表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Welt Wiler  作者: 空界 数多
4/12

ブランククスの攻防 file.2

今回も私の拙い文章を読んで下さった皆様、心からありがとう御座います。

そして、誠に申し訳御座いません。

サブタイトルに攻防と書いておきながら、本当に戦いが始まるのは次からです。

酷いタイトル詐欺を見た、などと思われても仕方がありません。

これで御容赦願えるかどうかは判りませんが、私の少し面白い話しでどうか許していただき所存です。

長くなるので後書きに書きます。 

気になる方、面白かったら許しても良いという方は読んでみてください

2049・9・24 04時14分


 まだ東の空は暗く、夜明けにはまだ大分早い。 数メートル先も見えない暗闇を、焚火の灯りがポツリポツリと辺りを小さく照らしている。

連邦軍の部隊は既に配置を完了してニコライ達は指揮所に最終確認に向っていた。

「うゥ~、寒いです……」

アリスは頬を紅くして、自身の手に白い息を吐き掛ける。

彼女は、焚火の傍で作戦時刻まで時間を潰していた。

焚火の上には、凛と珈琲を飲む為の湯を入れた薬缶が吊るされていた。

本来なら、凛と一緒に居たかったのだが、隊長に再度呼び出され、今は一人で凛の帰りを待っている。

「はぁ、遅いな~、凛さん……」

アリスは、溜息を吐きながらも慣れた手付きでライフルに弾丸を込めている。

彼女が使っているのは【M24 SWS】、合衆国のレミントン・アームズ社が製作した狙撃銃。

口径は7,62mm、銃身長24インチ(610mm)、全長1,092mm、装弾数5発のボルトアクション方式の狙撃銃だ。

合衆国だけでなく、世界中の警察なども採用している優秀な銃である。

近年、自衛隊も使用しており、A2やA3など、バリエーションも幾つか存在している。

アリスが今装弾しているのは、7,62×51NATO弾。

彼女は背中のバッグの他に、腰にもポーチを下げており、その中にもマガジンを入れて持ち歩いている。

アリスが四つ目のマガジンに弾を込めていると、凛が鼻先を赤くしながら此方に駆け寄ってきた。

「すみません、待たせてしまいましたね」

凛を見つけその表情をパァっと明るくすると、アリスは凛へと声を掛けた。

「凛さん! お帰りなさい、隊長からの呼び出しは何だったんですか?」

「悪いね、任務の話だったけど他言無用って隊長に釘を刺されちゃいましたから」

凛も、アリスに答えながら焚火の傍に座ると、アリスがニコニコしながら、凛の隣に移動して来る。 そして凛の隣に座ると、アリスは凛の手をそっと握る。

それまで寒がっていたアリスは、自分の手に伝わる温度をジッと感じ取る。

「凛さんの手、冷たいですね」

「そりゃまあ、外は寒いですからね」


少し間を置いて、アリスは意を決したように凛の手を自分の胸へと抱きかかえる。

凛の手にアリスの体温が流れていく。

「……、暖かいですか?」

「ええ、ありがとう。 とても暖かいです」

凛がクスリと笑ってそう答えると、アリスは幸せそうに笑って話し始めた。

「私の故郷の北部は、もう外で深呼吸を出来ないらしいです。 気道が凍るんです。 だからこの作戦が九月の内で良かったですよ、十月に入ると連邦は一気に冷え込みますから」

