能力の発現
恋莉です。
ちなみにこの小説はデスマを読んで感化されて書きました。
若干似ていても気の所為ということで。
そう、デスマが面白いのが悪いのです!!!!!
能力の発現
目覚めると、そこはベッドの上だった。
嗅ぎなれた薬品の匂いに、ここは病院だと気付かされる。
(あれ、俺なんで病院なんかにいるんだ...?)
疑問とともに、これまでのことを思い出そうとする。
耳を劈くような爆音、灼けるような熱さ、鼻につく焦げ臭い匂い。そこまでで意識が途切れている。
(あんな中にいて気づいたらベッドの上だ。特に痛むところもないし、俺は...死んだのか?)
頬をつねろうと手を動かそうとするが、思うように動かない。
体を起こそうとするも、重くて首を動かすのが限界だ。
(異能総合病院...能力都市にある病院か?)
辛うじて目に入った、服の裾に書いてある文字を読む。
そして...
「わかんない...いいや、寝よ」
二度寝した。
再び意識が戻る。
目を開けるのが億劫でそのままぼぅっとしていると、
「結城さーん」
と、お姉さん(と思わしき人)が入ってくる。
「起きてますかー?」
うるさいので仕方なく目を開けると、目の前で手をひらひらと振る看護婦さん。
もう一度目を閉じる。
「ちょっ!?今見たよね!?確実に目が合ったよね!?」
なんて騒がしい。こんなので看護婦なんて出来るのだろうか。
「起きてるなら起きてくださいよ!!」
いや、起きてるって。
「あー、もういいや」
諦めたらしい。と、
「!?」
前言撤回、強引にベットから引き剥がされた。体が痛い。
「起きてますよねー?」
勘弁してくれ。
「...はい」
「動けますか?」
いや、分かるだろ。見るからに痛そうだろ俺。
「いえ」
短く答えると、彼女が手を俺に向けてかざす。
「治癒」
と彼女が唱えると
(!?)
体が軽くなる。
実際に能力を目にするのは初めてで、驚いて目を見張る
。
「すごいでしょー!これでも私、指折りの治癒使いだからね!」
何を勘違いしたのか、彼女が自慢げに言う。自分は能力自体に驚いただけなのだが、訂正するのも面倒臭くて、とりあえず頷く。
「そう!それでとりあえず学長さんに会いに行こう」
学長というのは、能力学校の、だろうか。
早くも敬語体を忘れた看護婦さんが(大野さんというらしい)に連れられて部屋を出る。
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さて、今俺の前には二十歳くらいのお姉さんがいる。
なんだろう、期待外れだ。
「初めまして、異能学園総学園長の長澤望です」
彼女が挨拶をする。やはりこの人が学長だったのか。
「あ、えぇっと、結城御都です」
とりあえず名乗る。
「うん。知ってた」
出鼻をくじかれたような気がする。
それにしても、なんとなく大野さんに乗せられてここまで来たものの、何がなんだかさっぱりわからない。
「ここがどこかとか、何が起きてるかって言うのを説明すると」
(お、遂に分かるのか?)
「ここは能力都市、能力者っぽいから連れてきた」
「適当かよ!!!!」
多分相手は偉い人だとは思うが思わずツッコミを入れる。
(もう一度言わせてくれ、適当か!!)
「は、冗談だけど、いや事実だけど」
(はぁ...)
察した、この短時間で察した。こいつ頭おかしい。
「いや、あの事件ってさ、一般都市にうちの部下が行ってたのが原因なんだけどさ、それでショッピングしてた彼女が、大きな氷を見たっていうから、無傷だった君を連れてきてみたんだけど、いやぁ三日も寝続けられると待ちくたびれるねぇ」
どうしよう、ツッコミどころしかなくて逆にツッコミが出来ない。呆然としていると、声をかけられる。
「で、氷出してみてよ」
「は?」
は?突然過ぎる。てか出せって何、出せって。
「あ、そうか無理か」
そう言って望は本を差し出す
(いや遅せぇよ)
『能力制御初級』とあるその本に目を通す。
(魔力...魔導脈...ふむ...こうか?)
...と
(ん?)
寒気を感じ、脳まで情報伝達がなされる前に体が勝手にのけぞる。
ヒュッっという風切り音のあと、目の前の壁に突き刺さる氷の矢。おー、と思う俺、本に書いてあったことを実践しながら読んでいたから避けられたっぽい。身体強化って凄いんだな。そのまま読み続けるが、ふと動きが止まる。
(あれ?俺、今殺されかけなかったか?)
硬直状態&無表情で望を見ると、彼女は恐ろしいものを見るような目でこちらを見ていた。
「...か、一樹の矢を初見で、しかも見ずに避けるなんて...」
いや、一樹誰だよ。そして思う。こいつやっぱりやばい奴だ。
そして抗議の目線を送る。
若干たじろいているものの、
『てへっ☆』みたいな顔で誤魔化そうとしてくる。
やめなさい。幼い。
「いや、ほらね?治せるし?」
なおも見続けると、言い訳してきた。あと、やめようね治るから理論。痛いものは痛いよ?うん、多分。若干怪しいけど。
「おい」
この二文字にすべての感情を込める。
「すいません」
お、謝った。
とりあえずさ、あれだよね?ほんと。実力測るとかで殺しかけたら駄目だよね。
「ま、まあ、落ち着いて...」
大野さんが慌てて言う
「そ、それもそうね」
お前が言うか。反省しろ。海よりも深く!!!!!
「じ、じゃあ、読んだ?」
誤魔化し続けるようだ。まぁ、諦めよう。
一応一通りは読んだけど...
「それじゃあ、氷出せるかな?」
ただ出すだけでは面白くないだろうから少し細工を加える。
「ねぇ、まだ?」
イメージがしにくかったので、少し時間がかかったが、約1分後には出来上がる。
「は?」
出来上がった像を見て、望が口をぽかんとあけ、あまり賢くはなさそうななさそうな顔になっている。
なんとなく面白いので、ドヤ顔をキメる。
「...氷細工なんて、初級本には書いてないわよね?」
ジト目で見つめられる。
「まあ、感覚?的な?」
だってあれじゃん?言うて想像するだけじゃん?
「あのねぇ?氷細工なんて、Aランクの人でもこんなに上手くできないわよ?」
あ、そうなんだ。てかランクって何。話の流れ的になんかすごいのは分かったが、まあいい。だって出来たんだもん。
「あ、そっかランクわかんないか」
俺の視線に気付いた望が説明する。
要は...
・この社会にはランクという概念があり、EからA、S、SS、SSS、それから、物語にしか存在しないが、USというのもあるらしい。
・SS以上は殆どいないが、その人達は、能力団体「月光」という、能力社会の実質トップに半強制的に入るらしい。
・ランクは、能力学園(初、中、高等の全属性)の年一の大会、誰でも出場できる大会(年一)で決められるらしい。
・望はSSSだそう。
「ま、要するに練習無しでここまで出来る貴方は規格外よ」
規格外か、そうか。
─────そんなこんなで、勉強と運動は出来るけど友達はいない残念系非常識イケメンの能力社会ライフがはじまる。
「いや、友達は関係ないだろここで!!!!!」