7話
翌日。朝ごはんを食べてからさっそくアルの冒険者登録をして、街の外へ出た。
依頼を受けるのもいいけど、まずは戦い方を確認しておきたかったからだ。
「俺は大丈夫だとして、お前は本当にそんな手ぶらで出ていいのか……?」
「大丈夫だよ」
アルは心配そうにしているけれど、これで街まで来れたから問題ない。もし今日稼げたら、装備とか買うのもいいかもしれないけど。
街を出るとさっそく、マンドラゴラのような見た目をした植物の魔物が目の前に現れる。
「とりあえず、普通に戦ってみよう」
魔法陣詠唱を発動させた。昨日と同じように、足元に魔法陣ができる。
「……見たことない魔法?だな。それ、複数で戦えるのか?」
「わかんない」
「は?」
「だから今から試すんでしょ、アルで。大丈夫、アルなら避けれる!」
「なんだよその謎の自信!?」
そう言いつつも、アルは私の方をちらちら見つつ、前へと出た。右手を横に上げると、アルの腕が炎に包まれて、気が付けば手に燃え上がった剣を握っている。これも魔法の一種だろうか。
「よし、私も……」
あの魔物は見るからに火に弱そうなので、火属性を選択する。
「これ、アルだけ避けれたりしないのかな」
思ったことをぽつりと呟くと、光の中に【攻撃対象選択はLv5より使用可能】と表示された。なるほど、できなくはないらしい。というか、本当に便利だね、この能力……。ひとまず今はアルに当たらないことを願いつつ、能力を発動させた。今日は初見じゃないので、昨日よりできるはず。
「うお、危なっ!?」
ごめん、さっそく火の玉がアルにかすってしまった。
「ごめんね!避けて!!」
大声でアルに謝る。いや、避けてもらう以外に方法がないもので。申し訳ない。
アルは次々と魔物を切り刻んでいて、身軽な動きで敵の攻撃を避けていく。これならゆくゆくは私が後衛、アルが前衛で戦っていけるだろう。
大して戦わないうちにアルが最後の一体を倒し、戦闘が終わった。もう戦う必要が無いと私が判断すると、音楽が鳴り止み魔法陣が解除される。
「お前のそれ、共同戦向いてないだろ」
息一つ上がってないアルは早々に私の魔法陣詠唱に文句を付けてきた。気持ちは分かるけど。
「大丈夫、経験積めばアルにだけ当たらないようになるから」
ひとまず今はレベル2を5まで上げる必要があるだろう。
アルは私の発言の意味をいまいち分かっていない様子だったが、有無を言わさずしばらく戦闘に付き合ってもらうことにした。
「よし」
それから30分位魔物と戦って、レベルは5まで上がった。
「お前、よく連続して魔法使えるな?普通、魔法は使うと精神力が消耗されるから、よっぽどの手練れじゃないとそう大きな魔法はずっと使ってられないぞ」
「まあ……うん」
精神力、というのはMPのことだろう。私のこれはMPを消費しないので、勿論大丈夫だけど……あまりそういうことは言わない方がいいと思い、言葉を濁しておく。全面の信頼を寄せるにはまだ早いと判断した。
「それより、アルの服私のせいでちょっと焦げちゃったし、新しいの買いたいね」
「ん?これぐらい大丈夫だが」
「遠慮しなくていいって。今日のこれでいくらになるかだなあ」
「中級の魔物が多かったし、結構いくんじゃないか?」
「だといいけど」
お金はあるに越したことはない。今でも結構手持ちはあるけど。
折角だし装備一式揃えたい、という気もする。
そんなことを二人で話していると、地面が大きく揺れた。
「地震……?」
立っているのが少し辛くなって、その場に座り込む。
周りに何もないから危なくはないだろうけど、今魔物に襲われたらきつい。
「あ、アルは大丈夫?揺れてるけど」
「お前はどうしてそう冷静なんだ」
「慣れてるし」
日本では地震は多い方だから、今更泣き叫ぶほどではない。
この辺は平地だし、海もないから津波の心配もないし。
……普通の女の子だったら、怯えるところなのだろうか。
可愛げが無くて悪かったと思いつつ、揺れが収まるのを待った。
――――しかし、揺れは収まるどころか大きくなっている気がする。
「ねえ、これ、大丈夫なの?」
「………不味い、かもしれないな」
アルがそうつぶやいた瞬間、地面が盛り上がり、中から大きなモグラ……は現物を見たことが無いから知らないけど、私のイメージするモグラに似たような生き物が出てきた。勿論、獲物を見る目でこちらの方を見ている。
さて、どうしよう。