そう言って笑うと、アリスは焚火の傍に置いていた魔法瓶を手に取る。

「はいどうぞ、インスタントですけど」

アリスは魔法瓶に入っている珈琲をカップに移すと、凛に手渡す。

「ありがとうございます、暖まりますね」

凛が、寒さで頬を赤くしてアリスへの礼を口にすると、アリスも別な理由で頬を赤くして答える。

「な、なんだったら私が直接暖めても良いんですよ」

「いや、それは遠慮しておきます」

そう言って凛は湯気の立ち昇るカップを口へと運ぶ。

アリスの事を受け流すと、凛の視界に忙しなく走り回る兵士達の姿が映り込む。

「やっぱり、皆さん少し緊張していますね。 国が直接ぶつかり合う戦闘は長い間ありませんでしたからね。 皆さん、緊張しているのですかね?」

「そうですか? 私は早く撃ちたくてしょうがないですけど。 でも、残念な事に凛さんと私は別行動なんですよね…………」

そう言ってアリスは頬を膨らませて珈琲を口に運ぶ。

「任務ですから、仕方ないですよ」

凛は苦笑いを浮かべながら自身の懐に手を伸ばし、小さなケースを取り出す。

「凛さん、それなんです?」

「薬ですよ。 と言ってもただの栄養剤ですけど」

「何処か調子でも悪いんですか?」

心配そうに聞いてくるアリスに大丈夫だと言うと、すこし猫の様な笑顔で、凛は薬を飲み込む。

少し不快そうに錠剤を飲み込む凛をみて、アリスは小さく笑う。

凛も苦笑いしながら珈琲を飲んでいると、班長のニコライがイヴァン中尉と一緒に此方に向って来るのが判った。

「待たせたな、そろそろ移動の時間だ」

「「はッ、了解しました」」

班長が声を掛けると、二人は急いで立ち上がり隊長達に向って敬礼をする。

二人の敬礼にニコライとイヴァンも敬礼を返すと、自分達の待機場所まで移動を始めた。


9・24 05時29分


 ルーシア連邦軍は戦車部隊の集結が完了し、十六両の戦車が横一列に待機していた。

未だ夜は明けず、早朝にはまだ早い。 敵に移動を気付かれる前に市街地の近くまで接近する為、出発は暗い時間が相応しい。

戦車やテントの灯りに照らされる薄暗がり、その車列の中央から、不気味な少女の呻き声が――

「アリス少尉――」

呻き声の正体は、戦闘が始まるのを待ちきれず鼻息を荒くしたアリス少尉だった。

ライフルを抱え、その眼をギラギラと輝かせた彼女の姿は、正しく獲物の目の前で相手をどうやって仕留めるかを考え、楽しんでいる獣そのものだ。

「おい、アリス少尉! すこし静かにしてくれ、周りが滅茶苦茶観てくるんだが⁉」

顔を引き攣らせながらイヴァン中尉がアリス少尉を(なだ)めていると、作戦開始の時計合わせを始めるのが聴こえた。

「時計あわせ! 5、4、3、2、1 作戦開始!」

ニコライの言場を聴いたコリンコは、戦車のハッチから体を乗り出し他の車両に前進命令を出す。

「各車、前進開始! 目標は中央、ブランククス市内!」

コリンコの声が届くと、一列に並んでいた戦車達が暗闇を引き裂くエンジン音を響かせ前進を開始する。 カタカタと音を立て、戦車の無限軌道(むげんきどう)が道路を突き進む。

除雪されてはいるものの、未だ雪の残る道路は彼方此方に凍りの膜を作っている。

戦車隊の護衛に就いた歩兵は、氷に脚を取られないよう戦車の進んだ後に続いて歩く。

進軍を開始してから暫くして、ニコライが凛の背後に歩み寄り、小さな声で話し掛ける。

「少尉、仕事の話だ。 任務は例の輩が現れてからが本番だ。 中尉は戦車部隊、特に隊長のコリンコ大尉が乗る戦車の傍を離れるな」

「了解しました。 標的が現れなかった場合、私はそのまま戦車の護衛を継続すればよろしいのですね?」

「ああ、その場合は此方で手を打つ。 中尉、何があろうと周囲に悟られるな。 万が一、任務が露見した場合、軍部は目撃者を処分する。 細心の注意を払って行動しろ」

それは、必要以上の犠牲を出すなという事なのだろうか?

