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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第2曲: アフロディーテ

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30/61

2-V-A. 疲労感と呼び出し


「それじゃあ午後は……、一時半くらいからにしましょうか。何だかみんな疲れてるみたいだし」


 ――疲れてる『みたい』じゃないです、けっこうしんどいです。


 小早川(こばやかわ)真央(まお)先生の一言とともに、合唱部のほぼ全員から安堵感八割くらいで、そんなことを考えていそうなため息が漏れ出した。

 去年もそうだ。

 月雁祭(つきかりさい)の最終日、一般公開の日にはそれに合わせて行われる、月雁高校音楽系部活動の定期発表会。

 これが近付いてくると、先生の指導が必然的に熱くなってくる。

 厳しい言い方こそなくても、その要求される内容が厳しいのだ。

 休憩時間になれば音楽室内の空気が緩くなるのも、仕方の無いことだと思う。

 もちろん久しぶりの本格的な部活だったことも、きっと影響しているはずだった。


「つかれた……」


「……ね」


 げっそりした頬をちょっとわざとらしく作って、美里(みり)が寄ってきた。

 声はいくらか疲れの色が見える――『聞こえる』の方が正しいかもしれない――ので、セリフは本心から出ているのだろう。


「おつかへー……」


「お疲れさまー」


 完全に声が出ていない小野塚(おのづか)くんが、ぼんやりとした表情でこちらに近付いてきた。

 声の出し方がマズかったわけではなく、単純に声を出す体力が残っていないだけと言った雰囲気だった。

 げっそり具合は、きっとお芝居ではなさそうだ。


「随分へばってるね、おにょくん」


「そういう平松(ひらまつ)もな」


 いつもは美里の強めのからかいとか、それに対する小野塚くんのツッコミとか、そういった応酬があるのに、今日はそれが無い。


「もう少し自主練もしておけばよかった、って思ってるわ。さすがに」


「私も。……これでテストがビミョーだったら、私、目も当てられないわ」


「やめて、それ言わないで。オレにも突き刺さってくるから」


「んー? おにょくん、何かビミョーなのあんの?」


「数学ですが何か」


「同じじゃん……」


「あ、マジでー……?」


「マジでー……」


 ぐだぐだになりそうな流れのまましゃべり、一瞬の無音で顔を見合わせる美里と小野塚くん。


「はぁ……」「はぁ……」


 そして、同時に深くため息を吐いた。


「あの、もう少し晴れ晴れとした話題にしねえ?」


「さんせー……」


 ふたりともさっきより明らかにげっそりとしてしまった。

 背筋も丸くなっていることに、本人たちは気付いているのだろうか。

 何だかんだで息が合っている。

 ――言わないけどね。


「だけど、そうは言っても明るい話題があるわけでもないしなぁ。あ、そういやさっき何かメッセージ飛んできてたっぽいんだよな……ん?」


「どしたの?」


 小野塚くんの気怠そうな表情が怪訝な表情に変わった。


「いや、何か呼び出された」


「何? え、どこ? 校舎裏? 体育館裏? まさかおにょくん、シメられるの?」


「待って。呼び出しで何でその発想になるんだよ。そこはほら、『え? 小野塚くん、誰かに告白されるの?』とか」


「ねーよ」


「あるわけねーだろ」


「天地がひっくり返っても無いな」


「うるせーよ! お前らとくに話の流れもわかんねえクセにっ! っつーか撫でんな!」


 背後を通り過ぎていった男子たちに頭をぽんぽんと撫でられて、小野塚くんはいつも通りのテンションに戻った。

 完全にご立腹な彼としては明らかに不本意だろうけれど、どこからどう見てもいつも通りの小野塚くんだった。


「ったくよぉ……」


「それで? どこからの呼び出しだって?」


「校舎裏なのは間違いなくて、行燈(あんどん)の方」


「あー、なるほど」


 小野塚くんは月雁祭実行委員で、行燈をメインに動いている。

 部活でほぼ毎日学校には来ているから何かあったら呼んでくれていい、という話をホームルームでしていたことを思い出した。

 ――だけど。


「まさか早速来るとは思わなかったわぁ。そこまでヤバい感じは無さそうだけど……」


 頭をぽりぽりと掻きながら小野塚くんは苦笑いを浮かべる。

 が、そこで一瞬言葉が止まった。


「あ、ミズキも呼ばれてんな」


 ――吹部だから来てるだろうし、なんて小さく呟く小野塚くんの声よりも、自分の肩が跳ねる音の方が大きかったような気がした。




ボケとツッコミがいると進めやすい。

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