プロローグ
ジッ・イファレンド。
これはある世界の名前である。
この世界はいわゆるファンタジー…まあどこにでもありそうな、とにかくファンタジーな世界。
そんな世界に危機が迫っていた。魔王アービレインがジッ・イファレンドを支配せんとやってきたのだ。
濁流の如く人々を飲み込まんとする魔王軍。
ジッ・イファレンドにある国々はこれを迎え撃たんと戦争を開始したが、結果は敗北。
暗黒の時代が訪れようとしていた…。
そんな時、ジッ・イファレンドを作った十五人の神々は異世界『チキュウ』からある一人の人間を呼び寄せた。彼の名前は『タロウ・スズキ』。
十五の神々は自分達の持てる全ての力をタロウに注ぎ込んだ。俗に言うチート勇者の誕生である。
タロウはジッ・イファレンドに住む人々を救うため、破竹の快進撃を開始した。
次々に惨s…もとい正義の懲罰を受け消えてゆく魔族達。救われてゆくか弱き民衆達。
そして遂に訪れる、魔王軍と連合軍の大戦争。
火花を散らす両軍。戦いを熾烈を極めた。
タロウは頼れる仲間達を引き連れ、遂に魔王のいる本陣へと辿り着く。
城内いる魔族を蟻を蹴散らすが如く吹き飛ばすタロウ達。
そして始まる、魔王との一対一の決闘……
~世紀の対決~
「ククッ、よくぞ辿り着いた勇s「死ねえええ!」え、ちょ待[ザシュッ!]あぎゃあああああ!!」
~世紀の対決終了~
この一秒間の戦闘によって、かくしてジッ・イファレンドに平和の光が訪れた……かに思われた。
「魔王は死んだ…これからは俺の時代だ!」
「「「な、なんだってーーー!!」」」
ここでタロウが反旗を翻す。彼は神より受け継いだ強大な能力によって魔族を統括、さらに自身を慕う者達を連合軍から引き抜き、自身を『覇王(笑)』と名乗ってかつての味方に対して侵攻を開始する。
勇者タロウを象徴とした連合軍はこの攻撃の前に散り散りになり、撤退を余儀なくされる。
そしてタロウの侵攻は地上界だけにおさまらない。
「もうオタだった頃の俺じゃない!このまま俺による俺のための世界を作り上げる!!」
「貴様!我らに救われた恩を忘れたか人間!」
「なんてすばrゲホゲホ!そのようなゲスな欲望、断じて実現させてはならん!」
「やらないか?」以下十二人省略
十五の神々はこの羨まm穢れた欲望を止めんとすべく戦いを挑んだが…
「バカがッ!てめえらの力は全て俺の中にある!そぉい!」
「ぐはぁ!」
「ゲフゥ!」
「アッーーー!」以下十二人省略
十五の神々は全て敗れ去ってしまった。天界の奥深くへ逃げ込む十五神達。
かくして、ジッ・イファレンドはまた別なる暗黒に包まれんとしていた……。
~天界~
玉座に座っているのは一番目の神、ファースタ。
その前に跪いているのは部下の上級天使達。みんな顔に悲壮が宿っている。
「ファースタ様、なにか御指示を!覇王軍の勢いは留まる事を知りません!」
「うむむ…」
「このままでは地上の男は労働力に、女はハーレム要員にされてしまいます!」
「うぐぐ…」
「地上を占拠されたら次は天界に…!」
「ふぐぐ…」
「このままではいずれ私達も…そんなの耐えられません!」
「えっ、いやそれはないよ。だってお前、顔がブs」
「あ?テメーなんつったコラ神」
「すいませんでした!」
しかしそんな事言われてもどうしようもない。
なにせ自分達の力は全てタロウに渡してしまったのだ。打つ手がありません☆というのが現実だ。
ファースタの残り少ない髪がますます少なくなってゆく…そんな時。
「ふふっ…どうやらお困りのようですね。お父様」
「ハッ!お前は…娘のオープル!何故ここに!?学校は?学校はどうしたのねえ?」
オープル、一番目の神ファースタの一人娘だ。
金色の髪に白い陶磁器のような肌を持つ少女。その美しさはプラチナで出来たとも伝えられる少女だ。
「サボタージュしてきました。お父様が打つ手がなく困っていると聞いたので」
「いや、それがないわけでもないぞ?勇者からお前と天界の美女五十人出せば見逃してくれるって…」
「もしその条件を飲んだら、お父様の育毛剤に除草剤を混ぜますからね」
「わ、我が娘ながら恐ろしい…どう思う?母親に似たのかな?」ヒソヒソ…
「いえ、私はファースタ様の叔母に似たのかと」ヒソヒソ…
オープルはコホンと咳をすると、部下と無駄話をしているファースタは黙った。
こういう時に黙らないと娘は実の父にすら容赦ないのだ。
「そ、それで娘よ。何か考えたのか?言っとくがタロウをジッ・イファレンドごと消すとか駄目だぞ」
「ジッ・イファレンドごと消す?はっ、誰がそのような野蛮な行為…」
心底バカにしたような声を出すオープル。
「私が考えたのはもっと斬新な策です」
「斬新?それはどうゆう…」
「ふふっ…」
ざわめく天使達。
「オープル様がなにか考えられたそうだぞ!」
「さすが十五神の娘達の中で一番の知恵者!」
「ちょっと胸ないけど!」
「だがそこが良い!」
「上から三番目、あんたはクビよ」
「悔いはない!俺は生涯巨乳派を貫き通すんだ!」
オープルが空中に手を掲げると、黒板並に大きな羊皮紙と鷹の羽ペンが現れる。
羽ペンが軽やかに羊皮紙の上を踊りまくる。
「これが私の考えた作戦『ようこそ勇者様!ここはジッ・イファレンド!団体千名様ご案内の旅~ドキドキ!他人を蹴落とせバトルロワイヤル』です!」
みんな叫んだ。
「「「「「何言ってるかサッパリの上にネーミングセンス無っ!!」」」」」
「みんなクビッ!!!」
かくしてジッ・イファレンドの存亡をかけて、異世界史上最悪の作戦が幕を開ける。
なにやってんだろうおれ…