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Arms Creator-アームズ・クリエイター  作者: 御子柴奈々
第3章 Qualia-Nature or Nurture-
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第101話 七条歩 VS 有栖川華澄 2

 


「なるほど、今は様子を見ようってか。詩織はどう見る、この試合?」


「そうですね。歩くんはクオリアを出さざるを得ないかと……それに有栖川華澄もLAを発動せざるを得ないでしょう。しかし、最後に勝つのは歩くんですね。こう言うと身びいき……かもしれませんが彼に勝てるクリエイターはもはやこの世界には5人もいないかと」


「ふーん。まぁ、そうだろうね」



 長髪の男はモニターを見ながら、ワイングラスに液体を注ぐ。その液体は透明で、端から見れば炭酸水にでも見えるだろうが実際はただの水だ。



 男は飾っているものを嫌う。無駄な着色料や人工甘味料などいらない。加工された物などいらない。研ぎ澄まされた自然な姿が何よりも好きなのだ。



 何よりも人工的な存在だからこそ、求めるのは自然というのは皮肉だろうか……男はそう思うも、その矛盾すらどこか心地いいと感じていた。



「ファースト様は歩くんをどうするおつもりで?」


「どうする……ねぇ」



 ぐいっとワイングラスの水を全て飲み込むと、再びボトルから水を注いでいく。


 そして長髪の髪を解くと、長い前髪を一気にかき上げてその問いに答える。



「もちろん、彼とは決着をつけるさ。然るべき場でね……」


「……そうですか。しかし、彼はファースト様の前に……私にすら勝てるとは思えませんが?」


「君の知っている七条歩とはもう違うさ。場数も経験も知識も違う。敵対するときは全身全霊を持って臨むといい」


「……わかりました」



 詩織と呼ばれた女性はそのまま頭を下げて後ろに下がる。


 

 ファーストと呼ばれた男は退屈していた。今の現状に非常に飽きていた。ことは滞りなく進んでいる。もちろん、彼の手の上で完璧に。だが、足りない。1番の障害と考えている七条歩。彼はもっと高みに登っていける。自分が生み出した、七聖剣セブンスグラディウスなど容易に屠れるほどの力を手にできるはずなのだ。



 というのも、七条歩は……彼と同じ存在なのだから。



 § § §




「待ちなさいッ!!!! 正々堂々戦う気は無いのッ!?」


「……」



 後方から華澄が必死に追ってくるが、彼女の言葉には耳を貸さない。すでにさいは投げられたのだ。



 もちろん、華澄は苦し紛れに……いや、様々な葛藤があってそう言っているのだろう。


 自身の想いと、他者の想い。彼女が背負っているのはあまりにも大きすぎる。だからこそ、家を、この世界を誰よりもどうにかしないといけない……その呪いにも似た想いが彼女を迷わせる。



 しかし、進むしかない。その呪いをも飲み込んで進むしか無いのだ。


 

 きっと、彼女はそう考えているだろう。


 歩は勝手に華澄の心を図ろうとするも、無意味だなと心の中で自身を嘲笑する。



(こんな風に考えるのも……きっと彼女をどこか、いや自分と同じように重ねているからだろうな)



 呪われている想い。



 歩も同じだ。自分だけでなく、他者の想いも背負っている。規模は違うかもしれないが、その強さは絶対的なものだ。



 互いに譲れないのなら、勝ってそれを正すしかない。



 それをよく分かっているからこそ、容赦はしない。同情もしない。情けもかけない。全身全霊を持って彼女を……有栖川華澄を打ち砕く。



 覚悟をさらに固めると、歩は行動に出る。



「……四聖」



 その場でふわりと宙に浮くと、歩は体術特化の創造秘技クリエイトアーツ……四聖を発動する。



「来たわねッ!!!!!」



 どこかで必ず使ってくると思っていた華澄はすでに準備を整えていた。あの体術は全てが神速インビジブルに近い速度と急所に当てれば一撃で相手を屠れるほどの力がある。



 だが、当たらなければ意味はない。



 全てを未来予知プレディクション、いや……進化した未来予知結界プレディクショングレンツェで躱してみせる。



 その考えはもちろん、歩も読んでいた。


 それを知った上での体術勝負。要は彼女のVAと自分の創造秘技クリエイトアーツ、どちらが上かはっきりさせようではないか……という真っ向からの挑戦。



 もちろん、逃げるわけはない。華澄も挑戦に真っ向から受けてたつ。



「……ふッ」



 一息で距離を詰めると、華澄に向けて拳を放つ。



(よく視るのよ……未来を感じるのではなく、その範囲を限定してるッ)



 瞬間、周囲の時が止まったように彼女は見えた。もちろん、それは主観的なもので時は動き続けている。だが、彼女の脳は1秒という時間をわずかにだが引き延ばす。相対的な時間を絶対的なものに書き換え、相手の行動をさらにそこから予知する。



 未来予知結界プレディクショングレンツェ



 それが彼女の手にいれた最高かつ最巧のVAだった。



える、視える、視える、視える、視える、視える、視える、視える、視える、視える、視える……よく、視える)



「はあああああああああああああッ!!!!!!」



 歩は雄叫びをあげながら、圧倒的な体術を繰り出す。一撃一撃が必中であり必殺。間違いなく、彼の手と脚は、華澄の体の骨という骨を粉々に砕いているイメージがあった。


 だが、それを書き換えてしまうほどのVAを持っているのが今の有栖川華澄の力なのだ。


(四聖でも……手が出ないのかッ!!!!)



 わずかにだが、焦り始める。


 四聖ならばギリギリどうにかできるという自信があったが、それは目の前の彼女に打ち砕かれることになってしまった。


 そして、躱すたびに揺れる彼女のオレンジがかった金髪は徐々に白金プラチナに……否、毛先から徐々に白く変質していった。



(この兆候は……無意識のうちにクオリアを開きつつあるのか……)


 互いに攻撃は一撃も当てていない。だが、歩の体はすでに至る所から出血していた。


 それを見た華澄はニヤリと微笑む。



「……さぁ、もっと踊りましょう?」



 ……妖艶に微笑む白金の天使は、その姿をさらに変質させる。




 気がつけば100話を超えていました。0話を含めると、今回が102話目ですね。投稿開始して一年半が経過しますが、そろそろ終わりに向かおうと思います。次章で最終章にするつもりです。非常に不定期な更新にもかかわらず、この最新話までずっと読み続けている読者の方々には本当に感謝しています。基本的には前書きや後書きは書かないのですが、今回は100話記念ということで少し長めに書いてみました。次はこの作品が完結した時にあとがきを書こうと思います。


 それではどうか、最後までお付き合い願いますm(_ _)m

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