室で。




「オーボエになったのって入部してすぐだったっけ?」


「……そう、かも。よいしょ」


 早希(さき)がケースの中身を興味深そうに見ながら訊いてきた。


「連休前にはそっちになってた気がするなぁ……」


「だよね。ミズキくんのサックスって新鮮。っていうか初めて見た気がする」


 あの当時は早希も含めて、そこまで絡みが無かったような記憶がある。

 話すようになった頃にはオーボエに転向が済んでいた頃なので、早希がそう感じるのも不思議ではなかった。


「いつから使ってるの?」


「中一の時点でこれだったよ。母親のお下がりなんだよね」


「あ、そうなんだ。でも、すっごいお手入れバッチリな感じ」


 そんなにキラキラした目で見なくても。

 凝視されすぎるのは、やっぱり少し緊張する。


「何で変わったの?」


「……それは、ほら。進学を機に楽器も変えてみたいなぁ、的なヤツだよ」


「ありがちぃ。……おおー」


 そんなことを言っている間にセッティングが終わる。

 持っただけなのに、早希からの歓声をいただく。

 ちょっと恥ずかしい。

 持ったときにそこまで久々な感覚にならないのは、本当に時々マスターのお店で極秘練習をしていたからだった。


 少なくとも『最近吹いていない』なんてことはなかった。


 だから、お手入れバッチリなのも当然だった。


「それにしても、今まで入ったこともあんまり無かったから言うんだけどさ。……放送室ってもう少しこじんまりとしたところだと思ってたよね」


「あ、それわかる。でかい操作盤がどーんとあって、マイクがくっついてて、それだけ、的な」


「そうそう! 私もそのイメージ」


 今のところ、放送室内にはボクと早希のふたりだけ。

 ここまでボクらを引き連れてきたすみれと亜紀子(あきこ)は、すぐさまここを出て行った。

 ちなみにボクらと同じく楽器を持ってくるように言われている和恵(かずえ)さんは、掃除当番に割り当たっているのでもう少し遅れてくることになっている。


 正直手狭になるだろうと思っていた放送室は、思ったより広い。

 ――いや、思っていた数倍は、広い。

 お昼の放送などをするようないわゆる『放送室らしい装備』に加えて、その奥には歌の収録とかラジオ放送でもするのか、と思えるような空間があった。

 最近だとインターネットでラジオ放送のブースが同時中継されている放送なんかもあるけれど、そういうときに見える映像のような部屋がそこにはあった。

 なるほど、音源の収録は放送室でやるから、という話にもなるわけだった。


「やっぱり、TBCのチカラなのか」


「あ、なるほど。それはあるかもね」


 TBC――月雁高校放送局。

 単純に放送部とも言われるが、文化系の部活の大半が強豪とされている月雁高校にあって、その中でもかなり優秀な部類に入る部活動だ。


 新校舎へと移行したときに部活動で使われる設備などがかなり改善されたという話は有名で、その中でもとりわけ優れた成績を出していたところにはそれ相応の予算がかけられていたということらしい。

 まさにその頂点のような場所が、ここなのだろう。

 収録ブールのようになっている部屋の奥の方には、何故かシンセサイザーまで置いてある。

 歌モノを録る時に音取り用にでも使うのだろうか。


 大きな額縁には賞を取った際のメンバーたちが写っている写真が多数収まっている。

 ボクが思っていた『学校の放送室らしい放送室の姿』も、思い出の一枚の中にはあった。


「おつかれさまー」


「やー、お待たせ!」


「待たせちゃってごめんね」


 ふたりしてお上りさんのような雰囲気であちこちを見回していたところで、亜紀子たちが戻ってきた。

 和恵さんもフルートケースを大切に抱えながらやってきた。


「俺もいるぞー、っと」


「お?」


 後ろから深みのある美声とともにひょこっと顔を出してきたのは、二階堂(にかいどう)くんだった。


「あれ? 二階堂くん行燈行ってたんじゃないの?」


「そりゃ行ってたよ。こいつらに連行されてきたんだよ」


 早希の疑問にこいつらだと答えながらも、二階堂くんが指で示す相手はすみれだけだった。

 予想はしていたけれど。

 ふたりがすぐさま放送室を出て行ったのは彼を連れてくるのが目的だったようだ。


「そういえば、放送部だっけ」


「いや、行燈バカだ」


「その即答はいろいろおかしいから」


 胸を張るな。


「何せ俺は、学祭準備期間は放送室に足を踏み入れないことにしているからな!」


「まさか去年も?」


「当たり前じゃん」


「ますますおかしい」


「バカだ」


「ばかだねえ」


「バカじゃない、『行燈バカ』だ。行燈の有る無しは重大だぞ」


 自信満々な二階堂くんへ、ボクをはじめとしてすみれや早希からツッコミが入る。

 しかし、そんなことでぐらつく二階堂くん(あんどんばか)ではなかった。


「ほら、そんなことはイイからさっさとやるぞ。俺は行燈に行きたいんだ」


 二階堂くんは、入り口のところに立ち止まったままのすみれと亜紀子の間を縫うようにして、放送室内に入るとすぐさま設備の準備を始めた。

 慣れたものだ。

 間違いなく彼は放送部のニンゲンだった。


 ――それにしても、『そんなこと』で片付けてしまっていいのだろうか。

 まぁ、彼にとって問題ないのなら、別に構わない。

 腑には落ちないけれど。





たまにマンモス校レベルの設備になってる学校、あるよね。

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