第七話 40代
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俺達が住んでた涿県というところは、中華で言うと最北だった。
なので、義勇軍を立ち上げたものの、どこへ向かえば良いんだべという話になったときに、とりあえず南に向かうことにした。
きっといつか官軍とかと会えんだろう。
道中黄巾がいたらぶっ殺すつもりだし。
そんなわけで、俺達は南下する。
途中、大き目の街に立ち寄ると。
「んじゃ、俺らは賭場を荒らしてくらあ」
「ぼ、僕達は花街に……」
「俺達は、弱そうな奴らからカツアゲでもしてくっか」
こんな感じに各々自由に過ごすのだが(さすがに最後のは止めた)。
「義勇軍とは……」
関羽はそんなことを言いながら首を捻っていた。
なんだろう。
そんな哲学的なことを言われても答えられないのに。
「ガラ悪すぎじゃない?」
幼馴染のヨウはそうボヤいていたが、軍なんてガラ悪くてなんぼだろと思う(従軍経験はなし)。
でも俺は詳しいんだ!
そんな時だった。
「あのう、もし」
なんか品の良さそうなおっさん二人が話しかけてきた。
「んだよ、あああん!?」
話しかけられたら、舐められないようにインネンをつける。
これが俺が生まれた地方の伝統だった。
「ちょっと、玄ちゃん!」
ヨウは止めるが、男は舐められたらおしまいなのである。
「あ、いや、驚かせてしまったのなら申し訳ない。私は張世平と申す商人です。もしかして、黄巾と戦うために立ち上がられた義勇軍の方々では?」
「某は蘇双と申す、我ら馬商人です」
張世平と蘇双はどちらも40代くらいのおっさんだった。
髪も髭もビシッと整え、身だしなみも整っている。
なんというか。
「……劉備のアニキ、こいつらワルモンですぜ」
そう耳打ちしてきたのは、洗濯屋を営んでいた孫乾だった。
人呼んで洗濯屋ケンちゃんである。
「ケンちゃんもそう思うかい? おいらも怪しいと思ってたところだ」
「ええええ!? なんでよ、素敵なオジサマたちじゃないの」
そんなことを言うヨウを見て、ケンちゃんと二人でため息をついた。
「……お前なんか秒で犯されるな」
「ええええ!?」
「いいか、あいつらは40代くらいだ。ケンちゃんも40代くらいだ。ケンちゃんを見ろ!!」
ケンちゃんは、頭は白髪交じりでハゲ散らかしていて、顔は謎の吹き出物でぼつぼつ、ついでに腹もぽっこりと出ていた。
「これが40代だ!!!」
「そうですぜ、お嬢」
対して、張世平と蘇双の整った身なりを見よ。
きっと朝早く起きて髪と髭を整え、顔は毎日洗い、適度な筋トレをして身体も引き締めている。
なぜそんなめんどくさいことをするのか。
「……若い女をモノにしようと企んでいるに違いない」
「悪い奴らだぜ……」
「えええええ!?」
いちいち驚くヨウ。
3人でこそこそ話しているんだから静かにしてほしい。
ちなみに張世平と蘇双は関羽が相手をしてくれていた。
「いいかヨウ。ケンちゃんがナチュラルボーン40代。良い40代だ。やつらは肉欲にまみれた悪しき40代だ」
「そうかなあ……?」
「主様、ちょっとよろしいか」
関羽が話しかけてきたのはそんな時だった。
「こちらのお二人なんだが、どうも我軍の武装を見て、援助を申し出てくれたんだ」
我軍の武装?
武装なんてしてないけど……。
みんな着の身着のままで自由な義勇軍だった。
「だ・か・ら! せめて武具や馬を買う金を出してくれるそうだ」
「「「ええええええ!?」」」
ケンちゃんとヨウと3人で驚いた。
え、まさかのイイモンなの? ワルモンではなく??
「いやあ、人は見かけに寄りませんなあ」
「は? いやあ、はは……」
とりあえず、取り繕ってみたが、気まずい空気が流れる。
「先日、黄巾に襲われて、妻子を失くしまして……なんとか復讐をしてやろうと思っていたのですが、我らには力がなく……劉備殿、我らに出来るのはこれくらいですが、どうか、どうか黄巾のやつらを懲らしめてくだされ!!」
急に張世平に手を握られて、そんなことを言われた。
涙ながらに。
握られた手は、妙に熱かった。
「……まかせな」
「ありがとうございます!!!」
そんなこんなで、ひょんなことから義勇軍の武装が整った。
俺と関羽と張飛は馬まで買って、ついでに専用の武器までこしらえてもらった。
俺が雌雄一対の剣という双剣。
関羽は青龍偃月刀、張飛は蛇矛という大刀。
すげえ立派になった。
いくらかかったのかしらないが、とんでもない金額だろう。
イケオジは悪人だと思っていたが、よく考えたら、張世平と蘇双と洗濯屋ケンちゃん。
誰が一番胡散臭いかは一目瞭然だった。
ケンちゃん、とりあえず痩せようか……。
「もう玄ちゃんの言うことは信じない!」
なぜかヨウはぷりぷり怒っていたが。
とりあえず、俺達の軍備が整ったのである。




