表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

2話

視界に景色が映ると、茜色の空だった。


「……ほんとに、日本じゃない」


頬をつねると痛くて、夢じゃないことを改めて感じさせられた。




ひとまず、自分の現在状況を確認する。


まず服装、パーカーにジーンズという女子大生捨てているラフな服装から、ベージュ色の半袖のちょっと可愛いシャツに、えんじ色のチュニックになっていた。紺色のソックスにちょっとごつめのブーツ。女子らしくも動きやすい服装で、女神様の好意を感じた。


そして次、自分の見た目。都合良く近くにあった水たまりを覗き込むと、一見何も変わってないように見えたが、よく見ると髪が黒というよりは濃い灰色のような、でも銀色みたいにきらきら輝く不思議な色に変わっていた。これが普通なのか、な?そして瞳も髪と同じで濃い灰色のような不思議な色だ。顔の造形は平々凡々、私のままである。決して異世界トリップしたからといって美少女にはなっていない。断じて。現実とは非情なのである。



最後に、ステータスオープンと念じる。そうすると、本当に自分のステータスが見えた。


名前:マリア Lv1

種族:人間(特)

HP[500/500] MP[500/500] 詳細

固有スキル

魔法陣詠唱 Lv1


どれぐらいが平均か分からないけれど、レベルが1なのは分かった。HPとMPはそれぞれどういう意味だろう、体力とか普通のRPGでいう解釈であっているかな?と思ったら、ご丁寧にヒットポイント、マジックポイントと解説まで出てきた。親切設計だ。MPの横の詳細はなんだと思い試しに詳細と念じれば、素早さとかあれこれより詳しいステータスを見ることができたので、文字通り詳細だった。想像以上にステータス確認は便利そうだ。


そして、一番下の固有スキルというのが、女神様が言っていた私に合った能力のことだろう。名前からして魔法系っぽいけれど……試しに使ってみるか、と思った矢先、突如獣の唸り声が聞こえてきた。



「グルルルル……」


声がした方を見ると、私の腰ぐらいの高さはありそうな狼のような生き物が牙を剥いてこちらを見ていた。考えるまでもなく、やばい。


まだ死にたくないし、腰は抜けそうだし、いや安全な場所に飛ばせよと女神様に文句を言いたくなったけれど、ここには私しかいない。街は見えているけど少し遠いし、何かしなければ死ぬしかないのは明らかだった。



腹を括って、もうこれが駄目なら死ぬと思い、魔法陣詠唱を念じる。すると、私を中心に魔法陣らしき円が広がり、その円から光が発され、筒状に光に包まれた。


「な、なにこれ!?」


思わず声を発したら、狼がこちらに飛びかかってくる。しかし、光に跳ね返され、うずくまってしまった。


ここからどうすれば良いのか分からずおろおろしていると、目の前の光に、何かのマークが浮かび上がる。それは火だったり雫だったり、木だったり。確信はないけど、属性っぽい。試しに火のマークに触れてみると、どうやら触れるというのが正解なようで光を発し、光の色が赤に変わった。すごい。


次は数字が1から5まで並んで浮かび上がる。ただ、1以外の数字は黒くなっている。試しに触れてみても、選択できない。ということは、ここは1しか選択できないのだろうと思い、1に触れる。


1に触れると、【魔法陣詠唱:火属性Lv1】という表示が現れた。なるほど、こうやって魔法陣では様々な属性を選択できるようだ。




―――そう思っていたら、突然音楽が流れ始めた。


「え!?なにこれ!?」


きょろきょろしても、どこにも音源は無い。というより、この筒の光の中で流れている……?狼はなおこちらを見て敵意むき出しである。早く倒さないといけないのに、ここにきて謎の音楽である。


ピアノにバイオリン、トランペットのような音が聞こえ始め、それと同時にきらきらと光る円形のマークが筒の上の方から下に降りてきた。それも一つではなく、いくつも。


とりあえずこれは触れるのがいいのだろうかと思いいくつかに触れてみると、ある円は明るい赤、ある円は赤、ある円は暗い赤など、違う色に光って消えた。そうして手を動かしつつ目の前をみると、なんとびっくり、火の玉が狼向かって飛んでいっている。あ、当たった。


とりあえず、この円を触れることで攻撃が発されると結論付け、次々に円を触っていく。音楽があるのがなんだかよくて、リズムよく円を触ることができた。




……ん?リズムよく?



なんだか、この感覚に既視感がある。音楽に乗って、流れてくるアイコンをタッチ―――



「ってこれ、思いっきり音ゲーじゃん!!」




どうやら音ゲーに後ろ髪引かれて未練があったからか、私の能力は音ゲーみたいです。


なんとも複雑だけど、これからこの能力もとい音ゲーをやり込めばいいわけだし……これで未練はなくなったかな……?





ほどなく狼は倒れさらさら灰になり、魔法陣は解除された。狼だったものの方に近寄ると、確かに狼は跡形もなく灰になっている。触ってみると、さらさらと手から零れ落ちた。


「……ん?」


よく見ると、狼の灰の中に牙と銀色の宝石が混ざっている。これはRPGでいうドロップアイテムというやつだろうか?よく分からないので、ひとまず持っておくことにする。




さて、こうしてはいられない。狼と戦っているうちに陽が沈み始めていたので、慌てて私は街の方へ向かった。歩いて30分ぐらいで着くだろう、目測だけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