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Arms Creator-アームズ・クリエイター  作者: 御子柴奈々
第1章 Commencement
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第2話 出会い

 

 入学式が終了し教室に戻ると、担任の高橋茜たかはしあかねがクラスの代表を決めると言い始める。



「えーと、じゃあクラスの代表を決める。と言ってもすることは雑用とかが多いな」


「その役目私、有栖川華澄ありすがわかすみが受けさせてもらってもよろしいでしょうか?」

  

 もちろんクラスに反対できる者はおらず華澄がクラスの代表となる。



 そして、運が悪く隣の席に座っていた歩は華澄に指名されしまう。



「じゃあ、副代表はあなたでいいわ。光栄に思ってね。先生よろしいでしょう?」

 

 これも反論なく決まってしまう。



「……ああ、わかったよ」


 

 色々と思うことはあるのだが、歩はとりあえず場の空気を壊さないように返事をしておくのだった。



 そのあとは、年間のスケジュールについて説明があった。



「あー、じゃあ年間のスケジュールについて説明するぞー。と言っても一般の学校とあまり変わりはない。普通に前期と後期に1年間が分かれている。テストは前期後期で各1回ずつな」

 

 高橋茜たかはしあかねが淡々と説明していく中、全員が突然集中し始める。というのも、この学校ならではの事柄が説明されようとしているからだ。



「で、勿論承知の上だろうがこの学校では普通の教養科目は最低限、履修すればいい。そのかわり、卒業に必要な単位はあるからな。そこはまあ、テキトーにやれ。あと細かいことは、学校のホームページ見ればわかるから各自チェックしとくように。よし、以上解散!」



 茜がそう言うと、歩は唐突に雪時に話しかける。



「おーい、雪時。一緒に帰らないか? まだ、慣れてないことがたくさんあるんだ。色々と案内してくれない?」


「あぁ。いいぜ、歩。こっちも特に予定は無いしな」


「おっと、忘れていたがクラス代表と副代表はちょっと運んでもらう物があるから教員室まで行ってくれ。行けば何をすれば分かるからよろしくなー」


「あぁ……タイミング悪いな……ごめん、雪時。というわけで今日は無理そうだ。また今度頼むよ」


「そうだな、それなら仕方ない。じゃ、また明日」


 

 そのまま雪時は教室を去っていく。





「あ、では皆さん私は用事ができてしまったのでこれで失礼しますね」



 歩が華澄をじっと見ていると、彼女が声をかけてくる。


「えーと、あなた名前は何ておっしゃるの?」


七条しちじょうあゆむです。一年間よろしく。」


 機械的にそう答える。そして、握手をしようと手を出したら華澄は少し驚いたように目を見開き、手を差し出す。


「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね。私は有栖川ありすがわ華澄かすみです」


 その時の笑顔はしばらく記憶に残りそうなくらいの眩しい笑顔だった。



 なんだ、案外気のいい子なのかもしれないな。

 

 そう思い二人で頼まれた用事を済ませるために教室を出ていく。





 

 現在の日本は地下開発が非常に進んでおり、それにより余った広大な土地を利用して都内の一等地にICHは設立された。



 そのため、遠距離移動の際には昔の空港などによくあった(現在は比較的どこにである)ムービングウォークというものを使う。形状はエスカレーターが床に敷かれているものである。これで、有る程度の移動時間は短縮できるのだ。




「ふーん、やっぱりこの学校は凄いよね。設備が普通じゃないし」


「あら、あなた日本人なのにこの学校のことよく知らないの? 皆さんそれも目当てで入学してくる人もいるのに」



「7歳以降はアメリカで暮らしてたからね。こっちに帰ってきたのも入試の時以来だよ」


「まあ、そうなのですか。なるほど、それであまりご存知なかったのですね」



「あぁ、そうなんだよ。そうえば有栖川さんはハーフなの? その髪は染めているものじゃないよね?」


「ええ、母がイギリス人で父が日本人。でも、日本から出たこと無くて英語は全く話せないの」


「なるほど、やっぱりハーフなのか。それにしても綺麗な金髪ブロンドだね。向こうでもそんなに綺麗な髪は見なかったよ」


 当たり障りなく褒めるが、もちろんそれはお世辞。


「ふふ、自慢の髪なの。ありがとう」




 しかし、彼女は微笑みながら純粋に感謝の言葉を述べるのだった。


 

 それから用事を済ませて教室に戻り、家に帰ろうと荷物をまとめていると華澄がピアスについて言及してくる。



「七条くん男の子なのにピアスなんて珍しいね。でも、これただのピアスじゃないよね?」


「まあね。演習のとき機会があれば見せるかもね」


「それは……楽しみだわ……」



 華澄と歩は少しだけ親しくなり、彼女の言葉遣いも以前より砕けたものになっていた。



 そして、その時の彼女の微笑みは先ほどの眩しさは一切なく、逆に邪悪さを帯びていたようであった。


 そうして華澄と別れを告げ、歩は特に寄り道もせず帰路へと向かう。


 様々な出会いがあった入学初日はこうして幕を閉じるのであった。

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