わかったよ、今からがんばるお。
どこか遠くに行ってしまいたいと、
そんな都合のいい遠くなんてどこにも無くて。
こんなのおかしいと思った世界は、
僕をおいて相変わらずそのまま動いてる。
そんなはずは無いと、
何度見直しても現実に変わりはなくて。
あるべきはずの世界は、
望んでもいない形に変わっていく。
僕のいる世界はこんなはずじゃないのに、
こんな世界なら僕がいる意味なんかない。
いろんなことが怖くなって、
僕は部屋から出られなくなった。
こんなことがいつまでも続くわけがないこともわかっているけど、
見ないふりをして誤魔化すしかない。
悪い夢だったと、そうならないかと願って眠りについても、
眼が覚めても何も変わっていない。
僕の願いをかなえてくれるはずのロボットも、魔女も、宇宙人も誰もここには来ない。
僕を特別にしてくれるはずの、魔法も、隠された能力も、秘められた過去も何にも無い。
どうやら僕は普通の人で、もしかしたら、ひょっとしたら、普通どころかダメな人間なんじゃないかなって思い始めてる。
こんなはずじゃなかったのに、時間だけは容赦なく過ぎて行く。
また一つ歳を取り、学生って呼ばれるような歳はとっくに過ぎてしまった。
父さんも母さんもずっと優しく接してくれているけれど、
二人の髪に白髪が増えて、少しずつ老いていっているのも気がついている。
僕はこんな歳になっても、今だに小さな子どものように両親にしがみつき、
ぶら下がって生きているロクデナシだ。
どうしたらいいんだ?
どうすればいいんだ?
このままじゃダメだってわかっているけど、
じゃあどうすればいいんだよ?
僕はダメな人間なんだ。
勘違いして、浮き足立って、あらぬ方向に進んでしまって、
今さらどうしていいのかさえわからないダメな人間なんだ。
今からやり直す?
何をやり直せばいいんだよ。
もう取り返しのつかない時間を僕は無駄に、ホントに単純に無駄に使ってしまったんだ。
そうさ、その時には全く気がついていなかったんだよ。
今さらどうすればいいのさ?
自分で考えろ?
そりゃ、そうだな。
…言われなくっても、ホントはわかってたよ。
だけどさ、出したくない答えなんだよ。
なるべく考えないようにしているけど、
なんとなくはわかっているんだよ。
今のぬるま湯から出なきゃいけないんだろ。
自分一人で生きていけるようにならなきゃいけないんだろ。
わかってるんだよ。
…ただ、踏ん切りがつけられないだけなんだよ。
だって、別に今すぐじゃなくってもいいじゃないか。
ちょっと延ばしにしてここまで来ちまったってやつなんだよ。
だから、僕がダメな人間だって言ってるんだよ。
…わかったよ、明日から何か変えてみるよ。
何、明日からじゃダメだって?
そうやって先延ばしにしてきたからこうなったんだろうって?
お前も結構言うね。いいよ、わかったよ。
じゃあ、今からな。
今から俺は変わるよ、とりあえず、お前と話して安心するのを止めるわ。
長い間ありがとな。
なんだよ、悲しそうな顔すんじゃねぇよ。
お前も歳食ったな、笑って見送ってくれよ。
僕は鏡に映った自分の顔に、無理やりに微笑んでみせた。




