ゲームセンターにて
校門を出てから20分後、私たちはゲームセンターに到着した。
このゲームセンターは駅前にあるので少し帰りのルートを変えるだけで来ることができるのだ。
「ゲーセン到着~」
「そういえば沙夜、何かやりたいゲームあったの?」
「う~ん。今は音ゲーとUFOキャッチャーがメインかなぁ」
「最近はメダルゲームはやめちゃったの?」
「最初は楽しかったんだけどメダルが7万超えてからはあんまりやってないよ」
「7万って……確か始めた時は200枚じゃなかった?」
「200枚からだったからスロットやってたんだけど『おい!組長』と『剛拳』のARTで4000枚くらいまで増えたかなぁ。それからは学校帰りに寄って天井近くで放置されてる台でやってみたりしたら2万まではいったんだよね」
「帰り私と別れた後帰ってる向きが違うと思ったらゲームセンターにいってたんだね……」
「あの頃は私も若かったから増やす事に夢中になってたんだ」
「ゲーセンで200枚買ったの1カ月前だったよね!?」
「まぁそのあとは他のコインゲーでジャックポット出してたら7万いったわけよ」
「そっそうなんだ……」
さすが沙夜だ。
「沙夜がさっき言ってた音ゲーってリズムゲームみたいのだよね?」
「そうだよ~。よくやるのは破壊の達人とかかな」
「破壊の達人!?それ本当にリズムゲームなの?普通に聞いたら別のジャンルの様に聞こえるんだけど……」
「ボタンを全力でリズム良く叩くゲームで叩く力で得点がかわったりするゲームだよ」
「そっそれは斬新なゲームだね」
「うんうん、これ体力使うから体鍛えてないと次の日腕が上がらなくなったするみたい」
はたしてそれは屋内でやるゲームとしてはどうなのだろうか……。
「UFOキャッチャーの方はわかるけど、UFOキャッチャーってアームのところがぐらぐらだったり、掴む力が弱くて取れる気がしないんだよね」
「そうだね。やっぱりゲームセンターも商売だし、ある程度の利益が入る計算で設定されてるからねぇ。だから取れるまでにいくらかかるか考えたり、取り方を工夫したりするのが楽しいんだよ」
「その計算力や考える力を勉強に少しでも向けた方がいいと思う……」
「それは無理だ!」
はっきりと断言されてしまった。
沙夜との会話に集中していて気づかなかったけれど、この店には同じ学校の生徒が多く、その中には同じクラスの男子生徒もいた。
確か名前は……
「おっ峰岸も来てるな」
沙夜も丁度気づいたらしい。
「沙夜、峰岸君と話すの?」
「ちょいちょいねぇ。ゲームセンターで平日は毎回会うけど、休日もきてるんじゃないかな」
「峰岸君も常連なのか。確か学校だと休み時間は本ばっかり読んでるよね」
「そだね。あんまり無駄話得意じゃないみたいだからねぇ。ゲームセンターだと峰岸はUFOキャッチャー上手すぎて有名なんだよ。どんな商品でも原価以下でとってしまうから店員泣かせでね」
「そんなに上手いんだね」
「店員も安く取れないようにしたいみたいだけど、峰岸に取れなくしたら他のお客さんは絶対取れなくて来なくなっちゃうから諦めてるみたい」
うちのクラスって沙夜以外にも凄い人間が居たんだとはじめて知った。
私たちがゲームセンターを出る時、絶望に満ちた顔をした店員と両手いっぱいの商品を持った峰岸君を目撃した。