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きく地蔵、きかぬ地蔵 その2
ところが、困ったことも起こりはじめました。
お願いするだけで、
簡単に願い事がかなうようになってから、
もともと働き者だった村人たちが、
だんだんなまけ者になっていったのでした。
みんなが『きく地蔵』通いをする中、
『きかぬ地蔵』のところに通う老人がありました。
誰も拝まないお地蔵さまに、
いつもお供え物をし、周りをきれいにし、
いつも、自分の決意と、願い事がかなった報告と、
感謝の気持ちを伝えていました。
村人たちは、そんな老人を馬鹿にしましたが、
老人は意に介しません。
「勤勉なのは良いことだ」
と、心から信じていたのです。
いつも、心やすらかに、充実した生活を送っていました。
一方村人は、
物質的には満たされていた生活なのに、
なぜか満足できません。
欲望がふくらむばかり。
周りの人々との争いごとが増え、
村の雰囲気が悪くなっていきました。