vol.1のあらすじ
■あらすじ
趣味で見聞録を書いている好事家の「私」が、万里の長城の向こう側に住む「慕容」という騎馬民族を取材する話。
今回は紀行文風の小説。全6話。完結済み。
■主な登場人物
「私」
この話の語り手。
各地の文化や風習を趣味で記録して回っている大の物好き。いわゆる中華王朝で大多数を占める、漢人の出身。
史栄
「私」に同行する通訳。
隊商を組み広域を移動して商売を行う、商胡という部族(いわゆるソグド人)の出身。人なつこく、したたか。
慕容樹左車
「私」の護衛隊の隊長。勇猛な慕容の戦士。
慕容廆
若き慕容の長。
遼東地方の覇権をほぼ握っているが、現在は中華王朝である晋に服属している。最近は漢人知識人の受け入れに熱心。
「私」の訪問を承諾し、史栄や樹左車を派遣した。
■主な用語
漢人
いわゆる中国大陸の主要民族。
農耕によって生計を立て、一生のほとんどを城壁に囲まれた城市で過ごす。
慕容
いわゆる北方騎馬民族のひとつ。
万里の長城の向こう側に住み、厳しい環境のなかで遊牧生活を送る。
彼らの支配領域は、中華王朝の中核地域である中原から見て北東、遼東地方である。
正確には「慕容部」であり、「鮮卑族」の一部族。
※日本語では「部族」とほぼひとくくりにされるが、中国史では「部」と「族」は区別されえう。
「部」より「族」が大きく、ひとつの「族」のなかに複数の「部」がいる。
鮮卑族
かつて北方騎馬民族の代名詞だった匈奴に代わり、万里の長城の向こう側「塞外」に広く居住する民族。元々は匈奴の一部だったが、匈奴の衰退とともに分離独立した。
一度は全モンゴルを手中に収めるも、現在は慕容や宇文、段、拓跋、禿髪といった諸部に分裂している。
匈奴
北方騎馬民族のひとつ。
モンゴルに大帝国を築き、その繁栄は戦国時代から秦、漢までの長い時代にかけて中華王朝をおびやかした。
しかし数百年におよぶ中華王朝(秦、漢)との戦争、中華王朝からの懐柔政策、離間策、そして民族内の内紛によって衰亡。現在は南北に分裂し、南匈奴は万里の長城の内側、「塞内」に住むようになっている。
晋
中国の中核地域を支配する、いわゆる中華王朝。
後漢末の黄巾の乱を受けて群雄が乱立した三国時代のあと、司馬懿、司馬師、司馬昭親子を経て、司馬炎を初代皇帝に建国された。
中華を統一した統一王朝としては実に一〇〇年ぶりだが、いまだその治世は安泰とは言いがたい。
※これはフィクションである小説のためのための用語解説であり、史実とは異なった表現を含みます。あらかじめご了承ください。