借金と機械
ここは地球と似た、地球を鏡に映しただけのようなある世界。
そのよく似た世界にある平凡な国の平凡な町にあるごく普通なアパートの一室から―――
―――絶叫が聞こえた。
「あと一週間で五億八千万の借金なんて返せるくぁああぁぁあぁあぁ!!」ガッシャーン!
「どうどう、落ち着いて下さい浩二様」
「黙れ鉄屑!誰のおかげでこうなったと思ってるんだよ!」
中で叫んだのは佐倉河 浩二。
ごく普通の大学三年生…強いて違うとこを上げるなら…そうだな、ひたすら平凡ってところだ。
その叫んでいる浩二に返事を返しているのは背の高い女性。
肩までかかる整ったストレートの黒い髪に黒縁の眼鏡。左目の下に黒子がある。雰囲気といい感じと言い正にすっごく…委員長です。
「大丈夫です。まだ一週間『も』あるじゃないですか」
「馬鹿野郎!一週間『しか』ないんだ!」
「訂正します。まだ一週間『しか』あるじゃないですか」
「…」
この女性は人ではない。機械だ。
今から千年後の世界の技術で作られたらしい。
事の始まりは浩二が大学一年の時、パソコンで訳のわからないサイトを開いたのがきっかけだ。
この時、酔っていた浩二は面白がって色々な所にクリックして遊んでいた。
これが悲劇の始まりだった。浩二はこの時の自分を百八発ブン殴ってやりたいそうだ。
翌日、突然家の前に現れた女性は浩二に言った。
「はじめまして佐倉河浩二様。この度は煉獄ネットワークのご利用をありがとうございます。私、お買い上げ頂いた『対人型護衛ロボットPQ-12』です。商品にお間違いなどないでしょうか?」
「とりあえず、病院行ってください」
浩二はドアを閉めた。
自称『対人型護衛ロボットPQ-12』はドアを蹴破って中に入った。
「な、なんだって!俺が昨日カチカチやってたのは未来のオークションサイトでかつ俺は売れ残りの『対人型護衛ロボットPQ-12』…つまり君を六億円で買ったというのか!?」
「はい」
「もしもし?警察ですか?」
浩二は警察に連絡した。
『対人型護衛ロボットPQ-12』は手刀で携帯を破壊した。
「仮にお前の話が本当だったとしよう……クーリングオフだ!!」
「仮にじゃなく本当の話なんですが…くーりんぐおふ?未来の世界にそんな物はございません」
「なん…だと…?」
「…もし三年以内に払えない場合はありとあらゆる方法で強制返済させて頂きます」
「それはどんな…方法ですか…?」
「未来の世界でも非合法ですが…臓器など」
あれから二年。遊びたい盛りの浩二は全てを捨てて金を稼いだ。
ありとあらゆるアルバイトで金を稼いでいった。大学へ行く時間以外は働いて働いた。
講義も出来る限りサボって時間を稼いだ。
が、現在稼いだ額は二千万。学生が二年で稼いだにしてはかなり良い額だが、浩二は残り一年で五億八千万を返済しなければならない。まず無理である。
浩二は机に突っ伏した。バイトを三つも掛け持ちした疲労が彼を襲う。
彼が今日、睡眠を取れる時間はあと一時間半である。
「浩二様、お休みになりますか?」
「それ以外に…どんな選択肢があるんだよ…」
大体なんで自分はこんなのを買ったのだろうか?
見た目は美女なのに所詮は未来の人型護衛戦闘機械。まだ未来のダッチワイフ人形の方がマシだ。
一度、なんで見た目が女なのか聞いたら「制作者曰く、戦う美少女萌え!だそうです」アホか。
こいつに出来る事と言ったら、その戦闘機能をフルに生かした銀行強盗ぐらいだ。
もちろんそんな物で得た金など邪道である。というか犯罪ダメ、絶対。
もっとも、このまま行けば最終的に犯罪を犯すしかないのだが…。
浩二はノロノロと布団に移動すると、そのまま倒れるように寝た。
ああ、どこぞに合法的手段で大金が手に入るチャンスがやってこないかなと思いながら。
「なお、見事覇王(笑)を倒し、ジッ・イファレンドを救った方には!我々に叶えられる限りでどのような願いでも叶えます!!金の山だろうが札束だろうがすべてあなた方の世界に送り届けます!!」
…チャンス来た。
勇者
・佐倉河 浩二
・男性
・上世大学二年生
・身長、百七十
・状態、借金地獄
・ごくごく一般的な人間。彼の人生に不思議の字はな…かった。現在は借金地獄。
問題が問題なだけに誰にも相談出来ない。正に泥沼状態。
アパートで一人暮らし状態。あまりに付き合いが悪いため交友関係は致命的。
最近、ストレスのせいで荒れている。
持ち物
・正式名称『対人型護衛ロボットPQ-12』
・佐倉河命名『月見里 八香』
・女性ベース
・身長、百九十
・状態、???
・未来の世界からやって来た委員長型ロボット。
『煉獄ネット』という未来のオークションサイトで売りに出されていた。
未来の世界でも最新機種。
ある『欠点』の発見により売りに出されていた。
その戦闘能力は未知数。佐倉河が使用した回数はゼロである。
性格は誠実かつ生真面目。