5 【超ハイテンション佳奈ちゃん参上】
なんか外が明るいです。
まさか、朝ですか。まじですか。
朝から美容院あるんですけど、いつ寝ればいいですかね。
というわけで(どういう訳かは聞かないでください脳にその質問の回答はございません)家出少女と大学生 1章 5
どうぞ。
レポートも書き終わり、時刻はすっかり7時30分を回っている。
「私、そろそろ出ますね」
春が、自分の荷物をまとめながら言う。
「あ、学校までの道わかる?」
ここは湊の家だ。道がわからないのではないかと思い、湊が聞く。
「あ、ごめんなさい。わかんないです」
「じゃあ送ってくよ」
分からないなら送っていくしかない。湊は去年まで、ここから雅高校に通っていたので、道はわかる。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」
「うん、準備するからちょっとまっててね」
着替えを持って、洗面所に入る。着替えて洗面所から出てくると、春は電話で誰かと話していた。
「もしもし、お母さん? 学校行ってくるね。 うん、お弁当は湊さんに作ってもらった。うん。うん。分かった。伝えとく。またね」
どうやら電話相手は母親だったらしい。
「お母さんからで、昨日はごめんなさい、お弁当までありがとうございます、と」
「うん、了解」
「その、私からも、あ、ありがとうございます」
少し頬を朱色に染め、俯きながら春が言った。
「どういたしまして」
2人は家を出て、学校に向かう。
校門まで来ると、春の同級生らしき人物が後ろから全力で走ってくる。だが、湊と目が合った瞬間石化したようにピタッと足を止めた。
「春ちゃんに......春ちゃんに......彼氏が出来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
同級生の人は、何か勘違いしているらしい。
慌てて春が、同級生の口を抑えに行く。
「ちょっ佳奈ちゃん声大きいしっ彼氏じゃない!」
「もごご! もごごご!」
佳奈は口を塞がれて上手く喋れていない。
「ちょっ! 佳奈ちゃん! 手がヨダレでベトベトだよ!」
「だって春ちゃんが手、離してくれないんだもんっ」
「はい、ハンカチ」
佳奈のヨダレでベトベトになった、春の手にハンカチを渡す。
「ありがとうございます」
だが、これは盛大に選択肢を間違ったらしい。
「あわわわわ、春ちゃんの彼氏、スマートだよぉ! クールだよぉ!」
「ちょっだから彼氏じゃないって!」
「私もスマートでクールでハンカチくれる彼氏欲しい!」
そう叫びながら、佳奈は昇降口に消えていった。
「面白い子だね」
騒がしい子だね、とはさすがに言えない。
「そう、ですね」
春は騒がしい子だと思っていたのだろう。どうも歯切れが悪い。
「それじゃあ、僕はここで」
「うん、ありがとうございました」
丁寧に春がお辞儀をする。そして、春もまた走って昇降口に消えていった。
湊は、佳奈に春の彼氏だと言われ少しだけ、そうなった未来を想像した。だけど、それにはあまりにもリアル感がありすぎて少し恥ずかしくなった湊は、足早に大学に向かって歩き出した。
佳奈ちゃん参上!!シュババッ!!
バシュン!!(教室の扉を開ける音)
佳奈ちゃん!ここに参上!
弱きものを助け!悪もついでに助けちゃう!
正義のヒーロー佳奈ちゃん!
正義は人それぞれ!
佳奈ちゃんは今日も元気に街の平和を守り、その後ぶっ壊すのであった。