凛と最後の任務確認をしたニコライは、小さく頷くと凛から離れ、自分の配置へと戻って行った。

ニコライが去ったのを見計らって、今度はアリスが凛の傍に駆け寄ってくる。

「私達は暫く別行動になりますけど、間違っても敵の弾に当たったりしないで下さいね」

アリスが心配そうに言って来るので、私は小さく微笑むとアリスに心配しないよう声をかけた。

「心配しなくても、私の任務はそこまで危険ではありませんから。 まあ、戦場に危険じゃ無い所なんて在りませんけど」

それに、凛は任務を少尉に観られるのは嫌だと思った。。

理由はよく判らないが、とにかく嫌なのだ。 まあ、味方を殺す様など誰にだって見られたくは無いと思うが。

今度は、凛の方がアリスの事を心配して話し始める。

「あなたの方こそ心配ですよ。 戦闘に夢中になり過ぎて被弾でもして死体袋での再開なんて嫌ですよ、私は」

「大丈夫ですよ。 私、殺意とか気配に敏感ですから」

アリスは、凛に自身の事を心配されたのが嬉しかったのか、少しだけ照れたように言った。

「気を付けて下さい、あなたに怪我をされると、私は少し寂しいですから(友人的な意味で)。」

そこまで言って、凛は自分が誤解をうむ様な発言をした事に気が付いた。

『ん? まてよ……、今の言い方ではまるで私が中尉に対してLIKEとは違う方の好意を抱いているように聞こえないか? LAVEの方だと勘違いされかねないのではないか?』

