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魔王城へ潜入1



何が、どうして、こんなことになったのだろうか………………?

むしろ、どうしたら、こんなことになれるのだろうか…………?


私は今、メイド服で、魔王様の目の前に立っていた。



「お前は……?」

「ハイ、新人メイドです」



◇◇◇



バイトを始めて3ヶ月。

もう買い出しはお手のもの、ミオたんの危険な任務の同行にも慣れて、何とも思わなくなった。


今日は初任務である。早朝4時からとかやめてほしい。


「鳥ちゃんにはメイドとして魔王城に潜入調査してきて欲しい」

「………………ほ、補佐っち? 今なんて……?」

「だから魔王城に潜入――――」

「む、無理だよおおおお!!! 絶対に無理!! 殺されちゃうよおお」


「今回の世界では、その世界での10日=地球での1日。

だからその世界で7日以内くらい、地球で夜になる前くらいに帰ってきてね? 

もし、もう少し時間がかかりそうだったら、家に連絡入れておくからね?」


「き、聞こえてるかなああ……???」


「大丈夫大丈夫、鳥ちゃんには才能あるから。

何て言ったって、鳥ちゃんはスパイ担当なのだからね?」

「な、何ソレ!? 始めて聞いたんだけど!?」

「大丈夫大丈夫」

「でもバレたら殺されるよおお」

「バレないから大丈夫大丈夫。殺されそうになったら、さすがに助けるから」

「そ、そうなん?」

「そりゃそうでしょ。

ま、最悪、7日間、魔王城の中を見て回るだけでもいいからさ」

「な、なんだあ」

イヤ、それでもヤダよ……!!?

「とりあえず、鳥ちゃんがどんなもんなのか見たいだけだからさ」

「そうなん?」

「鳥ちゃんがアタフタしているの見たいだけだからさッ」

「へあ!?」

「冗談だよー」



フゥ…………。

私はごく普通の女子大学生、普通の人間である。

そんな私が魔王城に潜入する。

どう切り抜けられるか……。どうやり遂げるか……。

それはこの、非現実的な、ファンタスティックな魔道具を使うことに違いない。

こんなん、もはやチート。

これがあればイケる気がする!


まず身につける魔道具は……。

(形:機能)

・首飾り:翻訳機

・ピアス:変身ができる。今回は魔族に。

・ピアス:半径50メートルの会話に聞き耳を立てることができる。録音もされる。

・角:直近にいる者の思考が読める。

・ピン留め:自分がしている会話を録音できる。

・メガネ:相手の強さを図ることができる。分析機能、動画記録機能などがある。


あと魔道具がたくさん入っているマジックバッグの巾着の中を整理しておこう。


まず報告用の魔道具

・パソコン:これで報告書を作成するように言われた。

記録機能がある様々な魔道具と同期させることができる。

・カメラ:物体を詳細に鑑定、記録できる。


必要そうな魔道具

・アンテナのついた小さな液晶板:近くに生命体がいないか確認できる。

・クラゲ:鍵穴にくっつけると解錠してくれる

・杖:魔術による封印術を打ち消すことができる


緊急時に必要そうな魔道具

・ナイフ:魔族を拘束、気絶させることができる

・亀:結界をはって攻撃を防ぐことができる

・札:透明人間になれる

・小さな液晶板とタコのような形の大きな吸盤が、短い接続線で繋がっている形:吸盤にくっつけた者の記憶を消すことができる



私は仕方がないのでメイド服を着て、変身できるピアスを付けて魔族に変身する。


私の皮膚は黒くなって、爪が伸びて鋭くなった。

耳が尖り、唇が赤紫色になって、鋭く尖った八重歯が見える。

髪と瞳は黄色になり、目は白目の部分が黒くなっていた。


それと、直近にいる者の思考を読めるという小さな角2つを頭にあてると、自然な形でくっついていった。


自分のメガネを外し、おなじみの万能便利メガネを付ける。


「おおおお!!」


私は少しテンションが上がった。

魔族コスプレである。いや、完全なる魔族なのである。

写真撮っちゃお!

