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紅い月  作者: ソムク
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冬季雪野①

 窓の外を見ると、一面の銀世界が広がっていた。

 初めて見る美しい光景。陽光を反射し、世界がキラキラ輝いている。

 舞い散る白く儚げな結晶が雪なのだと、初めて知った。

 とある冬の日に見た美しく心弾むあの景色。

 それが自分の名前と一緒だと知った時、とても誇らしい気分だった。


☽☽☽


 どうやら夢を見ていたようだ。

 アラームの音で目を覚まし、寝ぼけ眼をこすりながら、猫のように伸びをする。

 もう少しで夏になろうかというのに、冬季(ふゆき) 雪野(ゆきの)はモコモコの暖かそうなパジャマを着込み、体をぶるりと震わせる。

 あの日、あの月が紅くなった日から、雪野は暑さとは無縁になった。

 詳しい原因は不明だが、雪野は常に真冬の寒さに嘖まれている。

「……寒い」

 1人呟く声が無人の部屋にこだまする。

 少し寂しい思いになりながら、雪野はいそいそと着替え始める。

 着替え終わり時計を確認した時に、調度呼び鈴が鳴り雪野は玄関に向かう。

「おはよう。起きてるか」

 雪野が扉を開けるより早く、雷太が部屋の中に入ってくる。

「……おはよう。もう着替えも済んだ」

「おう。早いな。じゃあ朝飯にするか」

 そう言って雷太はコンビニで買ってきた菓子パンの袋を雪野に渡す。

「……ありがとう」

 雪野は受け取ったパンの包装を開けると、はむっとパンに齧りつく。 

 雪野が食べているのは、白い皮の中にカスタードクリームが入っている見た目も可愛らしいパンだ。

 雷太は自分のカレーパンを食べながら、雪野の様子を眺める。

「そんなんで腹一杯になるのか?」

「……十分。雷太が食べ過ぎ」

「いや、お前が小食なんだよ」 

「うん?」

 雪野は何を言っているのか分からないとでもいいたげに、首を傾げる。

「うん、まあお前は昔からそうだからな」

 隣で美味しそうに、パンを頬張る雪野を見ながら、雷太は呟く。

「そういえば、お前チーム活動は上手くやっていけそうか?」

 雷太の質問に、小首を傾げる雪野。

「チームっつっても2人程幽霊部員だけどな」

「……月導って人は、ちょっと怖い」

 不安そうに呟く雪野。

「そうか。まああいつは仕様がないさ」

 何回か顔を合わせただけだが、いつ見ても司は、他人なんてどうでもいいと顔に書いてあるのだ。

 今の雪野では、コミュニケーションをとる事さえ難しいだろう。 

「……月夜は、大丈夫、だと思う」

「そうか」

 雪野の言葉を聞き、安堵したように呟く雷太。

「まあ心配すんな。何かあっても俺がお前を守る。約束しただろ」

「……うん。約束、した」

 とても大事な言葉がこぼれ落ちないように、心の中で反芻する雪野。

 そのまま2人朝食を食べ終わり、雷太が腰を上げる。

「よし、じゃあ行くか」

「……うん」

 雪野も雷太に続いて立ち上がり、そのまま2人で学院に向かっていった。

こんにちは、ソムクです。

こんな文章を読んでくれた事に、最大の感謝を。

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