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3話

あれから無事街に着くまで数度良く分からん生き物に襲われたけど、魔法陣詠唱で乗り切った。あんな危ない場所に飛ばした女神様を少しだけ恨めしく思った反面、そのせいというかおかげで、この固有スキルの勝手はだいぶ分かったと思う。


この魔法陣詠唱というのは、音ゲーで間違いない。まず初めに属性を選び、次にレベルを指定する。この属性は、スキルのレベルが上がったら増えるようだ。現に、道中の戦闘でレベルが2になったら、雷のマークが追加された。そして、属性を多数使えば属性のレベルがアップして、新しい攻撃ができるようになる、のだと思う。こちらはまだ属性レベルが上がっていないので未確認、故に憶測の域を出ていない。


レベルを選択すると音楽が、これまた凝っていて属性ごとに違うものが流れる。音楽に合わせて筒の上から円が降ってきて、それに触って攻撃になる。よく見ると筒状の光は、ちょうど私の胸あたりの高さに白い線の光があって、そこが判定ラインになるようだった。音ゲー風に言うならよりパーフェクトなタイミングに近いと明るい色、ミスしているタイミングだと暗い色に円が光って消える。それによって威力が異なる。


やり込みがいがありそうな音ゲーだった。現状私がこの世界で遊べる音ゲーはこれただひとつだし、まあ遊びというよりは魔法だし戦闘なのだけど。



そして一番大事なのが、この固有スキルはチートじみているということだ。さすが女神様が与えてくれただけある。チートだと思った理由は二つあって、まず発動中、敵が私を攻撃しようとしても光に跳ね除けられる。要は無敵状態だった。そして、これが一番大事だけど、固有スキルを使ってもMPが何故か減らない。どうやらこれは、厳密にはMPを消費する魔法ではないらしい。


といっても、無敵なんてありえないだろうから、どこかに欠点はあるだろう。まだ体験してないけど、曲が終わるまでに敵が倒せなかったら――とか。ぞっとする。そう思うと、やはり個別行動というよりは信頼できる仲間がほしいなと思った。あと、スキル発動中は周りから私がどう見えているか分からないし、これは複数で戦闘するのに向いているかもわからないし。




そんなことを思いながら、ひとまず女神様の言う通りギルドに向かった。迷子になるまでもなく、堂々と目立つところにそれはあって、どの建物よりも大きく目立つので良く分かった。



「こんばんは」


建物に入ると、受付らしいお姉さんが笑顔で挨拶してくれる。



「こんばんは、あの、冒険者登録をしたいんですけど」

「ああ、登録希望の方ですか。それではこの書類に記入をどうぞ」


受付でお姉さんに紙を渡さたので、日本語でいいか不安になりながらとりあえず日本語で名前や年齢などの情報を記入した。ら、日本語で書いた傍から気がつけばこの世界の言語になっていた。すごい。ちなみに何故か変化した文字も読める。これも特典ってやつかな。



「書けました。これで大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です。では冒険者ライセンスを発行するので、その間に説明をさせて頂きますね」


そう言い、お姉さんがギルドの説明をしてくれる。


「まず、ギルドはランク制です。依頼を達成したり、魔物を狩ったあとのコアを見せていただくことでポイントが溜まり、一定のポイントが溜まればランクが上がります。初めはFランクからのスタートですね。依頼はランク不問のものからランク制限付きまで色々ありますが、個人で魔物の討伐をする分には特に制限はありません。ですが身の程を弁えず強い魔物に挑んでも死ぬだけなので、自分の身の丈に合った魔物に挑むのが良いでしょうね。ああ、そうそう、魔物の素材やコアはこちらで道具にするのも受け付けています、有料ですが。売却も受け付けていますので、ご自由にご利用下さい」


なるほど私が想像するギルドとさして変わらないシステムのようだ。ひとまずは魔物を狩るほうがいいかなあ、とか考えるのは後ですることにして、気になっていたことをお姉さんに聞く。


「ちなみに、依頼とか、一人で行動される方が多いですか?仲間とかってどうすれば集めれます?」

「そうですねえ。冒険を共にする仲間としては二種類あって、同じ冒険者同士で組むか、もしくは奴隷を買うのも一つの手ですね」

「ど、奴隷!?」

「ギルドではそこまで珍しい手段ではないですよ」


なにを驚くことがあるのか、といった風にお姉さんはそう言うけれど、日本人の感覚からすれば奴隷なんて、驚きしかない。この世界には奴隷制度があるのか、一つ情報が増えた。




「あ、ライセンスができました。どうぞ」


そうしているうちにライセンスができたようで、お姉さんから手渡される。また分からないことがあれば質問して下さいねと言われて、お姉さんにはすっかり冒険初心者認識をされたみたいだ。



ひとまず受付からは離れてギルドの待合室のような広い部屋に行く。このギルドはライセンスを持った人限定の格安の宿も兼ねているようで、今晩の宿が無い私は道中に狩った生き物―――恐らくあれが魔物なのだろう―――を倒した時に落ちていたものを売ってここに止まることにした。


さて、宿はここでいいとして、これからどうするか。


先程のお姉さんの話を聞いていても、魔物、とか、コア、とか、分からない単語がたくさんあった。今の私には必要なのはこの世界の知識だ。不用意に聞いて回っても怪しまれるだけだし、できれば疑問に思っても黙ってくれるような仲間が欲しい。




そう思えば、やはり先ほどは驚いたけど、奴隷を買うのがいいにではないか?とも、日本人にしては非人道的な思考だけど、そう思う。だって奴隷なら私の言うことを聞くだろうし、それに私は別に奴隷を虐げたいわけではないし、と言い訳をたくさん頭の中に思い浮かべても、聞いてくれるひとはいない。……この世界では普通なのだから、だれも後ろ指を指さないしいいだろうか。我ながら一番現実的でリスクが低い案だと思う。きっと高いだろうから、魔物をちまちま狩ればレベルアップにもなって一石二鳥だし。


うん、奴隷にしよう。よく考えたら私が取り繕いたい相手なんて、この世界にはいないのだから。





そうと決まればまずは今晩の宿取りだと換金所へ向かった。魔物を倒した時に落ちたもの、それがコアや素材だと思い、換金したい旨を告げ机の上に置く。ギルドに魔物を狩ったと報告するのはこれからでいいだろう。自分でもまだこの世界の平均的な行動が分かっていないので、ひとまずこれはお金にしてしまう。

換金所のおじさんは少し驚いたように目を見開いてから、奥へ入りお金を持ってきてくれた。


「はいよ、50万ルチルスだ」


ルチルス、というのはきっとこの世界のお金の単位だろう。紙でできていて、日本円でいう紙幣のような見た目をしていた。50万の価値が分からないので、平然と受け取る。


「ありがとうございます」




その後宿の予約をしたのだけど、宿の金額を聞いた時にどうやらこれは大金らしいことが分かった。宿は一泊ご飯付きで0.3ルチルスだった。格安とはいえ、1にすら満たない。ということは、50万というのが大金だというのは明らかだ。それに、とりあえず分からないからお札を一枚出したら、受付さんが驚いていたし。


多分だけど、私が狩った魔物にはレアアイテムをドロップするのがいたのではないだろうか。売ってしまったから何かは分からないけど。



……これだけあれば、奴隷、今すぐ買えるんじゃない?

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