「イエエエイ」

私はスマホを取り出すと、ピースして写真を撮った。


あとは、翻訳機の首飾りを見えないように服の下にしまって付ける。

録音機能のあるピン留めで前髪を軽く留める。


半径50メートルの会話に聞き耳を立てることができるピアスを付けた。

しかし、半径50メートルって、場所によっては結構色々聞こえて、人と一緒にいる時は混乱して会話ができなくなる。

このピアスにはスイッチがあるので、スイッチでオフにしておく。

スイッチはメイド服のポケットの中にしまっておこう。

そして必要な時にだけオンにするのだ。



――巾着もしっかり持ってっと…………。


私はオフィスを出て、廊下のたくさん並ぶドアの中から1つのドアに入って行った。


――――――

――――

――


「――失礼します」

「はい、今日からよろしくね、えっと、コトリ」

「ハイ」


さっそく迎えてくれたのは、美人な魔族さんである。

同じメイド服を着ている。

人型なので、あまり人間と変わらないように感じられた。

ただ皮膚の色は黒く、角が生えていていたが。

魔道具のメガネによると上級魔族である。


(普通の子ね。特に問題なさそうね)


直近にいる者の思考が読める角によって、上級魔族さんの声が頭に流れ込んくる。


その上級魔族の隣には、下級魔族がいる。

同じくメイド服を着ている。

ん……?

私は、視界にあるメガネの注釈に首を傾げた。


美人な魔族さんが言う。

「私はこの魔王城のメイド長、リース。

この子はピリカ。ピリカに仕事を教えてもらいなさい」

ピリカさんが言う。

「コトリ、よろしくね」

「ハイ、よろしくお願いします」


(コトリ、友だちになれたらいいな)

そんなピリカさんの思考に思わず和んだ。



それから、私はこのピリカさんに掃除や洗濯など、メイドの仕事を教えてもらった。


「ピリカさん、魔王様ってどんなお方なんですか?」

一応聞いておく。

「うーん、私にはよく分からないけど、頭が良いって皆言ってる。

何か、色々な政策とか考えて、私たち魔族のことを考えてくれているって」


(魔王様や上級魔族様が考える難しいことなんて、私たちメイドにはきっと分からない)


「そっかあ」

「私、遠目で魔王様のこと見たことがあるんだよ。

とっても素敵だった。強そうだった」


(格好良かった。かなりの美形! イケメン!!!)


「す、すごいねえ。私も見てみたいなあ」

絶対に見てみたくないのである。



そして夕食。

メイドたちが集まって食事をする。

皆人型である。

城内を歩いていると、人型ではない色々な魔族がいたが、メイドは基本的に人型であるらしい。


何だかグロい食事をする。

うわああ、こんなの食べれるわけが…………、あ、意外に美味しい。

「美味しいですね?」

私がピリカさんにそう言うと、ピリカさんは大袈裟に頷く。

「うんうん!! メイドの食事と思えないでしょう。

他にもね、一人一人の部屋はあるし、ベッドあるし、お風呂もあるよ?」

「へえ」

「魔王城に入るのは皆の憧れ」

「ウン、そうだよねえ」

なるほど……。

魔王城だもんね。魔族にとっては憧れの職場なのか。

「ていうか、ピリカでいいよ。あとため口で。私も今年入ったばかりだし」

「ウン、分かった、ピリカ」

(仲良くなれて嬉しい)


――――

――


私は食事を終えて、風呂に入ると、与えられた部屋で巾着の中から報告用のノートパソコンを取り出した。

そしてパソコンの側面から、糸ほどに細い接続線を引っ張り出して、メガネの横のほんの小さなくぼみと繋げて同期させる。


パソコンには、今日一日メガネで見た映像が入り、また歩き回ったところの地図が作られた。


会話を録音できるピン留め(名付けて、以下、録音ピン留め)

とも同期しておく。


半径50メートルの会話に聞き耳を立てることができるピアス

(以下、聞き耳ピアス)

は今回使うことができなかった。

ウン、忘れてた……。


あとは、今日やったこと、分かったことを記入しておこう。



フウ…………。


…………………………。


全ッ然、怪しまれなかったよねえ………………。

ウン、普通に溶け込めたよねえ。

自分でもびっくりするくらいだねえ。



◇◇◇



2日目。


どうすればいいのか分からない。

溶け込めたのはいいけど、その後、どうしろと!?


