昼食から放課後
教室につくと沙夜がいきなり飛びかかってきた。
「ひなっち~おそいよぉ~お腹減って死ぬかと思ったよ!!」
「沙夜食べてなかったの!?」
「1人で食べても寂しいじゃん?ソロご飯とか嫌だしねぇ~」
「まさか待ってると思わなかったからゆっくり来ちゃったよ」
「まぁOKOK!ご飯にしよう!」
そんなこんなで私たちは遅めの昼食をはじめた。私は購買に残っていたあんぱんと野菜ジュース、沙夜の昼食はいつも通りよくわからないものだった。
「この黒いの何……?」
「イカ墨きゅうりだよ」
「じゃあこの紫の丸いものは……?」
「卵焼きだよぉ~ひなっちは卵焼きも食べたことないのかね?」
「普通の卵焼きは黄色いと思うんだけど……私の知ってる卵焼きと違う……」
「よければ1つどう?」
「いいよ、沙夜の食べる量減っちゃうし」
「そか」
なんとか紫の卵焼きからは回避できた事にすこしほっとしている。沙夜の昼ご飯はいつもこういう普通では考えられないものが出る。昨日は、黄色い鮭と半透明の昆布、その前日は光沢のある白い何か、先週は珍しくまともでハチノコとイナゴの佃煮だった。
「そういえば帰ってくるのただパンを買って帰ってきたにしては遅くない?」
「うん……」
「なんかトラブったん?」
「実は鈴本恋華先輩に話しかけられて少し考え事してたらおそくなっちゃってね」
「恋華先輩に?」
「うん、なんか強いオーラが見えるとか不思議なことをいわれちゃってね」
「オーラねぇ……」
一瞬、沙夜の顔つきが変わった気がしたがすぐにいつもの沙夜に戻った。
「まぁ変わってる先輩だし気にしちゃだめだよぉ~」
「そうかな?」
「そうそう!それよりさ昨日のテレビ番組だけどね」
それから沙夜とテレビ番組の話をしながら食事を終えた。
放課後。
皆が部活動に勤しむなか私は帰宅の準備を始めた。私の学校では部活動は強制ではなく、やりたい人だけという形になっており、特に特殊なところが新しい部活も自由に作ることができ、承諾もあっさりと通ってしまうところである。ただし、必ず顧問となる者を連れてこなければならないという点はある。顧問となる者は部員となる生徒の責任を担う事となるため、顧問を見つけるのは少し難しいかもしれない。
私がいわゆる帰宅部と言われるものなのは単に部活動をしたくないという訳ではない。私の家では父と母が急用で私を呼ぶことが多く部活動の間に度々抜けることになってしまう。その度に他の部員に迷惑をかけてしまったり、部活全体の雰囲気を壊したりしたくないという理由からだ。
「ひなっち~帰ろ~」
沙夜も帰宅部であるが沙夜の場合は単純に部活が面倒だからだ。
「準備できたよ、沙夜」
「全く待ちくたびれちゃったよぉ~」
「まだ終わって1分も経ってないよ」
「いやぁ、ホントなら終わったらすぐ教室を飛び出したくらいくらいなんだよ」
「そんなに急いでどうしたいの?」
「学校から単に出たいだけかなぁ。補習受けろって話を思い出したようにされたり、部活の勧誘されたりするの嫌だからさ」
沙夜は勉強や料理は駄目なのだが運動はずばぬけているためよく運動部から勧誘される。
足の速さが極端に早くはないのだが持久力がすごく、体育の時間どれだけ走っても汗もかかず息もきらさない。
結果、長期戦となる試合がある部活では疲れ知らずの沙夜は欲しい逸材らしい。
「帰りだけどさぁゲームセンターよってかない?」
「私いつ呼ばれるかわからないよ」
「問題ないって~ひなっちの都合はしっかり理解してるからさ。呼ばれたら帰っていいし、それまででいいから遊ぼうよ」
「そうだね」
私達が校門を通過のはそれから5分後の事だった。