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Arms Creator-アームズ・クリエイター  作者: 御子柴奈々
最終章 Arms Creator-Re:who I really am
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第116話 七条歩:追憶 9


「止めろ止めろッ‼︎」

「D-7が脱走した‼︎」

「緊急警報は⁉︎」

「すでに出している‼︎」


 D-7はある場所を目指していた。あの白い部屋を出て、彼はゆっくりと歩きながら進んでいく。



 もちろん、邪魔をする奴は皆殺し。次々と首を刎ねていく。しかし、逃げる人間には手をかけなかった。それは彼の目的はある人物を殺すことだけだからだ。




「博士……ここにいたんですか」


「やぁ、D-7。待っていたよ」



 そこにいたのは初老の男性。しかし、この人物の偉大さは彼も知っている。クリエイターをこの世に始めて送り出した人間で、クリエイター研究においては最前線にいた人間。しかし、世界から忽然と姿を消したことで話題になっている。



 彼は世界から身を隠し、あることを研究し続けていた。その結果が、D-7のいるこの施設である。



「人工的なクリエイターを生み出す計画。その中でも最高傑作のD-7それが俺でしょう?」


「おぉ……よくぞここまで。Designer Baby of Creator Project を始めたから数十年……やっとだ。やっとここまで……」


 


 彼は以前から博士と懇意にしていた。月子と仲がいいこともあって、博士とは話す機会は何度かあったからだ。彼はいつも優しい笑顔で話しかけてくれた。月子のような義務感などはない。ただただ、慈愛に溢れた表情をしていたのだ。



「何か言い残すことは?」


「……私は嬉しい」


「は? 普通は命乞いをするのでは?」


「私の人生は、さらなる上質な……クリエイターを超えるクリエイターを作ることだった。失敗に失敗を重ね、非人道的なことも重ね続け、倫理の枠を捨て去り、自分の欲を追求し続けた。そして、お前……D-7が生まれた」


「……そうか。やけに自由がきくなと思っていたけれど……」


「そうだ。お前をただの人形のように制限することなど他愛なかった。しかし、あらゆる学問や思想に触れさせ、人間の体験談や世界の広さを知り……自分を高めたいという欲を持った人間になって欲しかった。まぁ、親心みたいなものだな」


「……なるほど。博士、でもあなたには死んでもらいますよ。『私』の人生に、もうあなたはいらない。あなたの敷いたレールはもう結構」


「あぁ、喜んでこの命をさし出そう。やっとだ、やっとこの時が来た。この時、この瞬間のために私は今まで生きてきたのだ。私は人としてやってはいけない事をしてきた。人体実験のために、多くの人間を犠牲にしてきた。自分自身の知的好奇心のために、あるゆる犠牲を厭わなかった」


「……その結果が、私ですか」


「失敗続きの私に、『3つ』の成功例が生まれた。その中でも、D-7……お前は最高傑作だった。クオリアに至れるクリエイター。完全到達者に至れるものを人工的に生み出したのだ。これは世界的な偉業だ。さらに、ワイヤーというCVAはあらゆる可能性いたれる残滓。それを発見できたのも、僥倖だった……」


「しかし、世界に公表はできるのですか?」


「公表? 何をいっている。私の目的は、この事実を世界に広めることではない。『私が生み出して、私が満足する』。その事実さえあればいい。それが、この私……七条しちじょう総士そうしの人生だ」


「……そうですか。博士の人生は、満たされたのですね」


「そう、今この瞬間こそが夢に見た瞬間。お前はきっと、私を殺しに来ると思っていた。差し向けたつもりはない、思考操作もしていない。しかし、予感はあった。いや、お前も私と同じなら……きっとこうすると理解していたのだ。さぁ、殺してくれ。もう未練も何もない。この世界に別れを告げる時だ」


「一瞬で殺してあげますよ……」


「あぁ……ありが……た……いな……ああぁあ。私の……人生は……満たされたよ……ありがと……う、D-7」



 どさっとその場に首が落ちる。それと同時に、頭部を失った体がどさりと倒れこむ。どくどくと溢れる血はとめどなく広がっていく。



「満足そうな表情かおだ……」



 博士の頭部を拾うと、その顔はいつも以上に満足そうな笑顔であった。死ぬことへの恐怖など微塵も感じられない。


 彼の生きる意味は、クリエイターという生物をさらに発展させることだった。それを成し遂げられた今、もう死んでもいいと思えたのだろう。



「あとは……いや、あれは放置でいいか」



 こうして、D-7はこの組織を再構築した。


 そして、彼は名付けた。自分の願いと博士の理想である自分を反映して、『理想アイディール』と。



 これこそが、彼の始まり。そして、七条歩の始まりでもあった。




 § § §



「はぁ……はぁ……はぁ……」

「どうですか、気分は?」

「いや……その……今のイメージ……う……あれ俺は一体ここで何を?」

「ふむ。記憶、いや意識の伝達は一時的なものですか。しかし、この技術は後々使えそうだ」

「あ、あのどうかしましたか?」

「いえ。では、私はこれで……」

「……はい」

「七条歩くん、私と君はまたきっと出会う。Dの因子を、博士の呪いを継ぐもの同士、惹かれ合うのは必然だからね」

「……え?」




 そうして、奇妙は男はテクテクと歩いて去っていった。



 そして、歩は妙な頭痛を起こしながら養成所へ向かうのだった。

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