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お化け屋敷のちょうちんお化け


 友人のKが小学生の時の話です。彼の言うことですから僕は話半分に聞いていました。皆さんもそうするべきだと思います。


 そのころKは小学五年生だったと言います。文化祭のようなものがあり、各クラスで出し物をするということになったそうです。


 Kのクラスでも話し合いがあり、最終的にお化け屋敷をすることに決まりました。そうしてクラスの皆でお化け屋敷を作り始めたわけですが、Kが言うには子どもが背伸びをして作った感じの可愛いものだったようです。


 つまり、怖くないんです。


 黒いビニールとダンボールで迷路のように壁を作ったり、カラフルなビニールテープをくぐるような場所を用意したり、彼らなりに真剣にお化け屋敷を作りました。


 クラスの子どもたちが幽霊を演じて、お客さんは手作り感のある短いセットを進んでいく。クラスの誰もはっきりとは言わなかったそうですが、どうも怖さよりほほえましさが勝ってしまう。Kたちが作ったのは、そういうお化け屋敷だったのです。


 ただ、そんなお化け屋敷の中で一つだけ、雰囲気が他と違うものが存在していました。それは古びたちょうちんでした。


 ちょうちんはKのクラスの女の子が持ってきたと言います。彼女の家にある由緒あるちょうちんで、少しでも雰囲気を作ろうと、親に頼んで借りてきたということでした。


 それは怖い雰囲気を持っていたわけではないそうで、というよりは、厳かとでも言いますか、重さを持っていたとKは表現していました。キログラム的な話ではなく、周囲の空気を重くする。そんな効果があったようなのです。


 ちょうちんは子どもたちが作ったお化け屋敷の中で、異質でした。それがある場所にだけ、重い空気が存在して、ほほえましさが感じられなかったそうなのです。


 一つ、Kがちょうちんに関する不思議な話をしてくれました。お化け屋敷に入った何人かのお客さんは、暗がりの、ちょうちんに明かりが灯っているのを見たらしいのです。お化け屋敷で火を使うのは危ないから、ちょうちんの明かりは点けていなかったはずなのに。


 Kはちょうちんが灯っているところは見てはいなくて、それをぜひ見てみたかったと、ぼやいていました。


 ところで、皆さんはツクモガミというものを知っているでしょうか。長いときを経て大事にされた物には魂が宿るとか、意思を持って動き出すとか。


 あのちょうちんもツクモガミだったのかもしれません。実は意思を持ったちょうちんのお化けで、Kの知らないところで勝手に明かりを灯していたのかもしれません。


 ちょうちんは、今も明かりを灯しているのかな?

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