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どこにでもあるはずの、些細な日常

作者: 山城ノ守


「ここも、随分と変わったね」


彼女は空を見上げてそう言った。


 俺はというと、そんな空や、大河を挟んだ向こう側の何の変哲のないビル群には興味が無いから、電車を待つ間は何時もの様に駅前のコンビニで買ったサンドイッチを地面に座りながら食う。


「そうか? あぁ、まぁ確かに、俺らの子供のころとはずいぶん様変わりしたもんだよな」


 言われてみればそうだ。あまりに月日が早いのと、それ以上にまたこの町の成長が早すぎたせいで、『町』に対する風景や印象といったものが俺にはなかった。そんな街並みも含め、彼女とは幼少のころほぼ同時期にこの地へと引っ越してきたらしく、もう十数年来の付き合いだ。


 俺はこの町に何の感慨もなくただただ毎日をそれなりに楽しく、かつ平和的に生きていければいいと思っただけで、特別それ以上に深い何かを考えたためしはない。


「変わったっつっても、変わりすぎて元がどうだとか、どこがどう変わったってのがさっぱりわからない街並みだよな」


「まぁ、国策で入植地として造られたんだから、自然な発展は待ってられなかったんだよ。たぶん」


 その、なんチャラって国策のおかげか、常に都市開発がひっきりなしに行われ、街並みはせわしなく顔つきを変えていく。空き地に倉庫がたったと思ったら次の日には家が建ち、一月後には集合住宅、半年たてば大体は高層ビルやマンションへ様変わりだ。


 なんか地球で重大な問題が起きて……人が宇宙に移住させられるっつうの、昔習った記憶があるんだがな……なんだったか。


「あぁ、なんだっけあれ……ほら、ほら! あれ!」


「増えすぎた人口を宇宙に送り出す計画『スペースコロニー計画』ね。あなた、そんな小学生も知ってる常識を忘れるなんて、本当に大学行けるの?」


「るっせぇ。しかしまぁ、お前もよくあれだけでわかったもんだな」


「何年一緒にいると思ってるの。当たり前じゃない。あなただって私の考えてることくらいは解るでしょ?」


 彼女は相も変わらず何が好きで変わりもしない空を眺めてるのかね。表情も解らねぇ。


「悪いがな、街並みが変わってどうのとか言いながら、いつも空ばかり眺めてる女の子の気持ちなんかはわかりゃしねぇよ」


 ほれ来るぞ、きっと来るぞ、あぁ、やっぽりいつものふくれっ面だ。毎度こう似た会話していつもこんな反応されたんじゃたまったもんじゃないな。


「あなたも相変わらず。そういう事を言ってるんじゃないってのに……でもね、その問いには答えてあげる」


「へぇ、槍が降るかな」


「町はね、すぐに変わって思いでも思い出せないくらい、家を一歩出れば昔の記憶とつながらなくなる。けどね、あの網の目のような空は、空だけは貴方との思い出同様に……」


『西灯台~西灯台~お乗りの方は……』


 生憎最後の方は聞き取れなかったがまぁいいか。次の機会があるだろう、なんてその時の俺は思ってしまった。


 しかし今はもう、彼女とは連絡は取れない。



これは、執筆を通じて交流のある方々と共に、テーマを決め、テーマに沿った画像をネット上から集め、その中の一枚を元に物語を付けていこうというちょっとした企画の作品です。


今回の題は「恋愛」で、ちょっとSFチックなノスタルジーを感じさせる画像をもとに書かせていただきました。


千文字と時間制限がある中描写力を鍛える名目で行われた会ですが、やはり難しいですね……普段歴史物を三人称で執筆する私には一人称はあまり合わないようです……もう少し鍛えて頑張れたらと思いますb


あと、文字数制限を百時弱超えておきながらすっきりとする終わり方にできなかったので、およそ十話くらいで完結するちょっとした連載物も書くかもしれません。

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