メイドの仕事とは、食事運び、お茶入れ、掃除、洗濯などである。


とりあえず、怪しまれないようにメイドの仕事を全うしよう。

うむ、そうしよう。

だって怖いんだもの。バレたらと思うと怖いんだもの。

死にそうになったら助けてくれる、とは言っていたけど、それでも怖いから!!


私は朝、早速魔族たちの元に食事を運んで行った。


食事を持って行くということは、それなりに立場のある魔族に違いない。


「失礼致します」

そう言った後に返事があり、恐る恐る部屋に入っていった。


そこにいたのは、スーツを着た人型のどこか疲れた様子の中級魔族である。

再び「失礼します」と断ってから、テーブルに食事を置く。


その魔族さんは食事を始める。

私は後ろの方で控えるのみである。

ギリギリ、魔族さんの思考を読める距離だ。


私とその魔族さん以外には誰もいない。

少し、緊張する……。


「君は楽しい?」

ふと、魔族さんが言った。

「へ?」

私はとても驚いてあわあわした。

「た、楽しいです」

そう答えると、その魔族さんはどこか寂しそうに、フッと笑った。

「僕は疲れた」

返事をしない訳にもいかないので、私は言う。

「そう、なのですか」

「…………」

魔族さんは沈黙するが、どこか意味ありげに再びフッと笑う、チラチラ私の方を見る。


「…………」

チラッ

(僕は疲れたのだよ、うん、とっても疲れた…………)


「………………」

チラッ、チラッ

(どうして疲れたのか聞いてくれてもいいのだけれど、教えてあげるのだけれど)



「…………何故、疲れていらっしゃるのですか?」

やはり、そう聞かないわけにもいかないので、私は言う。


そして魔族は話し出した。


「私がこの魔王城に来てからもう120年でしょうか……。

そして今の魔王様になってから10年。

私は今の魔王様になってから、忙しいどころではなくなりました。

それまではずっと、のんびりできていたのに……」


「な、なるほど」

プロローグ……?


「私は正直弱い。その代わり、わりかし賢い。

今の魔王様になる前までは、力こそ全て。

ですから私のような者はひっそりと日陰で過ごしていたのです。

そして私はそれで良かった。それが良かった。


それが、今の魔王様は、あんなにお強いのに、歴代魔王様の中でもダントツの強さを誇っているのに、何故か、今までの力こそ全て、という価値観、政治をお止めになりました。

そして革新的な考え方。

弱い魔族を助けようとする、弱くとも賢い者には、力の強い者と同等の優遇を。理由なく暴力をふるう者には制裁を……。人間を滅ぼそうとするのではなく共存していこうとする。

とっても変わっていますよねえ。おかしいですよねえ?」


「え、ええっと……、そうですねえ」

私は言葉を濁す。

私たち人間からすると、とても真っ当に聞こえるのだけど!


「私は今の魔王様になってから、ろくに眠れていません。

書類仕事ばかりで、それに最近は人間の言葉、文字なんかも勉強させられて……。もう、意味が分からない」


魔族さんは私に縋るような目を向ける。

なんだか、少し可哀想な気がしてきた。

なので私は慈愛を込めて言ってあげるのだ。


「それは大変ですねえ。

頑張っていらっしゃるのですねえ」


その言葉を聞いた魔族さんはなんだか泣き出しそうである。

「わ、分かってくれる?」

(そう、僕は頑張っているんだよ、そうなんだよ……! うぅ……)

「ハイ」


思考を読んでいるからこそ、口先だけでないことも分かった。

それに、私たち人間からすると真っ当なことでも、魔族たち、この魔族さんからするとおかしなことをするのは、精神的にも辛いのだろうな……。


しかし、ピリカも言っていたけど、今の魔王様は歴代の魔王様に比べてかなり賢いようである。

それに、賢い者を優遇している。


そして私は思う。

今がチャンスであると。

きっと2日目にして、とんでもないチャンスである。

いろいろと知っているようである魔族との接触。

それもいろいろ知っていながら、それほど地位が高くなく、バレる危険性が少ない絶好な魔族。

それにこの話の流れ……。

危険性は少ないとはいえ、あまり突っ込んだことは聞かない方がいいとは思うが、何かしら聞いた方がいいだろう。


…………だが! 思い付かない!!


