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夏の日

作者: 東雲 葵

 ある晴れた日の昼下がり。その日はとても天気が良く、うだるような暑さだった。その暑さと言ったら地面からの照り返しの熱でゆらゆらと景色が揺れるほど。そんな中を外出する人は当然少なく、道を歩いていてもほとんど人とすれ違うこともないほどであった。


 その、暑い暑い中を歩く一人の青年が居た。彼は肩から重そうなカバンを下げ、次から次へと額に流れてくる汗を拭いながら重そうな足取りで歩みを進めている。どうやら彼は学生で、レポートの資料探しを兼ね涼を求めて図書館に向かっている様子だった。


 家からはどれくらい歩いただろうか。普段ならなんてことはない道のりも、今日だけはひどく遠く感じられた。暑さでボーッとしてしまう中、彼はゆらゆらと揺れる景色の向こうから、何かが近づいくるのに気がついた。


 白い――。


 彼は、近づいてくるものが何であるかを認識する前に、その色に目を奪われていた。暑さで揺らぐ景色の中に現れた真っ白なモノ。視線を、意識をその白い何かに向けながら、彼は歩みを進めてゆく。そして、ほんの数メートル先にそれが近づいたところで、やっとその正体がわかった。


 それは猫だった。頭の先から尾の先まで見事なほどに真っ白な毛並みの、猫。まるで、何かの物語から抜け出してきたのではないかと思うくらい、その猫は美しかった。彼は思わず立ち止まって、猫が来るのを眺めてしまっていた。いや、違う。すれ違う瞬間までまるで時間が止まったかのように、動けなかったのだ。


 やがて、その猫は彼の横に並び、そのまま駆け抜けて行った。猫とすれ違ったのはほんの数分のこと。もしかしたら、一分も経っていないのかもしれない。幻を見ていたのではないかと錯覚してしまうような、そんな一瞬だった。


 猫とすれ違って、ほんの数秒。彼はハッと我にかえり、さっきの一瞬が幻でなかった事を確認しようと振り返った。振り返った先に猫の姿はなかった。あったのは、女性の後ろ姿。白い日傘に白いワンピース、まるで――


「猫が化けた、ってか…?馬鹿馬鹿しい…」


 独り言を呟いて、彼は再び進行方向へと向き直った。ありえないと思いつつも、そんな事を考えてしまう。まるで目を開けたまま白昼夢を見た気分だ、と一人頭を掻いて歩き出す。



ゆらゆらと景色の揺らめく、暑い暑い夏の日。

その、ほんの一頁。



スマホから書いてみました。

スマホからだと、段落が上手くつけられなくて苦労しました。

結局PCで手直ししての投稿です。


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