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ゴロねこニャン吉奮闘記 4

作者: 紫李鳥

 



 シーシー


 昼食を終えたニャン吉は、“海の家”の裏の日陰でゴロゴロしながら、爪楊枝で歯の掃除中。


 今、ご馳走になったゆで卵は、“海の家”のメニューのおでんに入れる具。


 キッチンスタッフが目を離した隙に失敬したもの。


 売り物をいただいてしまって悪いと思いながらも、腹ペコになったら、理性も常識もへったくれもねぇ。


 あ~あ~、満腹、満腹。さて、めしも食ったし、昼寝でもするか……。





 スヤスヤ……


 グーグー……


 ガーガー……


 グアーッ!ガアーッ!


 なっ!なんだ?……あああ、ビックリした。


 自分のいびきで飛び起きたニャン吉は、よだれを拭きました。



「ウェーン!ママーっ!」


(ん?ピンクの水玉柄のワンピース水着を着た女の子が泣いてるよ。迷子になったのかな?……交番に届けてあげたいけど、顔が知られてるからな。また騒がれるのもウザいし。……どうしようかな。このまま見て見ぬふりもできないし、仕方ない、声かけるか)


「そこのかわいいお嬢ちゃん」


 ニャン吉の声に振り向いた女の子は、


「……ヒック」


 シャックリのようなヒックをしたあと、泣き止むと、ニャン吉を見て目を丸くしました。


「迷子になったのかい?」


「……うん」


「じゃあ、俺らの背中に乗って。交番まで届けてあげるよ」


「……おはなしできるの?」


「ああ。でも、パパとママには内緒だよ。ま、どっちみち信じちゃもらえないだろうがな。さあ、ママにおんぶするみたいに乗っかって」


 ニャン吉は後ろ足立ちすると、腰を屈めました。


「……うん」


 女の子はニャン吉の首に両手を回すと、おんぶされました。


「しっかりつかまってんだよ」


「うん」


「じゃあ、行くよ。レッツゴー!」


 ニャン吉はスタートを切ると、ピューマのようにしなやかに走りました。


「わあ~、ひかりみたいにはやい」


(光?そこまでは速くないだろ?……もしかして、新幹線のひかりのことか?それにしても、俺って速いんだな。クッ)




 ニャン吉は、縫うように人波をかき分けると、ビーチのパラソルでいちゃつくアベックの間をすり抜けました。


ピューッ!


 一瞬の出来事に、何が起きたのか分からず、アベックはキョトンとしていました。




 交番の近くまで来ると、女の子を降ろしました。


「さあ、交番に入って。お巡りさんに、『迷子です』って言うんだよ」


「うん。……ありがと~」


「何、いいってことよ。持ちつ持たれつだ」


「……モチ?」


「じゃあ、あばよ」


 ニャン吉は背を向けると、再びピューマのようにしなやかに走り去りました。





(さて、夕食は何にしようかな……。人気メニューのラーメンのスープに使った煮干しの出がらしにでもするか。では、それまで一寝入りっと)




「ね、猫が交番に迷子を届けたって話、どう思う?」


(ん?さっき、パラソルでいちゃいちゃしてたアベックじゃん)


「また、あのヒーロー、《交番に落とし物を届ける猫!?》かと思ったけど、別の猫みたいだよ」


(エッ!なんで?)


「そうなの?だけど、女の子の話では、白黒のずんぐりむっくりの雑種だって言ってたわよ」


(ここでもフルネームかよ。白黒の猫でいいッス)


「《交番に落とし物を届ける猫!?》と違うところが一つあったらしい」


「何?」


「女の子の話では、爪楊枝をくわえてたんだって。《交番に落とし物を届ける猫!?》は爪楊枝くわえてなかっただろ?」


(だって、お金くわえてたんだもーん)


「じゃ、あのヒーロー猫とは別の猫?」


「ああ。ただのそっくりさんだったんだよ」






(トホホ……爪楊枝、耳に挟んどけばよかった)

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