それでも何かは言わないといけないと思って、私はとりあえず聞く。

「それにしても、人間ってどいういう生き物なのですか?」

「ん? 興味ある? 君は人間と聞いてあまり敵対心ないのだね」

「ハ、ハイ」

「これも、魔族が人間への敵対心をなくそうと頑張った成果……か」

魔族はしみじみ、といった風に言う。

(うん、なんだか、嬉しいよ……)


「何でこんなことしなければならないのか、と思っていたけれど、、実際それが実ったとなると、やはり嬉しいものなのだね。そうだね、教えてあげるよ」


それから、人間とはいかに弱い生き物であるかを教えてもらった。

ウン……、魔族っていかに強い生き物であるかが分かったよ!!


その後、その魔族さん、ノードさんの食事を運び終えると、再びメイドの仕事に戻った。



午前中は掃除である。

掃除の担当の場所はなるべく丹念に調べるようにしよう。


こんな引き出しなんかも見て……。

ウン、何もないよねえ…………。


「ゴミ捨て誰行く?」

午前中の終わり、メイドの一人がそう言った。

私は聞く。

「ゴミ捨て?」

「うん、焼却炉に捨てに行くんだよ」


その時である。

メイド長のリースさんがそこに通りかかると、ちょうど良いとばかりに駆け寄って来た。


「リース様」

「メイド長」


リースさんは、『メイド長』か『様付け』で呼ばれているのか。

メイド長って、結構地位が高いんだな。

上級魔族だしな。メガネで見ると、さっき話をした中級魔族のノードさんよりリース様の方が格段に強いし。


「ゴミ捨て? だったら、コレも捨ててって」

そう言って、ゴミを集めた車輪付きの大きな箱の中にゴミを入れた。


「私行きますよ」

私はそう名乗り出る。


「あら、貴方は昨日入って来たコトリね。

まだ2日目だけれど、みんなと仲良くなれたみたいね」

「ハイ」

「でも、焼却炉の場所、まだ分からないでしょ」

「それじゃあ、私も一緒に行きます」

ピリカが名乗り出てくれた。


そしてリース様は、そうだ、と思い付いたように言う。

「コレ、魔王城の案内図、作ってみたの。あげるわ」

(魔王様のお役に立ちたくて…………。ウフフッ)

「新人の貴方には役立つでしょう?」

そうしてリース様はその地図を私に渡す。

私は固まる。

「いいんですか……?」


ほ、ほ、ほ、本当に! いいんですかあああ!!!??


「いいわよ?」

「ありがとうございます! 助かります」


あざっす! マジであざっす!!


ここは1つおだてておこう。

「こんなものを作れるなんてリース様はすごいです!」

「そんなことないわよ?」

(フフッ、そうでしょう? 

私は美しさと賢さを兼ね備えた女なのよねえ)

「でも、リース様より頭の良い魔族を私は知りません」


「そうねえ」

(まあ、確かに私はかなり賢いほうよ。でも)


「魔王様の周りにいる魔族たちは皆賢いわ。

私以上に賢い魔族はたくさんいるのよ?」


(フンッ、邪魔なのだけどね。魔王様には私だけで充分なのよ。

特にあの堅物宰相、いっつも魔王様と一緒にいるんだから。

でも、一番賢く、それに強さもあるのもまた事実。

口出しもあまりできない。

それとあの陰険執事も、いっつも嫌味言ってくるんだから。まあ、お互い、執事とメイドの長として、普段はそれなりに仲良くやってるつもりだけど……。

あと、研究好きの根暗女、アイツは――――)


おおおおっと、腹黒だったああ!

てか、賢いだけあって、悪口だとしても瞬時にこんなに思い付くのすごいな……。


「そ、そうなのですかあ。すごいです。

では、そんな魔族様たちを周りに付けさせる魔王様はとてもすごいのですね」

私がそう言った瞬間である。


「そう!!! そうよ! 素晴らしいお方よ!!

