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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (3) / Melancholic Minuet〜  作者: 御子柴 流歌
第1曲: プラネタリウム

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1-V-B. 秘蜜


「えーっと……これかな」


「あ、こっちのタイプなの」


「そっちか、ごめんごめん」


 サラサラヘアとかうるつやヘアとかいろいろとバリエーションがあるうちの、サラサラヘア用のモノを手に取る。

 どのタイプかまでは書いてなかったからみずきくんが謝ることなんてないわけで、「だいじょうぶ」と笑っておく。


「どっちのカゴでもいいから入れちゃってね」


「ありがと。……あ」


 下の段のカゴに詰め替え用のパウチを入れたその流れで、不意に目に入ってきた文字に思わず声が出る。

 何回かパッケージデザインが変わっているけれど、商品名はそのままのロングセラー商品をしゃがみながら手に取った。


「ん?」


 覗き込んできたみずきくんに、シャンプーボトルを見せる。


「みずきくんって、これ使ってなかったっけ?」


「よく覚えてんね、そんな昔のことを……。でも、たしかに使ってたなぁ」


「今は何使ってるの?」


「こっち」


 みずきくんが取ったのは、その近くにあった同じシリーズのシャンプーだった。

 いくつか香りの種類があるシリーズだけれど、その中でもフェミニンな色合いのパッケージだ。

 どんな感じの匂いなんだろうと思って見てみれば『ピーチ』の文字。

 もしかしてと香りサンプルを嗅いでみると、覚えがあるピーチ系の香りがするモノだった。

 そういえば、何となくふんわりと甘やかな香りがすると思っていたけれど、その正体はどうやらこれだったらしい。

 好きな香りだなと思って気になっていたその答えを、まさかこんなタイミングで知ることになるとは思わなかった。


「メンズのじゃないんだね」


「中学の時とかいろいろ試したんだけど、なーんか髪に合わなくてさ……」


「そんな感じするね、たしかに。ウチのお父さんのとかは絶対合わなさそう」


 昔からさらさらとした髪質だ。

 いわゆる男性用のシャンプーだと彼の言うとおり、その髪質には合わない気がする。

 最近はいろんなタイプのモノが出てきているけれど、だいたいは数回分のサンプルが配られていたり、低価格で買えたりする。

 みずきくんもそういうのでいろいろと試したことがあるんだろうか。


 彼のことだ、元々苦心したり苦労したりしているところはあまり見せないけれど、これは本当に苦労したような気がする。

 だったら『いろいろ試したけど』なんてセリフが不意に出てくることはないはずだった。


「買っていく?」


「……あー、ストック無かったかも。買ってく」


 はいと手渡した詰め替え用パッケージを、みずきくんはカゴに放り込む。


 ピーチ系、ね。


 もう一度サンプルの香りを確かめる。

 パッケージも覚えた。


 ――髪質に合ったらいいなぁなんて思いながら、ボトルの横に置かれていたサンプルをこっそりカゴに入れた。







「ただいまぁ」


「おかえりー」


 パタパタと駆け寄ってきたお母さん――御薗(みその)千里(ちさと)に買い物袋をふたつ手渡す。

 少しだけ雑な感じに、反動をつけて。

 だけど日常生活での鍛え方が違うのか、そんな娘のイジワルなんてどこ吹く風。

 軽く受け取って中身を確認し始めた。


「ん、ありがとー。助かっちゃった」


「重かったんだからね?」


 ならばとばかりに、小さな悪態をついてみる。

 実際にレジ袋に入れてみると結構な重さで、少し分散させる目的でもうひとつ袋を追加してもらう羽目になったのだ。

 その辺も少し考えてもらいたかった。


「え? 別に大丈夫だったでしょ?」


「そんなわけ……」


「だって、海江田(かいえだ)さん()瑞希(みずき)くんがいっしょだったでしょ?」


「な……!」


 わざとらしい言い方に、自分が言いかけていた言葉を飲み込んでしまって気管が痛い。


「瑞希くんのことだから、きっと持ってくれたんだろうし」


「ちょ、ちょっと待ってママ」


 言ってしまってから自分が動揺していることにようやく気付く。

 何となく止めていた『ママ呼び』をしたのなんていつ以来だろう。


「えーっと……」


 どうしよう、何て訊いたらいいんだろう。

『どうして知ってるの?』は明らかに尻尾を出している感じがするし、だけど言葉に詰まった時点で知らぬ存ぜぬを貫くなんてもう無理だ。


 ――あれ、もしかして万事休すというヤツだったりするような気が。


「最近送ってもらってるのくらい知ってるからね。母の目を誤魔化そうなんて甘い、甘い」


「えー……」


 完全に白旗をあげるしかなかった。

秘密は蜜の味、なのかもしれません。

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