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神 健太郎

7話 神 健太郎


 県警の里見が来た翌日に、富津の警察署に向い犯人が残していったという衣服を見せてもらった。


 当日は里見は都合悪いと、署には来なかった。


「ちょっと記憶にはないですね。船には意外と女性スタッフが居ましたし」


 ウソを言った。あの服はあきらかに、ミライが撮影時に着ていた衣装だった。

 ミライが連続殺人事件の犯人なわけはない。

 あの服は、どうしてここに。

 考えれば考えるほど、なんだかミライには悪い方にいってしまう。

 それに犯人がまだ女性とは。


 富津署からの帰りに約束があった男のもとに向かった。


 浦安に住む神 健太郎という男。

 彼は今回の映画のシナリオを監督と共同で書いた男だ。


 彼のマンション近くのファミレスで会う事になってた。


「いやぁすみません。ほんとうなら、こちらからうかがうべきなんですが。わざわざ」


「いや、こちらこそ。お忙しいんでしょ」


 映画の制作会見の時は髪はオールバックでメガネもかけていた。スーツ姿だったし。

 目の前の彼は髪はボサボサで無精ヒゲ。いかにも修羅場の様子だ。

 こっちの都合で日時を決めて悪かったのではないかと。


「私、あなたの体験談に興味ありまして。まあ知らない人でもなかったので。あっ、すみません、この度は、ご災難でしたね」


「いや、そちらもせっかくの映画が」


「そうですね。監督、主演の二人がスタッフごと行方不明ですから。そんな状況で申し訳ないですが、あの事故の様子聞かせてもらえませんか」


 僕は警察に話したことと何一つ変えずにしゃべった。

 コレは会見もしてくれと言われているのだが体調がすぐれないと断わっている。


「なるほど、おもしろい、あっ失礼。おもしろがる事じゃないんですが。私、この手の事が好きでして。そのデカい触手の持ち主の姿は」

「見たのは触手だけで」

「コレ、ご存知ですか」


 神は用意していたのだろう。大きな封筒から紙を出した。ソレは大きなイカらしき生物が帆船を襲っている絵だ。


「ソレは昔から語らてる海の怪物クラーケンです」

「こんなのが昔の海に?」

「まあ船が沈んだりすると、怪物のせいにして、こんなヤツが出たと。さすがにこんな大きなイカはいませんよね。ダイオウイカだってホウズキイカだってここまで船を沈めるようなのは……」


「まあ確かに」



 あの触手の大きさから考えたらこのくらいあったかもしれない。


「このコラーゲン」

「クラーケンです」

「クラーケンが船を沈めたとしたら人を食うのですか?」

「今回の乗員の行方不明……。どうなんですかね。あまり憶測で言えませんよ。とくにあなたの前では……。人を喰うイカなんて」


「話は大分かわりますが、僕も聞きたいことが。監督が言っていたんですが、今回の脚本には原作はないということでしたが。実は基になったお話があると」


「ええ、ありますす。私は本当はその原作本を映画にしたくて、はじめそっち用のシナリオを」


「ちゃんと原作本が」


「が、出演がおたくのミライさんでしたから、監督も監督でやりたい事もあり『多重人格殺人』というとこだけいただいちゃたんです」


「彼女もおもしろい脚本だと思いまして、監督に言いまして。で、ミライは役作りのために、いろんな多重人格関係の本を読んでました」


「けっこう努力していたと、監督から聞いていましたよ。まさかこんなことになるなんて、監督も、うかば……」


 で、言葉をとめた神。まあ先はわかるが、誰ひとり遺体など見つかっていないので、誰が、死んだなどとはうかつに言えない。


「あ、原作本、興味があったら、もう絶版になってるんですけどね。お貸ししましょうか」


 神はスマホで検索して見せてくれた。


「ペルソナ 心にひそむ悪魔」 鬼島紀州作


「この作者の鬼島さんは元刑事で引退後に自分の担当した事件をもとに書いた小説です。駆け出しの頃一度お会いして映画化のはなしをしました。で、今回それを久しぶりに伝えようとしたら、住所や電話番号変わってまして。行くへ知れずで。今はいくつかな、はじめにあった時は八十才くらいだったかな。ご健在かな?」


 映画のミライは多重人格殺人鬼の設定だ。

 気になったのはそこだった。


               つづく

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