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ちょいクズ三国志  作者: 油揚メテオ
第一章 桃園の契

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7/7

第七話 40代

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 俺達が住んでた涿県というところは、中華で言うと最北だった。

 なので、義勇軍を立ち上げたものの、どこへ向かえば良いんだべという話になったときに、とりあえず南に向かうことにした。

 きっといつか官軍とかと会えんだろう。

 道中黄巾がいたらぶっ殺すつもりだし。

 そんなわけで、俺達は南下する。

 途中、大き目の街に立ち寄ると。


「んじゃ、俺らは賭場を荒らしてくらあ」


「ぼ、僕達は花街に……」


「俺達は、弱そうな奴らからカツアゲでもしてくっか」


 こんな感じに各々自由に過ごすのだが(さすがに最後のは止めた)。


「義勇()とは……」


 関羽はそんなことを言いながら首を捻っていた。

 なんだろう。

 そんな哲学的なことを言われても答えられないのに。


「ガラ悪すぎじゃない?」


 幼馴染のヨウはそうボヤいていたが、軍なんてガラ悪くてなんぼだろと思う(従軍経験はなし)。

 でも俺は詳しいんだ!


 そんな時だった。


「あのう、もし」


 なんか品の良さそうなおっさん二人が話しかけてきた。


「んだよ、あああん!?」


 話しかけられたら、舐められないようにインネンをつける。

 これが俺が生まれた地方の伝統だった。


「ちょっと、玄ちゃん!」


 ヨウは止めるが、男は舐められたらおしまいなのである。


「あ、いや、驚かせてしまったのなら申し訳ない。私は張世平と申す商人です。もしかして、黄巾と戦うために立ち上がられた義勇軍の方々では?」


「某は蘇双と申す、我ら馬商人です」


 張世平と蘇双はどちらも40代くらいのおっさんだった。

 髪も髭もビシッと整え、身だしなみも整っている。

 なんというか。


「……劉備のアニキ、こいつらワルモンですぜ」


 そう耳打ちしてきたのは、洗濯屋を営んでいた孫乾だった。

 人呼んで洗濯屋ケンちゃんである。


「ケンちゃんもそう思うかい? おいらも怪しいと思ってたところだ」


「ええええ!? なんでよ、素敵なオジサマたちじゃないの」


 そんなことを言うヨウを見て、ケンちゃんと二人でため息をついた。


「……お前なんか秒で犯されるな」


「ええええ!?」


「いいか、あいつらは40代くらいだ。ケンちゃんも40代くらいだ。ケンちゃんを見ろ!!」


 ケンちゃんは、頭は白髪交じりでハゲ散らかしていて、顔は謎の吹き出物でぼつぼつ、ついでに腹もぽっこりと出ていた。


「これが40代だ!!!」


「そうですぜ、お嬢」


 対して、張世平と蘇双の整った身なりを見よ。

 きっと朝早く起きて髪と髭を整え、顔は毎日洗い、適度な筋トレをして身体も引き締めている。

 なぜそんなめんどくさいことをするのか。


「……若い女をモノにしようと企んでいるに違いない」


「悪い奴らだぜ……」


「えええええ!?」


 いちいち驚くヨウ。

 3人でこそこそ話しているんだから静かにしてほしい。

 ちなみに張世平と蘇双は関羽が相手をしてくれていた。


「いいかヨウ。ケンちゃんがナチュラルボーン40代。良い40代だ。やつらは肉欲にまみれた悪しき40代だ」


「そうかなあ……?」


「主様、ちょっとよろしいか」


 関羽が話しかけてきたのはそんな時だった。


「こちらのお二人なんだが、どうも我軍の武装を見て、援助を申し出てくれたんだ」


 我軍の武装?

 武装なんてしてないけど……。

 みんな着の身着のままで自由な義勇軍だった。


「だ・か・ら! せめて武具や馬を買う金を出してくれるそうだ」


「「「ええええええ!?」」」


 ケンちゃんとヨウと3人で驚いた。

 え、まさかのイイモンなの? ワルモンではなく??


「いやあ、人は見かけに寄りませんなあ」


「は? いやあ、はは……」


 とりあえず、取り繕ってみたが、気まずい空気が流れる。


「先日、黄巾に襲われて、妻子を失くしまして……なんとか復讐をしてやろうと思っていたのですが、我らには力がなく……劉備殿、我らに出来るのはこれくらいですが、どうか、どうか黄巾のやつらを懲らしめてくだされ!!」


 急に張世平に手を握られて、そんなことを言われた。

 涙ながらに。

 握られた手は、妙に熱かった。


「……まかせな」


「ありがとうございます!!!」


 そんなこんなで、ひょんなことから義勇軍の武装が整った。

 俺と関羽と張飛は馬まで買って、ついでに専用の武器までこしらえてもらった。

 俺が雌雄一対の剣という双剣。

 関羽は青龍偃月刀、張飛は蛇矛という大刀。

 すげえ立派になった。

 いくらかかったのかしらないが、とんでもない金額だろう。

 イケオジは悪人だと思っていたが、よく考えたら、張世平と蘇双と洗濯屋ケンちゃん。

 誰が一番胡散臭いかは一目瞭然だった。

 ケンちゃん、とりあえず痩せようか……。


「もう玄ちゃんの言うことは信じない!」


 なぜかヨウはぷりぷり怒っていたが。

 とりあえず、俺達の軍備が整ったのである。

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