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きく地蔵、きかぬ地蔵 その3
そんな中、
いつもゆったりと幸せに過ごしている老人の周りには、
無邪気な子供たちがいつも集まるようになりました。
おかげで、村のそこだけは、笑顔がたくさんあふれていました。
実のところ、村の大人たちの異変には、
子供たちも気がついていました。
そして小さな胸を痛めていました。
ある時子供たちは、
自分たちの思いを、老人に打ち明けました。
「おっとうと、おっかあが、いつも、ケンカしてるんだ」
「おじじさま、昔みたいに、みんな仲良くならないかなぁ?」
子供たちからのそんな願いを受けて、
「きかぬ地蔵」のところで、
初めてのお願いごとを老人はしました。
「お地蔵さま。
みんなが仲良くくらせる村に、またなりませんかのぉ」
二体のお地蔵さまを授けた仏さまは、
この村の様子をずっとみていました。
老人の願いごとに仏さまは、天から答えました。
「『きかぬ地蔵』は実は、
『きく地蔵』をきかなくするために授けたもの。
そのようにお願いするが良い。
まだ、ここの村人たちには、授けるのが早すぎたようじゃな」