第7話 地の獄への備え
明日はオリエンテーション合宿。
俺はしおりを見ながら準備を進める。
「中学の頃は母親が準備してくれてたんだけどなぁ……」
そうボヤきつつも着々と準備を進める。
「※この合宿は授業の一環です。勉強に関係のないものを持ちこむことがくれぐれもないように」
あ~やだやだ。家にまであいつの声が聞こえてくるみたいだ。
そう言いつつも俺は中屋敷からもらったラノベとまだ読み終わってない分を鞄に入れる。
こうして一通りの準備を終えた俺は「事前学習」を始めた。
「事前学習」とは、広部曰く「これから向かう目的地への理解を深めて合宿を最大限活用するための予備知識を身につけることと、スケジュール管理の重要性を学ぶための作業」らしい。わかりやすく言い換えると「ワークシートの書き込みと、自習時間のスケジュール決定」を行ってこいということ。家で。なんでだよ。
しかも、この「事前学習」は後々に繋がる大事な意識作りの一環だとか。なにか思わせぶりなことを広部は言っていたが俺は何もないことを祈りつつペンを走らせる。
といっても、殆どが穴埋め形式でネットで調べたら出てくる内容ばかりだ。そもそも俺たち向こうで観光とか一切しないんだから必要ないじゃん……。
穴埋めは四十五分程度で終わったため、俺はスケジュール作成に移る。
これも「初めての学習スケジュール作成は困ることも多いだろうから、合宿最終日に提出する課題の一覧を配っておく」としたり顔で語っていた。課題を効率的に進めるためのスケジュール管理のために無駄な課題を増やすのは本末転倒な気がしてならない。億劫な気持ちで適当に埋めていく。
結局、事前学習は一時間ちょっとかかってしまった。
今回の研修地は長野県。
写真で見る限りは一面の草原だったが、冬になればスキーの一大スポットとなる。勿論俺たちにスキーする時間などないが。
事前学習も一段落した俺はリビングに降りる。
そこではソファーを我が物顔で占有する妹がテレビを見ていた。
「お兄ちゃん目障りだから、自分の部屋戻ってよ」
何度も言うが、俺の妹は今反抗期真っただ中だ。
絡むのも面倒くさいので俺は部屋に戻ろうとする。
そうしたらそうしたらで、妹はムッとした顔でこちらを睨んでくる。
そういう感じで最近の妹はいろいろと気難しい。
部屋に戻って、映画でも見るか。
見たい映画が溜まっていたので、今日はラノベではなく映画でも見ることにする。
明日からは三泊四日の合宿だ。
体力を温存させるに越したことはない。