罪人奇術師に成金盗賊3
来週の勇者はニャンコ太郎さんです。本人がやっていいよつったんで。
「ナんとかまいたナー」
「ゲッホ!へっほげはっげほっげほっ!!」
「…何語?」
「溺れかけの人間語ですわこの馬鹿!トンマ!●●●●!!」
「大丈夫そうでナによりだナ」
エルタルの居住区。その等間隔に並べられた家々の間の路地に、二人はいた。
エディルはやっとの思いで呼吸を整え、ヘヘルガを睨みながら怒鳴った。
「さっきのは何ですの!?見えない壁があって、地面に波紋が広がって、私が沈みましたわ!地面に!!」
「そりゃそういう奇術だからナ」
「き、奇術?なんですのそれ?」
「エディルのとこにはそういう技術はナかったのか?」
「生まれてこの方、見たことも聞いたこともないですわ!」
ヘヘルガは周りを見渡した。ここもあまり安全ではない。
「場所を移すんだナ。行く途中で簡単に説明する」
「…わかりましたわ」
「―――つまり、魔法?あれは魔法みたいなものですの?」
「まあナー。といってもここで使われてるがどんなものナのは知らナいけど」
エディルとヘヘルガは場所を移した。
先程いた場所から、少し離れた教会(どんな神を奉っているのかは知らない)の屋根の上にいた。
「信じられませんわ…と言いたいところですが、ここにいること自体が信じられないことですわね」
「意外と受け入れるのが早いナ」
「頭の回転も速くなければ盗賊なんてやってられませんわ」
にわかには信じがたいですけど。そう言うとエディルは盗ってきた世界地図を広げた。
ヘヘルガとエディルはそれを覗き込むと、呟いた。
「ヒポポタマス大陸に似てるんだナ」
「ホバギデの実の形に似てません?」
「「…」」
エディルは地図をしばらく眺める。
「私たちは…この菱形の大陸にいますわ。どうもこの世界は二つの大陸に二十四の島があるみたいですわ」
「この世界地図、海の果てとか書いてあるんだナ。海に果てなんてあるわけナいんだナ!」
「何を言っておりますの?世界はお盆型で、下で巨人が支えてますのよ?」
「( ゜д゜)」
「?」
ヘヘルガが不思議な顔している間に、エディルは地図を解読してゆく。
「私たちがいるのはこの大陸の……キャッ!」
「どうしたんだナ?」
「地図が変わりましたわ!?」
「ああ…たぶん拡大したんだナ」
エディルが自分たちがいるであろう大陸を触った途端、その部分が拡大して現れた。
菱形の大陸に、いくつもの国境線と地方線が現れる。
「ますます凄いですわ。これが魔法……黄金を作り出す魔法とかあるのかしら?」
「後にするんだナ。後に。一つの国は複数の地方の集まりか…この真ん中の円はナんだろう?」
「恐らく、都ですわ。それも大規模な。大陸の中心にあるんですもの」
しばらく地図を眺めてゆくと、、エディルの眉間に深いしわが出来る。
「まずいですわ…ここは戦線近くですわよ」
「ナ?戦線って?」
「ヘヘルガ、あなた私達がここに呼ばれた理由をわかって?―――覇王軍ですわ。覇王軍は北から攻めてきますのよ。私達がいる所はグリデット王国が納める地方パラディア、ここですわ」
「ナんで知ってるんだ?」
「食堂は食べるところでもあり、情報を得るところでもありますわ」
エディルが示した所は、かなり北の方。
「この上…ここから更に北の方は連合軍と覇王軍が激しい戦闘を繰り返してる戦闘地域ですわ」
「つまり、覇王って奴は北にいるのか?」
「そうですわ。まあ、これで今後の活動方針が決まりましたわね」
「…そうだナ」
「グズグズしてはいられませんわ、今すぐ南に逃げますわよ!」
「そうだナ!速いとこ覇王のいる、北の戦線にいくんだナ!」
北の寒風が、二人の間を通り抜ける。
ヘヘルガの奇術
・ヘヘルガの世界では、人は生まれながらに二つの属性を持つと考えられ、それらを混ぜ合わせて奇術とする。
・ヘヘルガの属性は『土』と『水』。土属性の物質を水のように扱える。
・出来る事は、土の中に沈む、潜る、泳ぐ。石壁を透過。鉄の硬さを水の硬さに出来る。
・水を土のように扱うなどの、逆の事は出来ない。
・事件の真相は、ヘヘルガが奇術の実験で村を地面の中に沈ませた。地下五キロの地点に村は埋まっている。