転生したとして
※あらすじ参照
明朝。清々しい青空が広がる、とある夏の日。それまでの記憶を失った主人公は、目を覚ました。周りを見回す。小屋。主人公がいるのは簡素な小屋である。窓からは木々が見えた。耳をすませば葉の擦れる音が聞こえる。どうやら森の中にいるらしい。しかし、主人公にはここがどこか分からない。場所はおろか、自分が何者かすら理解できないのだ。
そこで、誰かが小屋に入ってきた。中肉中背、人の好さそうな男である。男は主人公が目を覚ましたのを見て、慌てて駆けてきた。男は主人公のことを知っているようだ。主人公は男に問う。自分が何者なのかを。すると男は、悲しさを瞳にたたえ、問いに答えた。
主人公は男の仕事仲間であるらしかった。仕事中に事故に巻き込まれ、その事故が原因で記憶を失ったらしい。仕事はなんとかなるので、今は休息してほしい旨を、主人公は告げられた。
それからしばらく、平穏な日常が続いていた。毎日男はどこかに出かけ、帰ってきては主人公との話に興じ、うまい飯を作り、笑顔を咲かす。時には来客もあった。女性が二人と、巨躯な男が一人。その誰もが笑顔であった。しかし幸か不幸か、主人公は人の感情を読みとることに長けていた。その笑みが、作られたものであることに、裏に悲しみがあることに気づいてしまったのだ。主人公は平穏の中に、違和感を感じるようになる。
近くの街に行って、世界の情勢を知った。世界は今、悪魔によって危機にさらされていた。悪魔たちに立ち向かうべく、勇者一行と呼ばれる五人を筆頭に人間たちが軍をなし、戦っているらしかった。
ある晩、男が傷だらけで帰ってきた。男は大丈夫だというが、そんなはずはない。到頭違和感は誤魔化しきれぬものとなる。主人公は男を問い詰める。ついに男は音を上げ、真実を語った。
男と、小屋に来た三人は勇者であった。そして、主人公もまた勇者だったのだ。主人公はかつて、記憶を代償に大技を使い、悪魔の大群を焼き払った。その後昏睡状態になった主人公を、男が匿っていたのだ。
その事実を知り、主人公は自らも戦闘に参加すると言う。だが、男はそれを許さない。では俺が戦う様子を見ろと言い、主人公を連れ立って戦場へ向かった。そこで主人公は、更なる真実を知る。
悪魔と呼ばれているのは、人間だった。見た目は確かに特異ではあるが、人間だったのである。
生まれつき色白で、瞳が赤く、耳の尖った民族。彼らはその見た目を理由に長い間迫害され続けてきた。しかしある時、アテルイという指導者を得る。アテルイの手によって戦闘民族と化した彼らは、無差別攻撃を繰り広げるようになった。彼らは自らを、狂った世界を破壊する悪魔だと称した。これが、悪魔の誕生の秘話であった。
悪魔の正体が人間であることを知り、主人公は苦悩する。殺人は、主人公にとって苦痛の決断であった。だがそれでも、仲間のいる世界を守るため、主人公は戦いに身を投じる覚悟を決める。