あの方は――――」

(あの方はねえ――――)

おお、魔王様に関しては本当に心から慕っているようだ。

というか、盲信しているようだ……。


「って、ああ、ごめんなさい、時間が……。

もうお昼になってしまったわ。

私が言っておくから、コトリとピリカはお昼の時間を延ばしていいわ。

ああそうね! お昼、一緒に食べましょうか!

コトリは昨日来たばかりだからいろいろ教えてあげるわ。

魔王様について教えてあげるわ!」

「本当ですか? ありがとうございます」



それからピリカと焼却炉にゴミを捨てに行った。

「リース様は魔王様のことをとても好きなんだねえ」

私がそう言うと、ピリカも頷く。

「うん、きっとお昼の時間、話長いよ。覚悟しておいた方がいい」

「大丈夫だよ。私結構、話聞くの好きなんだ」

「そうなんだあ」


(そうなんだ、誰にも言えなかったけど、アレ、聞いてもらいたいな。

コトリだったらどうするんだろう……。私、どうすればいいんだろう……)


アレって何いい……??

なんか、気になるんですけど……。


「だから、ピリカも何でも言ってね?」

「あ、うん、ありがとう」


(……うぅ、言えない。ううん、どうにしろ、こんな歩きながら、廊下なんかじゃ話せないこと。誰かに聞かれたら危ない。……そっか、コレ話したらコトリ危険な目にあったりしない、かな。私がまだ大丈夫だから大丈夫かな。やっぱり私の心内に秘めておいた方が……)


な、何なんんッ!!?


「ピリカはここに来て始めてできた友だちだから、何でも話して欲しいんだ」

「何でも?」

「ウン、何でも」

「ありがとね、コトリ」

(コトリと友だちになれてよかった。あとで話してみようかな)

「本当に何でも?」

「ウン、何でも!」

「そっかあ」

「ウンウン」



お昼、リース様とピリカと一緒に食べた。

リース様はメイドの仕事や魔王様について教えてくれた。

まあ、ほとんど魔王様についてである。


「魔王様はね、弱い魔族を助けてくださった、とっても優しいお方よ!

さらに弱くても賢ければ優遇してくださる。弱い魔族に希望を持たせてくれた。

このメイドという地位を上げてくださったのも魔王様よ!」

「それは、メイドの私たちからすると、とてもありがたいことですねえ。

他にどんな魔族たちを助けてくれたのですか?」

「そうねえ、まず困窮している村を――――」


リース様の話を私は聞く。


「――魔王様は人間と共存していこうとするお考えを持っているわ」

「どうして人間と共存していこうとしているのですか?」

「それは……。これについては難しいわ。

あの方の崇高な考え方全てを理解するのは難しいの。

でも1つだけ、人間たちと戦うと、少なからず私たち魔族も死んでしまうから、争うのはよくないのよ。これについては納得したわ」


(人間との共存……。正直、これについてはほとんど理解できない。

人間はずっと敵だった。人間だって私たち魔族を敵視している。


……ああ、どうして私は魔王様のことを理解してあげられないの!? 悔しい!!

あの堅物宰相は理解しているみたいだったわ。何なの!? 


……人間と共存するなんて考えられないと言って、魔王様に反対している奴らもいる。

ああ、私も心の中ではそう思っている。でも、そいつらと同じにはなりたくない!

そうよ、私は弱い魔族を守ろうとすることについては理解できる。

そいつらはそれさえ理解できていないのだわ。私はそいつらとは違う!


いつか私も理解してみせるわ! 人間が悪いだけではないって……)


リース様……、なんて健気な魔族なのだろう……。

私は心の中を聞いてとても感激した……。


あと、魔王様の反対勢力があるようである。

それはとても重要なことなのでしょうねえ。


「――魔王様は本当に素晴らしい方なんですねえ」

「そう、そうよ!」

(そうなのよ!!)


話が終わったのは、夕食になる頃だった。


「コトリ、よく最後まで話聞けたね」

「ウン、話聞くの好きなんだ」

「すごい」


(私、ほとんど聞いてなかった……)

そ、そうですか……。

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