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罪人奇術師に成金盗賊


暇つぶしサイコー!ヒャホォウ!……………ふぅ。



「ナーナー、これはナんだー?」

「それは草ですわ」

「ヘぇー、じゃあこれはナんだー?」

「それは虫?ですわ。どんな虫かは存じませんが…」

「どんナ虫?」

「…ああもう!とにかく虫ですわ!虫!!」

「わかったー」


雑草の敷きつまった草原を歩き、話し合う二人の人影。



一人はエディル・ナナ。その女性は高級そうなフリルのついた服に、ロールされた金髪。気位高そうな緑の瞳に整った顔を持っている。


さらに首にかけたルビーのペンダント、指につけた金の指輪。腰に差しているレイピアの鍔には、銀の装飾が鮮やかにされている。

まさに貴族。彼女を見れば誰だって思うだろう。ああ、彼女の体には高貴なる血が流れ、きっと何一つ不自由な事などなかっただろうなと。


が、そんな彼女は元の世界での職業は盗賊である。上記の物は全て盗品である。

貴族でもなんでもない。




もう一人は中性的な子供。黒い目に白い髪、くりくりとした栗色の目。

着ている服は黒白の服…囚人服である。手首には鎖のついた分厚い鉄の枷がはめられている。

足首まである皮のブーツは赤黒い汚れがついている。子供のやんちゃな遊びでついたのではない。


彼の名前はヘヘルガ。

彼は見た目通りで、異世界では砂地三番刑務所というところで服役してた受刑者である。










(ああもう!なんでこんな事になりましたの!?)


エディルはイライラしていた。

彼女はこの世界にやってきた千人の勇者(職業は盗賊であるが)の一人である。


が、ハッキリ言おう。別に来たくて来た訳じゃない。この世界がどうなろうと知ったこっちゃない。

異世界の宝や金品に興味はあるが、そこまでして欲しいというわけでもない。

今すぐ叶えたい夢も願望もない。今の盗賊生活に満足している。お腹がすいたら盗る、欲しい物があれば盗る、金が欲しいと思ったら盗る。


実に単純。この人生に、この生き方に自分は満足している。







そのはずなのに自分はこの世界に呼び出された。


心外である。自分の得意分野は盗みであって戦闘ではないのだ。

ああ…自宅に保存しておいたクレスト産のワインが飲みたい。たしかメタボな領主からパクった物だ。


(ですが、それにはまず情報ですわ…)


元の世界のワインの妄想を振り払い、エディルは現実を直視した。

妄想を繰り返してもワインは出てこないのだ。


「ヘヘルガ、本当にこの先に街があるんですの?」

「たぶんナー…空を落ちてくる時は確かに見たけどナ」


気のない返事が聞こえてきた。

ヘヘルガはボケーっと青い空を見ている。



この少年と出会ったのは三時間前。

この広い大草原にエディルが文字道理の流星になって降ってきた時、その隣に落ちてきたのだ。


事情を聞けば、自分も勇者千人のうちの一人だと言う。

見た事もない地で、同じ境遇。エディルはすぐに手を組んだ。仲間は利用できる

一人より二人、二人より三人、三人よりたーくさんと言う言葉は、その頭数だけ一人あたりの危険が減るのだ


「…あっ、見ろ。あの雲なんか人間の大腿骨に似てるナー」

「不気味な例えはやめてくれません!?」


…多少おつむは弱そうだが。


「そういえばエデル」

「エディルですわ!次に呼び間違えたらその●●●を☆☆の★にブチ込みますわよ!?」


このヘドロより汚い俗語がスラスラ出てくる辺り、彼女が真っ当な生き方をしてないという証拠である。


「最近の貴族って怖いナー…ところで☆☆ってナんだ?」

「☆☆は☆☆ですわ…それと私、貴族なのは見た目だけですわ」

「そうナの?」

「私の祖先は遡ればどこの馬の骨とも知れませんわ!私は肥え太った貴族から国民の血税を奪い返す、麗しき義賊!鋼のトゲを持つ金の薔薇!!」


そんな麗しき義賊が奪った国民の血税を、国民に返すかと言えばNOである。

主に装飾品と食事と服と美容に使われる。どのあたりが義賊なのだろうか?


「ナんだ、ただの成金盗賊だったのか」

「おだまり!この罪人っ!」


罪人に盗人が言っていい言葉ではない気がする。

というか、エディルも一歩間違えれば罪人なのだが……。


「…ん?そういえばヘヘルガ、あなた最初になんて言おうとしたの?」

「…あ、忘れてたナー」


ヘヘルガは右方向を指さした。


「あっちに街らしき影が「そういう事はさっさと言いなさいマヌケ!!」言おうとしたんだけどナー…」


エディルは走った。

ヘヘルガは少しションボリしながら、後を追った。






名前、エディル・ナナ

性別、女性

年齢、16

身長、百六十四


職業、盗賊

・自称義賊だが、一度も民衆に金品を恵んだことはない。

・「豚みたいな貴族に使われるより、私に使われた方が皆様も喜びましてよ?」

・その美貌と容姿、大胆な作戦にいっそ図太いとも言える精神力で数々の盗みを行ってきた。

・詐欺、スリ、騙し。無銭飲食だって得意。

・民衆に人気はもちろん、ない。


武器、突剣レイピア

・あんまり得意ではない。中の下程度の実力。

・彼女の最大の武器は美貌、それに盗みの腕である。


好きな物

・金品にワイン。特にワインが好き。






名前、ヘヘルガ・ロバート・ハーゲン

性別、男

年齢「数えた事ナいナ」

身長「知らナいナ。でも小さいナ」


職業、元奇術師

・奇術はここでいう魔法。魔法使い、もしくは魔術師という方がいいかもしれない。

・本人曰く、あまり戦闘系ではないとの事。詳細は不明である。

・性格はぼんやりしてるが、エディルが言うほどバカではない。むしろ賢い部類である。


罪状、大量誘拐殺人

・●年●●●月●●●●日、ヘヘルガ・ロバート・ハーゲン(年齢不明、自称奇術師)は『小鳥さえずる村』において自称『奇術の実験』を行い、人間八十名に家畜五十二頭が住む『小鳥さえずる村』自体を行方不明にした。

・「実験を失敗したんだナ。悪いことしたナー……」と証言。

・大量誘拐殺人罪によって砂地三番刑務所へ。

・村は現在も見つかっていない。





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