1-X-B. 消えてくれない光
「お前、スゴくね!? 出そうな問題当てるならともかく、一問まるごと当てるとかさ!!」
「たまたまだよ、たまたま」
そちらを見るのとほぼ同じタイミング。
小野塚くんがなかなか興奮気味にみずきくんへと声をかけていた。
教室の端から端くらいの距離感とはいえ、彼の声量ならば充分すぎる。
「声、でっか……」
「あははは……」
呆れた顔で言うすみれちゃんに、あたしは苦笑いを返すしかなかった。
「もしかしてすみれの『バッチリな箇所』って、小野塚くんが今言ってたところと同じ?」
「ぅわ、バレるの早いし」
「まぁ、私もそこに居たからね」
そういえばすみれちゃんたちは、昼休みにみずきくんのところへと行っていた。
一応は自習をしているのかな、と思っていたけれど、やはりそうだったらしい。
設問ごと当ててしまうあたりはみずきくんらしいとも思ってしまう。
中学のころの定期テストでもそうだった。
実際にクラスでの様子を自分の目で見られたのは一年生の間だけだったけれど、それで充分。
ちょうど今回のように、先生の性格や特徴から出そうな問題を当てるなんていう、先生からしてみたら怖い能力を発揮していたことは一度だけじゃなかった。
クラスが変わったりしても、自然と風に運ばれてくるように、話には聞いていた。
吹奏楽部の子たちだったり、周りを囲んでいた子たちだったりと、その時その時で出所は違ったけれど、内容は基本的に同じだった。
みんなが、一様に、いちばんに光っている星の名前を呼ぶように。
「あれ? せーかちゃん、どしたー?」
「……え?」
「やっぱりお疲れモードなんじゃない?」
早希ちゃんがあたしの顔の前で手を振っていた。
心配するようなセリフは変わらないけれど、彼女の表情はさっきのような冗談を飛ばす雰囲気ではなくなっていた。
ダメだな――。きっと、こんなのじゃダメ。
教室の中の空気や雰囲気みたいなものは、さっきまでのテスト期間特有のものなんかじゃなく、この直後から始まる月雁祭の準備を心待ちにするようなワクワクしたムードでいっぱいになっているのに。
「あー……。うん、もしかしたらそうなのかも」
「この後部活じゃないの? ムリしない方がいいよ」
「ううん、今日はまだお休み」
すみれちゃんも気を遣ってくれたけれど、その辺りは大丈夫だ。
だけどその代わりに、今週末はぎっちり練習プランが詰まっていたりする。
実際、ここでムリをすると後が大変になるのは間違いなさそうだった。
「メインの力仕事はたぶん……あそこらへんのやる気ある男子がやってくれるだろうし、私たちはサポート役でたぶん大丈夫だから」
「そうそう。姫はそこで優雅に座っていればよろしいのよ」
「……姫って」
気が進まないけれど『あたし?』と自分を指差せば、すみれちゃんと早希ちゃんが同時に首を縦に振った。
それはちょっと恥ずかしい。
誘導尋問的だったとはいえ、そこで自分を指してしまったのが何よりも恥ずかしかった。何だったら――。
「みんな、どんな感じだった?」
丁度今、ふんわりとした口調で近付いてきた朝倉和恵ちゃんの方が、あたしなんかより余程お姫さまなんじゃないかな、と思う。
「おー、席に着けよー」
絶妙なタイミングの悪さで担任の中本先生が教室に入ってきた。
これには和恵ちゃんもくんにゃりと無念そうにうなだれながら、テストの感触について何も語れず聞けず終いで席に戻るしか無かった。
あまりのがっかりさ加減に、早希ちゃんが机におでこをくっつけて笑いを堪えるくらいだった。
「せんせー、はやくー!」
「もう全自動放課後でいいよー!」
「わかった、っての! ちょっとは黙れっ」
先生も生徒たちも威勢の良い声を響かせている。
もちろん小野塚くんもまったく負けてないし、きっちりとツッコミを受けているのもいつも通りだし、それでクラスの視線を集めるのもいつも通りだ。
あたしもそうしていつも通りに、みんなが小野塚くんに向けている視線を縫うようにして、その隙間からみずきくんを一瞬だけ見つめた。
やっと副題回収できた。




