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第4話:初対面パーティ

入会時に無料参加の案内のあった初対面パーティに行った。ニットにスカート、ウールコートにストールという格好である。事前の案内文を見ると、会場は立派だがそれほど派手に装う必要はないイベントのようだ。

地下鉄から出て結構歩く。車道は登る側の一方通行である。そこを通る車は高級車とタクシーで9割を占めていた。会場となる建物には多くの大型バスや巡回バスが停まり、また、タクシーも多く来ていた。

建物に入ると結婚式の関係者らしき人が多く、来たところを間違えたのではないかと心配したが、まとまって入ってきた5〜6人の男女の中に同じ会場案内の地図を持った人がいたのでその塊についていく事にした。

受付で会員証を提示し名札を受け取り胸に取り付けると会場内に入った。既に7つの円型テーブルにそれぞれ20人以上、計150人位の会員が来ていて、司会者が注意点の説明をしていた。男女半々で30代の集まるテーブルがやはり多い。知らない人ばかりで決まりが悪いので黙って司会者の話を聞くことにした。

乾杯の後、すぐにトーキングタイムが始まる。トーキングタイムは、あらかじめ記入しておいた自己紹介カードを見せ合って一人5分話をし、どんどん相手をかえてできるだけ多くの人と交流を持ち、その中からいい人を見つける、といった内容である。

初めの相手は乾杯の時にビールを注いだ相手だった。カードを交換する。「ここまでは電車で来たんですか」簡単な質問をしてみる。相手は必要以上に事細かく話してくれた。最後は全く同じ質問で返してきた。「はい。地下鉄1本で。駅からここまではだいぶ歩きましたけど。」「あー、あそこか。行ったことあるよ。映画館とか結構あるんだよね。」「そうなんですよ。そこ、自分も行ったことあります。」「どうだった?」「最近見にいったのはよかったですよ。」「じゃあ今度一緒に見にいこうか?」「ええ。」時間が来たので「また」ということで離れた。

次の相手をとりあえず探そうと周囲を見回していると目の合った人がこちらに来てカードを差し出してきた。相手が礼をしてきたのでこちらもそれで返すと話が始まった。「へえ、家からどういう風にしてここに来たんですか?」さっきと同じ質問でいささか気にはなったが、同じ様に答えた。「近いですね。」と相手が感想を言う。「そうですね。」と返す。「趣味は映画なんですね。」と相手が質問する。「はい。」と答える。カードの記載項目について一通り確認が取れた後しばらく沈黙が続いた。交替の時間が来ると「今度デートしませんか?」と聞いてきた。「他の人とも話してみて、それから決めたいと思います。」と言い、一礼してその場は離れた。

次もまた、目が合ったさっきとは別の人がこちらに来てカードを渡してくる。タイプではないが話を合わせた。

正直、目が合っただけでこの貴重な時間が無駄に終わることに無性に腹が立った。次からは目が合った時に話したくない人には、はっきり目を突き放すことで避け、主導権を確保するように努めた。しかし、これは逆のことも言える。つまり、こちらからカード交換を求めても相手が自分を気に入らないのであれば避けられてしまうのである。こういう場では、やはり選択肢は常に美しい人、かっこいい人に多くあるのだ、と再認識した。

結局、10人と話をしたがほとんどはあまり芳しくないものだった。トーキングタイムが終わるとビュッフェ方式の食事タイムとなる。「あえて言えば初めの人かなあ。」と思いながら列に並んでいると、その彼が私のところへ来ていくつか食べ物を載せた皿を渡してくれた。「ありがとうございます。」と言おうと思ったその瞬間「仁ちゃーん、私のも取ってー。」と言う声が聞こえた。彼は人気があるようだ。もてるならこんなところに来なくてもいいのに、と思った。

後半の部はフリートークタイムだが大半の男女が疲れてイスに座って休んでおり、パーティの参加者として機能していなかった。直子も同じく足が疲れており座って休んでいた。隣の女性が声を掛けてくる。「調子どう?」「まあまあです。」自己紹介カードを見せ合う。園川麗さん(35)一級建築士だ。「すごいですねえ。」と言うと色々と話をしてくれた。

彼女は十数年前あるテレビ番組で、住む人が人生を終える場所として用意されているかのような暗い家が見違えるほど明るく生まれ変わり、部屋のレイアウトから内装の細部に渡るあらゆる工夫が、自分が今まで見てきたものからは想像も及ばない次元から発想されているのを見て激しい衝撃を覚え、番組の出演者すべてがその出来栄えに賞賛の声を上げ、同時にそこに映っていた主人の奥さんが感極まって涙をぽろぽろこぼしているのを見て即座にこの道を志すことを決意し、多くの苦難にも初心を貫徹し乗り越えた結果、成功を収め今に至っているのだそうだ。

彼女の存在はこれまで自分が持っていた常識を覆した。彼女自身が成功者であり「嫁ぐ」といった伝統的な考え方に固執することが現実にそぐわないことを、身をもって知ることとなった。

園川さんは初対面パーティ3回目の参加ということだったので、色々アドバイスを聴くことにした。「どういう書き方だと男ウケするんでしょうかね?」「あなた、見た目悪くないし、性格も擦れていないから自分が思っている以上に人気あるはずよ。すぐにいい人見つかるわよ。それにここの会社は女性だけ期間延長が無料でできるシステムになっているから慌てる必要もない。」この点は既にアドバイザーから説明を受けた。しかし、あまり長くいても在籍年数が会員番号から相手に知れてしまうため、すべてがよいというわけではない。

もうこの時には仲のいいカップルと1人ぼっちの男女とで情勢がはっきりしていた。パーティの最後、司会者はカップルに対して近くのレストランの食事券を配っていたが他の男女はただただそれを見守り、またある者はさっさと帰っていった。

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