命の響き
『すみません。あと、カップチーノ頂けますか?』
「カプチーノですね。かしこまりました。」
...cappuccino
イタリア語
陶器のコーヒーカップにエスプレッソとクリーム状に泡立てたミルクののったイタリアでポピュラーな飲み物。
茶髪で可愛らしくアレンジされたヘアスタイルの女性のウエイターが持ってきてくれたのは、ラテアートがされたカップチーノだった。
たぶん、これは熊。
可愛くいえばベアー。
私は可愛さは求めていない。
...虚しくなった。
遠慮なく砂糖をミルクの上にふり、スプーンですくって食べた。
ベアーの顔はぐちゃぐちゃになり、下から美味しそうなエスプレッソの薫りがする。
...いったいいつからこんな目線で物や風景、そして人を見るようになっていたんだろう。
もう、この世なんて無くなってしまえばいいのに。
店内はにぎわっていた。
女性客が多く、皆でキャッキャとはしゃいでいる。
でも、皆、自分の事にしかほんとは興味無いんでしょ?
目の前の友達のはなしなんて殆ど聞いていないくせに。
話している本人は親身になってくれてると思ってる。
その人、あなたの話なんて聞いてないよ。
目の前で彼氏とラインしてるじゃない。
なのにあなたはなんでそんなに一生懸命に伝えようとしているの?バカじゃない?
そう言ってやりたかった。
別のテーブルの観光客カップル。
お互い何も話すわけではないが、手を握って店内を見渡している。それだけで幸せなのだろう。
急に、この国がダサく思えた。
人が賑わう、このカフェから
私の観る景色を残しておこう。
いつ見えなくなるかも分からないのだから。
竹本このみ。大学3年。
趣味はテニスと演劇鑑賞。
...だからなんなの?
私なんていなくたって、誰も悲しまない。
そんな友達も家族も知り合いも誰もいない。
目の前に続く道は真っ暗。
そう。私は今、生きることに疑問を感じている。