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課金ガチャと悪魔

作者: 夢見 歌鳥

 寿命1分につき100円貰えるとしたら、君は悪魔と契約するだろうか


 いつごろからか、地獄全体が活気づき始めてきた。どいつもこいつも羽振りがいい。ついこの間までただ酒が飲める宴にしか来なかったようなやつが、奢ってやるから飲みに来いと誘ってくる始末だ。浴びるほどの酒を飲んで騒いで、疲れたらあとは寝るだけ。悪魔が言うのもなんだが、自堕落な毎日が続いた。

 酒臭い息を吐きながら絡んできたやつに聞くと、最近人間界に異変が起きていて、どういうわけだか寿命が集めやすくなっているらしい。そんなに簡単に集められるというのなら、俺もほんのり興味がわいてきた。数百年ぶりに人間界へ行ってみるか。


 いたいた、ベンチに座って携帯電話と一日の大半向き合っている冴えない男が。本当に簡単に見つかるもんだな。どれどれこいつはどんな人間かな。アカシックレコードを開いて男の人生録を読んでみると、成人するまではまっとうな生き方をしていたが、携帯ゲームにはまるようになり家族からは勘当され、日雇い労働をするも長く続かず現在生活保護を受けているが、その金すらゲームにつぎ込むようになり、ついには借金までして追い立てられている。欲望に身を落として自暴自棄になりかけのようだ。よし、こいつで決まり! 悪魔と契約するのが平平凡凡な人間じゃあつまらないからな。


 姿を現して契約交渉に持ち込む。最近の人間は本当に怖い物知らずなのか無知なのか、俺の姿を見ても驚かない。それどころかコスプレイヤーだと思っているらしい。それでも金は欲しいのかあっさり話に乗ってきたもんだから、この先の人生55年分を一気に現金化してやった。しめて2,890,800,000円。残りの人生は一週間程度しかないだろう。

 さて一体どんなことをするのかと期待して様子をみていると、男はコンビニへ入りプリペイドカードを購入し、携帯電話を操作してゲーム画面を開いて番号を入力、ガチャを始めた。それだけ。しばらく開いた口がふさがらなかった。何をしてるんだこいつは。

 以前ガチャガチャを回して欲しいアニメグッズのために契約した小学生がいるという話は聞いていたが、これは物品も残らないただの電子記録だ。狂ってる。おいおい自分の命だぞ? もっとこう……使い道はないのか。だが寿命と引き換えに渡した金の使い道に口を出すのはご法度。画面と見つめあってる男を観察しているだけの退屈な時間が始まった。


 濁った眼をギラギラさせながら金を握りしめ、コンビニへ駈け込んでは戻ってくること数百回。携帯電話に充電器を付けて、男はただひたすらに10連ガチャを回し始めた。回し終わっては金をチャージを繰り返し一週間が過ぎたころ、男がおよそ人のものとは思えないような狂喜の声を上げた。目当てのキャラクターを引いたらしく、スーパーレジェンドレアでデッキ全体強化のスキルを持ち、今回のイベント効果が30倍、進化させれば倍率が上がり最終的にはイベントボスに対する攻撃力が50倍にまでなると興奮気味に説明してくれたのだが、何を言っているのかまったく理解できない。いや、もう頭が理解するのを拒絶していると言った方が適切か。


 そのキャラクターをガチャについてくるおまけのアイテムを使い、最大Lvまで育てスキルもMAXにしたところで、男はうっと低く呻いて倒れた。寿命が尽きてしまったのだ。後に残ったのは男の死骸、携帯電話、使い捨てられたプリペイドカード。不気味だと思ったのは、使いきれなかった金に埋もれて死んでいる男が、子供の寝顔のように安らかな顔をしていたということだ。


 急ぎ帰り大王様に伝えなくては。


 人間は、もう手遅れだと。

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[一言] ガチャ…搾取ゲー…ガンオン…うっ頭ガッ!
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