佐原ミライとアクエリアス
2話 佐原ミライとアクエリアス
映画の撮影は遅れていた。
監督の希望もあり、撮影は実際の船の上でおこなわれた。
佐原ミライは僕が初めてついたタレントだ。
彼女が事務所のアイドルユニット、アクエリアスに入ってからはアクエリアスの担当もすることになった。
去年年末の国民的歌番組に出たあたりから人気が落ちてきた。
アクエリアスは今はバラバラの仕事が多くなっていた。
かねてから女優志望だったミライは去年のテレビドラマ出演をきっかけに、ドラマの仕事が増え、ドラマのプロデューサーにも認められた。
今回ドラマ演出家の霧山恭介が映画監督デビューすることになり、プロデューサー、監督推薦でミライの出演映画デビューとなった。
「君だ、君が彼を殺したんだな」
「何を言うのあなたは私が犯人だと」
相手役の新島勝也もこれが映画デビューの若手俳優NO1の期待の新人だ。このフレッシュコンビも映画の売りななっている。
彼とミライはテレビドラマでも一度共演している。
リハーサルを何度かして、本番に入ろうとした時に。
「監督、船長が戻ると言っているんですけど」
「なに、どういうこと?」
「海がヤバいと」
「こんなにいい天気じやない」
「すぐに戻らないと海が荒れると」
「そうか、でもね撮影がおしてんの。あと少しだから船長を説得してこい!」
いつもおだやかな監督も遅れに遅れてる撮影スケジュールにイラついていた。
「本番、いきまーす、ヨーイハイ!」
「おっ、なんだ!?」
船が突然揺れだした。ナニが。
「なんだアレは!」
船の両はじになんだか白い物が、そいつが船を揺らしている。
「ワァア」
映画クルー数人が海に落ちた。
「キャア!」
ミライ! ミライが落ちた。
僕はミライを追って海に飛び込んだ。
と、ここまで憶えている。
気がついたら病院のベッドの上にいた。
翌日の朝、事務所の社長と同僚の新川が病室に。
「ホントに良かった、おまえだけでも嬉しいよ高原」
「僕だけ? ミライは、ミライはどうなったんです?」
「落ち着け高原。ミライはまだ見つかってないんだ」
「見つかってないって、あれからどのくらいたってるんです?」
「おまえが、見つかったのは翌日の朝、そして気がついたの昨日の夜だ。今日で三日目だ」
「三日も。アミは……」
「不思議な事に高原以外誰も見つかってないんだ」
二人が帰ったあとに新聞やテレビのニュースやワイドショーで確かめた。
僕以外に誰も見つかってないんだ。ミライも。
それどころか船の残骸と一緒に巨大なイカの足が数本発見された。
船を沈めたのはその足の持ち主ではと推測されている。
ある週刊誌ではそいつに船の乗員が捕食されたのではなどと。
東京湾で巨大なイカ? 人を食う? そんなことありえるのか。
夜になり。
「たかはらさ〜ん」
とココロが僕に抱きついた。
佐倉ココロはアクエリアス最年少だが、もう高校を卒業する、学生だった彼女たちもここまでくるのに時間がかかった。
「高原さん心配したよ」
涙を流してくれる。アミ、九十九アミは大学には進学しなかった、丁度その頃がアクエリアスの絶頂期だったため進学をあきらめた。
佐原ミライも同じ歳だ。
ミライは進学より演技がしたかった。今回の女優活動には凄く力を入れていたことを思うと……ミライ。
「高原さんだけでも助かって良かった。でもミライが……」
リーダーの邑崎ケイは最年長のしっかり者だ。今は大学四年。
アクエリアス・プリンセスのメンバーが皆来てくれた。
「ミライちゃんどうなっちゃたんだろ。もう三日間も見つからないなんて。やっぱりイカに、イタっ」
「変なこと言うんじゃないココロ、イカは人を食わない!」
「昨日アミちゃんだって……イカの化け物に襲われたって」
「イカが化け物ならっ……」
「高原さんは事故現場からだいぶ離れた富津市の海岸に。ミライだって何処かに……わたしはそんな予感がする」
「ホラ、ケイさんだってああ言ってる」
そこへノックもなしに。
「お前ら早いな」
昨日来た同僚の新川だ。
「悪いな新川、僕の代わりに」
「いいってことよ。オレの夢がかなったんだ。アイドルの担当。売れないお笑い芸人よりう~んと楽しい」
新川らしい。
「ニュースとか見た?」
「ああ、今日も一人も、ワイドショーは若手俳優二人の問題にも、触れてるな。映画会社とブロダクションがもめてるらしいな」
「まあそっちもな。ホラ高原が見つかる前の日に殺人事件があったの知ってる?」
「ニュースで見た」
「アレ第二、三の事件が起きたんだ。凶器から同じ指紋が出たんだと、連続殺人事件だ。それが、高原が見つかった富津から木更津、千葉で同じ犯人の殺人事件だってよ、なんだかなぁ~」
「行方不明のミライより連続殺人事件か。おまえらしいな」
「なに、その言い方オレだっミライは心配だよ」
そこへ、いかつい二人の男が。
「すいません千葉県警の者です」
と手帳を見せた。
つづく