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奇書と再会の奇女

6話 奇書と再会の奇女 


 なんだか、眠れなかったので『水棲棲動物』と『水神クタアト』を調べてみた。 

 いくつか同じような本が、あったがこの、水神クタアトもどちらも小説の中で創作された本のようだ。

 どちらもアメリカのホラー作家ラブクラフトが関連している書籍だ。架空の本なのだ。

 あるわけがない、そんな本の考察をあの真面目なジイちゃんが書いたって。なんなのかしら。


 ジイちゃんやとうさんに影響されたか、あたしも魚貝類が好きで魚をいっぱい飼っていて水槽の数も増えた、亀やイモリなどの水棲生物も興味ありありだ。

 だから、この海棲動物っていう本にもちょっとそそられる。


 翌朝、出勤前のとうさんに電話した。


「おはよー。とうさん」

〘どうした、朝早くから?〙

「実はさジイちゃんの本で探してもらいたいのが」

〘なに?〙

「海洋奇譚ってタイトルの本」

〘海洋奇譚……いつの本だ〙

「よくわからないけど、かなり古い本だよ」

〘うーん俺が子供の頃あたりかな、書庫探して、みるわ〙

「ありがとう。それじゃ」

〘おっと、まて、かあさんだ〙

〘アミ、元気、去年は帰らなかったから、どうしてるかと〙

「ごめん、忙しさも落着いてきたから、今度暇見て帰る」


 さすが、とうさん。夕方にLINEで、本が、あったから宅配便で送ったと。


 翌日、夜に届いた。見てみたら、新品同様、帯までついてる。


 海洋学者白里泰三初のノンフィクション小説!  海で集めた不思議の数々を小説化。


 短編集だ。

 付録の袋とじは開けられてない。完璧だ。


 一週間後、あたしはあの李 麗蘭とマンションの一階にあるカフェで待ちあわせした。

 しかし一時間待っても来ない。


 注文したソフトクリームの乗ったパンケーキを食べ終わって来なければ帰ろうと、思った。

 上のソフトクリームを食べ終えた頃、ボサボサ髪で赤い縁のメガネの女性が入ってきた、その女が、あたしの前に座り。

 呼び鈴を押した。ウェイターが来ると、あたしのパンケーキを見て。


「同じの」


「ごめんね、さっきまで呑んでて」


 言われてみれば酒臭い。深夜のマンション前の赤いスーツの女とは別人のようだ。

 黒のワンピにグレイのカーディガン姿。ルージュだけやけに赤い。一応化粧はしている。


 あたしは持ってきた本をDバッグからだした。


「おっ、スゴい新品同様だね。帯までついてる」


「一応読んでみたんだけど海洋怪談ですね。あっ、ホラ袋とじ開けちゃいました。祖父の下手な絵がそえられてて、これ、水棲動物というよりは怪物図鑑みたいです。水神クタアトの方はゲームの魔法書みたいな、クタアトを参考に海棲動物が書かれたようなものだと……」

「そこに出ている海の生き物はちゃんといるのよ。見つからないように潜んでいるだけか封印されているのよ」


 本の付録を近くのコンビニでコピーをし、今度はジイちゃんに会いたいと李は嬉しそうに帰っていった。


 しかし、李はサイエンス・ライターなのに怪物は存在してるとか封印とか、なんか違う感じがした。


                つづく

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