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19話 激甘のキャラメルアイス

 



 お互いに恋心を認識してからは早かった。


 トリスタン様に親族がほとんどいなかったことと、私は別に家族を呼ばなくてもいいことが上手いこと合致し、着々と結婚式の準備が整った。

 ドレスは地元の職人に頼み、なかなかに無理を言いつつ作ってもらったらしい。


 周囲の景色が雪のおかげて基本的に白いネージュ領では、ウェディングドレスは、淡い色付きのものが好まれている。だが、奇跡的に盛夏と言えそうな時期に結婚式を行えそうなことから、トリスタン様が白いウェディングにしないかと言ってきた。


 私は王都でずっと暮らしていたことから、白い色のほうがいいだろうし、何より私にそれを着てもらいたいのだとトリスタン様が真剣な顔で言った。

 私はそんなに気にしていなかったのだけれど、トリスタン様がそういうのなら白もありかなと思っている。何よりも、白いドレスの意味を教えた瞬間のトリスタン様の顔があまりにも可愛かったから。


「何をニヤニヤしているんだ?」

「白いドレスになった経緯を思い出していました」

「っ――――!」

「ふふっ」


 白いドレスは『私を貴方色に染めて』という意味があるらしいと伝えたとき、トリスタン様が顔を真っ赤に染めて、口元を手の甲で隠した。トリスタン様が照れたり隠したいことがある時の癖だ。

 そして、今もその仕草をしている。


「ところで、誓いのキスはしないんですの?」

「君がこのタイミングで言うからだろうが」

「ふふっ。申し訳ございません?」


 柔らかく重なる唇。

 そして幸せそうなトリスタン様の微笑み。

 私は本当に幸せ者だ。


 契約結婚で、仮面夫婦になる予定だったのに、しっかりと恋も愛も手に入れてしまっている。

 しかも元々の希望のアイスもお菓子も作り放題。


 私たちの結婚式に、親族や外部の招待客はいないけれど、ネージュ領で働く人々は皆参加してくれた。

 陛下は何が何でも参加したそうな手紙を寄越してきたが、却下した。あの人が動くと沢山の人々が道連れになってしまうから。

 参加できなかった代わりに寄越したのは、大量の果物や製菓に使えそうな材料たち。

 また作って王都に送れということだろう。




 結婚式や披露宴パーティーを終え、主寝室に向かった。お互いに初めて使うせいなのか、今から待ち受けることに対してなのか、妙に緊張している。

 緊張を和らげるためにと、ナタリーたちがワインや果物を用意してくれていた。


「一昨日作ったキャラメルアイスもありますよ」

「キャラメルアイスがいい」


 キャラメルとミルクで作ったアイスにキャラメルソースを混ぜ込んでマーブル模様にしていた。

 徐々に迫ってくる結婚式への緊張やら何やらを吹き飛ばすために作っていたのだが、心ここにあらず過ぎて、分量をちょっと間違えていた。


「ん。甘いな」

「やはり甘すぎましたか──んっ」

「いや、君の方が甘い」


 アイスを食べている途中でキスをされた。それはそれは妖艶な微笑みで。

 

「なっ……!?」

「火照った体に染み渡るな。冷たさも甘さも。そろそろいいか?」


 いいか? なんて聞いてきたくせに、私の持っていたアイスのカップを取り上げてサイドテーブルに置いてしまった。

 首の後ろに手を添えられて、さっきよりも深く絡むようなキス。ゆっくりとベッドに押し倒され、頬をそっと撫でられた。

 見上げたトリスタン様は、蕩けるような微笑みをこぼしていた。


「っ――――!」

「オレリア、愛してる」

「んっ、私もです」




 朝日が眩しい。

 そして、目の前で寝ているトリスタン様の顔も眩しい。

 この人は自分の美醜に疎いところがある。正直なところ、目に沁みるほどの美丈夫なのだ。そのくせ、しっかりと体を鍛えているので、腹筋がバキバキだった。

 

「……おやつ、控えようかしら?」


 ポロリと漏れ出た独り言だったが、トリスタン様に聞こえていたらしい。というか、起きていたらしい。目蓋を閉じたままで「却下する」と言われた。


「お……起きてたんですか!?」

「百面相するオレリアをこっそりと見ていた」


 いったいいつから狸寝入りしていたんだ。

 そして、なぜに却下なんだ……。

 ネージュ領に来てから、かなり運動量が減っている。それなのにアイスやお菓子をモリモリと食べてしまっているのだ。地味にドレスきつくなったなぁとか思っていたし。


「オレリアはどこもふわふわしてて気持ちいい。王都で見るような不健康そうに痩せたご令嬢みたいになるな」

「それは……喜んでいいのかしら?」


 今、しれっとぷにぷにしてるって言われたわよね?


「健康的にならいいかもしれないが。無理に食事制限をしたり、好きなものを我慢するオレリアは、なんか似合わない」

「っ……もう! それなら運動量を増やすわよっ」

「ん。私も手伝おう――――」


 トリスタン様がベッドの中で私の腰をそっと抱き寄せてきた。ニヤリと笑いながら。


「んなっ!?」


 まさかの下ネタ。トリスタン様はむっつりスケベだった!

 衝撃の真実にギャーギャーと騒いでいたら、ナタリーが慌てて主寝室に入ってきて、更にギャーッと叫んでしまった。

 トリスタン様は終始お腹を抱えて笑っていた。

 

 

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