そう思いアリスの方を観ると、以外にも彼女は下を向いて押し黙ったままだ。

衝撃だ。 そしえ同時に困惑もしている。

彼女の事だから、てっきり鼻息荒く抱き付いて来たりするものだと思ったのだか。

「どうかしましたか?」

別に抱き付かれるのを期待していた訳では無いが、それでも何時もの反応が無いのは肩透かしと食らった気分だ。

少しばかり心配に思い声を掛けると、アリスはバッとこちらを向いて顔を耳まで赤くし、少し上ずった声になりながら答えた。

「わ、わたし……、絶対に無事に帰還します! 凛さんに寂しい思いはさせられません‼」

大きな声でそう言うと、アリスは自分の配置へと赤く高揚した顔を隠して走って行ってしまった。

『失敗した、完全に勘違いさせてしまった。 一体どうやって誤解を解こうか……。 それにしても、さっきのアリス中尉。 ちょっと可愛かったかも――』

凛がアリスの走り去った方を観ていると、周囲の兵達の間から、少しばかり気になる話し声が聞こえてきた。

『なあ、やっぱりあの二人って出来てるのか? あんなに顔赤くして寂しい思いはさせないってよ』

『確かに、あの二人を見掛けると何時も二人でいるしな』

『つまり寂しい思いはさせないってのは、そういう事だ』

時に、他人の印象とは当事者よりも本人を理解している事がある。

時に、人は自身の本当の感情を正しく理解していない事がある。

時に、無自覚の言動は自覚の在る物よりも力を持つ、無自覚とは、自身の(しん)にある(しん)の心を表すのだから……。

『なんという事でしょう、兵士達の間では私達がそういう関係だと思われて居たのか。 一体何処の誰だ、そんな根も葉も無い噂を広めるのは。 というか最後の奴は何だ』

そして、此処にも無自覚に愛情を振りまく輩が一人。

凛が一人、頭を抱えながら戦車の脇を歩いていると、戦車のハッチを開けて若い男が声を掛けて来た。

「少尉殿! 少し離れないとキャタピラに引っかかりますよ!」

どうやら、考え事をしていたせいで戦車に近付き過ぎていた私に、注意を呼びかけてくれたらしい。

「すみません、ご忠告感謝します。 あなた、名前は?」

「は! 自分は第318戦車中隊所属、ローレン・コリウス一等軍曹であります! 五番車両の操縦手をさせて頂いております。 この度は出過ぎたまね、申し訳ありません」

戦車の音に負けないよう、大声で話しかけてくれているコリウスの所属を聞いて、凛は自分の任務の事を考えた。

『五番車両……、良かった、対象車両ではないようですね』

凛が、安堵に小さく肩を下ろすと、再びコリウスに話し掛ける。

「軍曹の車両の配置は東側でしたね、市街地での戦闘は厳しいでしょうが、幸運を祈ります」

凛の言場に、コリウスはあからさまに表情を明るくし、感謝の言場を反してくれた。

「ありがとう御座います! 歩兵の支援から外れない様、気を付けさせて頂きます! 少尉殿も御気を付けて! ご武運を!」

「ええ、もし互いに生き残る事が出来たら、何か送ります。 では」

凛がコリウスへと敬礼をすると、コリウスもまた、緊張で指先まで力の入った敬礼を返した。

「御心使い、感謝致します! 今一度、ご武運を!」

コリウスは戦車の上から凛へと敬礼すると、一足先に市街地へと向かって行った。

コリウスを乗せた戦車は、凛とは逆の方向へと進み、その影はどんどん小さくなって行った。

遠ざかる戦車を見つめ、凛は先程自分に声を掛けてくれた青年の事を思い出す。

あの曇りない笑顔で話し掛けてくれた兵士は、この戦いで生き残る事が出来るだろうか。

私は、この戦場で生き残る事が出来るだろうか。

考えると少し怖くなる。 仲の良い友人や顔見知りの死んだ姿を考えると怖くなる。

あの人当たりの良さそうな青年との再会を喜び、握手を交わす事が出来るだろうか。 

私は、あの青年への送り物を選ぶ事が出来るだろうか。

自分の死を考えると、私は臆病な気持ちになる。 

どれだけ生きたいと願っても、誰かが死ぬのが戦場だ。 昨日仲良くなった友人が次の日には死体袋の中、なんて事もよくある話。

困った事に、生きたいと強く思いすぎると、寧ろ危ないらしい。

世の中には、ジンクスだとか死亡フラグとか言う物騒なものがある。

別に彼女一人がそうな訳では無いが、凛はこれから沢山の人を殺す事になる。

戦争だから、敵を殺すのは仕方の無い事かもしれない。

判ってはいる、割り切っていたつもりだった。 だけど、凛は判らなかった。

自分は、コリウスと名乗った兵士には死んで欲しくはないと思った。

それはアリス少尉や、それに班長やイヴァン中尉に対しても。 

出会って、そして関ってしまったから? 人の命は皆平等なんじゃなかったのか?

それは、正しくないと思った。 それは違う事だと思った。 

だけど、間違いとは思えなかった。

殺される相手にそんな事は関係ない。

利己的で自分勝手だが、それは生物として当然の事じゃないのか?

例え話になるけれど、自分の一番大切な人と見ず知らずの赤の他人。 どちらか一方の命しか助けられない時、はたしてどちらを選ぶのか。

その選択が正しいのかは判らない。 だけれど、それでも私達は選ばなければならない。

不選択というふざけた選択は無い。 どちらか一方を選ぶなんて自分への甘え? 選ばないよりはマシだ、数倍マシだ。

人間(ヒト)は選ばねばならない。 何を救い、何を切り捨てるかを。

自然だの、時の流れなんかに任せるな。 命の取捨選択を自発的に行うのが人間、知的生命体という物だ。

そして、私には確信があった。 私は、迷いながらもきっと人を殺せる。 躊躇い無く、躊躇無く、迷いを抱えて。

それは人間の所業ではない。 が、人間(ひと)を殺すのは人間(ひと)でなければならない。

故に、凛は選ぶ。 選ばねばならない。

殺すか、殺さないか。

人間(ひと)で在るか、怪物となるか。

悲痛に顔を歪ませ、胸を痛めようとも、彼女は選ぶ。

如何してか? 決まっている。 

護りたいと思うものがあるから、それだけだ。


実は、月には所有者が居るのです。 そして、過去に太陽の所有権を主張した女性がいまして、その人は言いました。

「人類は太陽の光で多くの利益を得ながら生活しているのだから、太陽光の使用量は私に払うべきだ」

それを聴いたある人が言いました。

「では、地球で起きている温暖化問題の責任も貴方が取ってくださるのですね?」

これを聴いた女性は、太陽の所有権を訴えるのを止めましたとさ。

…………如何でしたか?

楽しんで頂けましたか?

それでは、次の投稿でも楽しんで頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